覚醒7
「よし源信様、俺これ使うよ」
剣人はそう言うと、地面の広げている巻物に墨で書かれている多数の文字の中から
一つを指差した。
「守身の力か・・」
「それはそこに書かれている通りだが・」
「簡単に言えば、自分の身を守る力じゃ」
「まぁ、物は試しじゃ、使ってみ」
源信の言葉に静かに頷くと、剣人は立ち上がった。
・・・・えっと、さっきの文字を思い浮かべるんだったな・
剣人が頭に文字を思い浮かべると、突然、手の中から携帯が浮かび上がると
守身の文字が携帯のディスプレイに赤い発光色で表示される。
そして、その後携帯は、空気に溶け込むように光の粒となって消えていく。
その光の粒は剣人の体に吸い込まれていった。
「うーん、これで使えるのかな?」
「そうじゃ」
「使ってみ」
・・・そう言われても、どうやって使うんだろ・・
剣人は使い方が良く分からないといった様子で、源信を見つめる。
「イメージするんじゃ」
「お前が外からの攻撃から、身を守る時のイメージをしてみい」
「まぁ、受動的な力だから、やりにくいわな」
「よし、今からワシが、お前に剣で切りかかるぞ」
「え・・・ええええ・・!?」
源信はそう言うと、目を瞑り気合のような声を短く発すると
何も持っていない手に突然日本刀が顕れた。
「もう、お前はさっきの力の発動で、守身の力は備わっているんじゃ」
「見事ワシの剣を防御してみ」
有無を言わさず、剣を振りかぶると、剣人に襲い掛かる。
「うわ・・わ・・・」
突然、日本刀で切りかかられた剣人は、咄嗟に反射的な人間の持つ防衛反応に従って、両腕を頭の前で構えて身を守ろうとする。
「ガキーーン」
源信の持つ剣の刃の部分が、剣人の腕に触れる数センチ外側で、何か目に見えないものに
阻まれる。
「そうじゃ、それが守身の力じゃ」
「へ・・?」
咄嗟に襲われた剣人は、目を閉じていた。
目を開けると、なにか腕の部分を覆う、目に見えない鎧みたいなものに
剣の刃が当たって止まっているのが見える。
「これが・・・・」
「そうじゃ・」
「ただ、お前はイメージが出来ていないから」
「透明なものとなっているがな」
源信は剣を引くと、剣人の目を見て静かに語り始める。
「一つ言っておくと、ワシの力は大体全てに言えることじゃが」
「使うものの、精神力、慣れ、イメージする力、陽の力の強弱で」
「同じ力でも、その形や効果の大きさは全く違ったものなる」
「例えば・・・・守の場合は・・」
「アイツは戦国物の話が好きでな」
「守が守身の力を使うと、戦国時代の武将が着てるような、甲冑を体に纏うんじゃ」
「へ〜・・・ぷ」
まだ鬼塚のその姿をみていない剣人は、その格好を頭に連想すると
少し噴出しそうになる衝動に駆られた。
・・・・見てみたい・・
「まぁ、大体今ので分かったじゃろ」
「な・・なんとなく・・」
その自信のなさそうな剣人の答えに、源信は片目をつぶり観察するように見つめる。
「まぁ、イメージトレーニングは自分でやってもいいし」
「守とでも一緒に訓練すればいい」
「あ・・一つ言い忘れておった」
なにか思い出すと、軽く自分の頭をはたく。
「ワシの力の効果はその日限りじゃ」
「その日の0時から次の日の0時までじゃな」
「いつ使おうが、0時を過ぎるとリセットされるから」
「次の日にまた同じ力を使う時は、発動しなおさないと駄目じゃ」
「そのへんはきっちり覚えておくように」
「はい」
源信は一通りの説明を終えると、座布団を枕代わりにして横になる。
「あ・もう全部言ったんで、出て行っていいぞ」
「話しは終わりじゃ」
「分かりました、えーっと・有難うございます」
剣人は、あまり力を得たという実感がないまま、終りを告げられ
少し戸惑った様子できょろきょろしながら、部屋をでていく。
障子を開け、横になっている源信に会釈すると、源信は左手を挙げ
横にふらふら振った。
部屋を出た剣人は両腕を組んで、俯き加減になにやら考え込んでいた。
・・・さっきの力は使えたけど・・
・・・他は良く分からないし・
・・・色々試したいな・・
・・・そうだ・・先生に聞いてみよう。
剣人は鬼塚と雫がいる部屋へ、少し胸の高鳴りを感じながら帰っていった。
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