ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
緊急出動!!連合歩兵隊 上
 義勇軍の歩兵は、この時点においては5個分隊を併せた1個中隊約150名で編成されている。これに1個小隊60名で編成された補給隊が付属している。

 補給隊は文字通り兵、前線の部隊に物資を補給する兵隊の事だが、基本的な訓練は歩兵と変わらず、トラックの運転を習い、迫撃砲と無反動砲の扱い方を習わないことだけが違う。

 だから実質義勇軍の兵士の総数は210名だ。砲兵や工兵は現在のところ独自の部隊としてはなく、歩兵がその役目を兼任している。というよりも、分離させて編成するだけの余裕がないと言う方が正しい。

 とにかく、トリスタニア近郊に在る義勇軍基地にはこの210名の兵隊と、アルビオンで編成された同規模の部隊が同時に収容できるだけの基地設備を設けていた。今回銃士隊の面々はその空いたスペースに入って合同訓練を行なっていた。

 朝起床ラッパが鳴って5分もしないうちに、飛び起きた兵士達は次々と兵舎の前の広場に整列していく。

「第1分隊異常なし!!」

「第5分隊異常なし!!」

「補給小隊異常なし!!」

 整列した各部隊の責任者が、部隊の集合を確認して声を張り上げる。さすがに3ヶ月の訓練を行なってきただけあって、各部隊とも動きは様になっていた。

 一方銃士隊の兵士たちも負けじと整列を短時間で終えた。

「銃士隊90名、異常なし!!」

 こちらもさすがに実戦を経験しただけある。その動きの良さに、歩兵部隊司令の梶田少佐も内心で舌を巻いた。

(さすがに王軍に所属する精鋭部隊だけあるな。)

 今まで演習を行なってきたメイジの軍隊も、軍隊としてはそれなりだったが、銃士隊からは何か別なオーラが出ているように感じる梶田だった。

「全部隊集合完了!!時間4分21秒!!」

 従兵がストップウォッチを止めて、梶田に報告する。

 緊急呼集に備えて5分内集合を目標としてきた、練度も上がってそれも可能となった。

 梶田は満足しつつ、用意されたマイクを使って兵たちに向かって喋る。

「諸君おはよう。知っての通り、今日から1週間アニエス隊長率いる銃士隊のみなさんが訓練に加わる。しかし、訓練内容などの変更は特にない。だから諸君らはいつもどおりに訓練を進めてもらいたい。以上だ。」

「敬礼!!」

 180名(残る1個分隊30名は基地警備や当直任務でいない)の兵士達が一斉に梶田に向かって敬礼した。

「国旗、軍隊旗掲揚!!」

 兵舎の前に立てられた2本のポールに、百合の花をあしらったトリステイン王国旗と旭日旗を模した義勇軍旗が掲揚される。

 ちなみに歩兵を表す部隊旗もあるが、こちらは兵舎の入り口に立てかけられている。歩兵部隊旗は、青地に2本の黄金色の銃剣が斜め十字に重ねられたデザインである。

 その光景を銃士隊の面々が少し奇妙な物を見る目で見ていた。こうした国旗掲揚といった国威発揚の風景は、地球でも近代になってから国民の感情を団結させるために始まったものである。だから銃士隊にはこのような習慣がないのだろう。

 そんなことを梶田が考えているうちに2つの旗はポールの上まで上がりきり、風に靡き始める。

 それを見届けて、梶田は命令を出した。

「それでは、いつもどおり朝食まで1万メートルマラソン!!」

 その言葉に、一部の兵士は明らかに憂鬱そうな表情をしたが、すぐに上官に促されて走り始めた。

 一方、銃士隊の兵士は最初意味がわからないという表情をしていたが、すぐに義勇軍の兵士について走り始めた。

「梶田隊長?」

 アニエスが梶田の側に歩いてきた。

「なんです、アニエス隊長?」

「1万メートルとは?」

 梶田はここで、ハルケギニアと地球とでは長さの呼称が少しばかり違っているのを思い出した。

「メートルはこちらの言葉で、メイルですね。」

「1万メイル?結構な距離を走らせるんですな?」

「まあ基礎体力は重要ですから・・・それでは我々も走りましょう。部下だけにやらせるわけにはいかないので。」

 梶田はアニエスを促して走り始めた。

 

 1万メートルマラソンが終わり、朝食の時間が過ぎると午前の課業となる。分隊ごとにわかれて訓練を行なう。

 ちなみに、義勇軍の食事は歩兵、航空、海上の3部隊によって大きく違う。どう違うかといえば、日本人の比率が多い部隊ほど、米の飯が多く出るということだ。文化とは概してこう言うところに現れるものだ。

 さて、義勇軍の訓練内容はやはり銃士隊から見れば相当異質である。

 銃士隊では訓練の時間の多くは体力づくりや射撃訓練、剣の扱いなどだ。つまり実戦的な訓練が多い。ところが、義勇軍では半分近い時間を座学に消費していた。これは義勇軍の兵士達が、マスケット銃よりも機構が複雑なT1型小銃、12,7mm重機関銃、迫撃砲、無反動砲、さらには自動車などを扱うためだ。これらは整備が欠かせない。

 また周辺各国の文化軍について教えるものや、義勇軍独自の軍規範、さらには対メイジ対処法を教える授業などもある。

 義勇軍の兵士達はまず頭でこれらを叩き込まれ、その後実践する。だから文盲が多いこの世界では、最初の1ヶ月間はほとんど兵士に文字を教えるのに消費される。

 アニエスら銃士隊も、15名単位のグループにわかれてこれらの座学や演習に参加した。

 銃士隊の兵士たちが特に興味を示したのは、やはり射撃訓練や実弾発射演習だった。

 銃士隊の面々は、小銃、重機関銃、迫撃砲、無反動砲の発射風景を交代で見学した。そしてもちろん驚愕する事となった。

 小銃は見た目こそ、この世界で使っているマスケット銃に似て無くはないが、装弾数は7発、しかも発射速度、射程、命中精度は桁違いだ。

 彼女らは早速義勇軍兵士に教わって射撃を行なった。この時代の銃とは明らかに違う発砲音、反動に彼女らは身をもってこの異国の銃の威力を感じたのだった。

 小銃だけでもこうであるから、重機関銃や迫撃砲を見ると、もはや驚きをとおり越して呆然としていた。

 重機関銃の連発能力は毎分600発以上だ。しかもその威力は軽々コンクリートの壁を破壊するだけの力がある。だからこの時代の甲冑など軽々貫通する。しかも有効射程は500m以上だ。(実際の射程自体はもっと長い。)

 アニエス曰く「このショウジュウとジュウキカンジュウが十分な数揃えば、もはやメイジなど恐れるに足りない。」

 彼女らは迫撃砲や無反動砲などの発射も見たが、1000m近い距離で打ち出し、しかもどんな大砲よりも高い威力を発揮しているのだ。

 アニエスはそれらを既に見た経験があるから免疫があったが、他の兵士たちは先ほども書いたとおり唖然としていた。いや、むしろ悪魔でも見るような目をしていた。
 
 そんな感じで、午前中の訓練は終わった。そしてやっぱりと言おうか、その頃には銃士隊の兵士達は義勇軍の武器の威力に酔い、口々に「私たちもこんな銃があればなあ。」と愚痴っていた。

 そして午後の訓練が始まる。

「午後は戦車部隊との合同機動訓練を行ないます。」

 梶田が内容をアニエスに伝える。

「戦車?あの観閲式の時に出てきた?」

「ええ。恐らくあなたがたの概念ではとても考えられない訓練なので、取りあえず最初は見学していてください。」

 確かに、アニエスには合同機動訓練などと言われても、何をするのかさっぱりわからなかった。とりあえず彼女が考えたのは、見てしっかり学ぼうという事だった。
 御意見・御感想お待ちしています。

 作中で数回出てきたT1型小銃というのは、才吉が旧日本軍の99式小銃をモデルに開発した小銃で、口径は7,7mm、有効射程500〜600m、最大射程は3000m、装弾数7発
 ハルケギニアで制作不可能な部分は、地球の町工場に発注するか、持ち込んだ工作機械で製造。そのため、他国が仮に捕獲しても複製は不可能。アルビオンでも量産予定。
 T1の意味はトリステインで最初に採用された銃を表す。

 作者近況・・・ようやく11巻読破。しかしテストが、レポートが・・・


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。