歯が痛む……
どうやら虫歯になったらしい。
毎日、せっせと磨いてもなるもんだ。
あーあ、歯医者行くのやだな。俺、嫌いなんだよ歯医者。
なぜかって? 分かるだろ? 嫌なことが多いんだよ……
まず、独特の臭い。
針みたいな物で歯茎をちくちくする検診。
すっぱいような辛いような怪しげな薬。
神経をさかなでる高音のドリルの音。
「痛くなったら言って下さいねー」なんて真面目な顔していう先生。
なぜか、どこの歯医者にもいる若いきれいな歯科助手さん。
……
ん? きれいな歯科助手さんは、やじゃないぜ。むしろありがてーくらいだ。
そうだ、そうだよ。
きれいなお姉さんにイロイロしてもらえるんだ。虫歯のおかげで。
子供の頃から不思議だと思ったんだよなー、何できれいな人ばっかなんだろってさ。
そりゃ、誰が治療したって痛いものは痛いぜ?
でも、帰り際に天使のスマイルをつけてくれるんだ、痛いのだって我慢できる。
いや呼び込みたいぐらいだ。
まさに今がそうだ。ウェルカム・トゥ・マイ・マウス(?)ようこそ、ミュータンス菌。
君らのおかげで天使に会える。そうと決まれば早速、病院へ行こう。
***
「鎌田さん」
受付に診察券を渡すとすぐに呼ばれた。午後の診察一番乗りだから当然だろ?
「はい」
俺は元気良く返事する。
そりゃそうだ、早く会いたいんだもの……天使たちに!
***
人の少ない治療室、専用のベッドは四つあるが、天使はいない。
「なんで?」
「鎌田さん、こっちですよ」
おばさん歯科助手さんが手招きする。
……どうやら悪魔はいる。
「今日は、若い子みんな急に来れなくなって、いないのよ。残念だったわね、こんなおばさんで」
まったくだ……
***
帰り際、治療費1310円を払う。そういや、歯医者は地味に金かかるよな。
しかも、一度に全部、直さねーからまた行く必要がある。
まだ虫歯がある。
歯が痛い……
また、いくから金がかかる。
懐が痛い……
あのおばさんの顔を思い出す。
頭が痛い……
きれいな歯科助手さんを望む貧弱な発想
俺自体痛い……
色々と痛い……
完
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