治安維持任務 1
翌日早朝、葛西豊大尉率いる臨時編成の部隊は、UH60Jヘリに乗り込んで出動した。目的地は、シティ・オブ・サウスゴータから見て東へ80km行ったビギンという村だ。
UH60Jヘリは輸送出来る最大定員14人であるが、今回12名の人間と必要な装備(銃とかバイク等)全てを一度に運ぶことは出来ないので、基地と村の間をピストン輸送することとなっている。
ちなみに、今回派遣される部隊の人数は豊併せて10名のはずであるが、先ほど書いたとおり、何故か今ヘリに乗って運ばれているのは12名だ。これはどういうことかというと。
「なんでテファだけでなく、マチルダさんまでついてくるかな!?」
豊が頭を抱えながら言った。彼の隣にはなんと軍属の服を着たティファニアとマチルダが座っていた。そして周りにいる部下たちはニヤニヤとその光景を見ていた。
「あら、私がいちゃ何か不安なのかい!?」
マチルダが不適な笑みを浮かべながら言った。
「だって、俺たちは遊びに行くわけじゃないんですよ!!これから行く先は正体不明の襲撃犯がいつ襲ってくるか分からない危険な場所なんですよ!!本当ならテファだって置いていきたかったのに。」
その言葉に、テファが口を開いた。
「だって、豊っていつも1人で行っちゃうじゃない。契約をしたわけじゃないけど、あなたは私の使い魔、つまり大事な人なのよ。今回ぐらい付いて行っても良いじゃない。」
テファがいつになく強い調子で言った。彼女にとって豊は自身が召喚した人間であり、そして大事な友達であった。(ちなみに周りからの評価は一部を除いて友達以上、恋人未満。)
彼女の場合もルイズが才人を心配したように、豊のことを常に気にかけていた。だからなるべく彼と一緒の時間を取ろうとしているのであるが、さすがに彼の任務についていくことはこれまで出来なかった。
何度か彼女は、才吉に直訴したこともあったが、さすがに破天荒老人の才吉と言えども、危険な戦場に攻撃魔法が使えるわけでもないテファの同行を認めるほど甘くはなかった。また彼女がハーフエルフということも強く影響していた。
義勇軍内では、彼女の出自を差別する人間はいない。いても最初の内だけで、彼女と付き合えば嫌でもその性格を理解して、差別しなくなる。しかし、外の人間は十中八九エルフを恐れている筈なので、彼女をおいそれと外に出すわけにはいかなかった。
そう言う訳で、これまでテファが豊の任務に付いていくことは出来なかった。しかしながら、彼女が彼を心配する気持ちは本当であった。そこで、彼女の姉貴分とも言うべきマチルダの登場であった。
彼女は持ち前の話力を持って才吉を説得し、今回テファを救護係り兼世話係りの軍属として派遣させることを認めさせたのであった。ただし、彼女マチルダ自身も心配であるのは確かだった。そこで市議会が休会に入ったこともあって、彼女もついでについてきた。
ちなみに彼女も今は義勇軍の軍属の格好をしているが、実際彼女は軍属の一員として登録されているので何ら問題はない。彼女は暇な時には元秘書という能力を活かして司令部の書類仕事を手伝ったり、また『土』系統の魔法に関する講義もしたりしていた。
しかしながら、豊に言わせれば軍属とはいえ、戦場へ2人の友人、それも女性を連れて行くことは気が進まないことであった。
「だけどねテファ、君は魔法が使えるわけでもないから。もし襲われたらどうするのさ?それに、別に俺は差別する気はないけど、村人たちにハーフエルフってことがバレタ時のことも怖い。やっぱり君は基地へ戻るべきだ。」
豊としては心配しているからこそこう言っているのであるが、テファとしては、やはり戻るように言われるのはつらい言葉だ。そんな彼女に助け舟を出したのは、やはりマチルダであった。
「その点は安心しなさい豊。もしテファの存在に文句あるような奴がいたら、私のゴーレムで捻りつぶしてあげるから。それともグワネットに吹き飛ばしてもらうか。」
ちらっと横を見ながら、懐から杖を取り出し自信満々に言うマチルダ。
「いや、ある意味それも困るんですけど。」
『土くれのフーケ』をやめたとはいえ、マチルダの魔法の能力は衰えていない。むしろテファが男性の多い職場で働くようになった最近はより強力になっている。さらに、彼女にはハリモグラの使い魔もついている。
テファが豊を召喚した時、マチルダも使い魔召喚を行い呼び出したハリモグラは現在、先ほど彼女が言ったように「グワネット」と名づけられ、主にテファの保護という名で、彼女に近づく男の退治に活躍している。それ以外にも、通常のモグラよりも高い機動力と攻撃能力を持っているから、色々と頼もしい使い魔である。ただし、ギーシュの使い魔である「ヴェルダンテ」とは違い、鉱石を見つけ出すような能力は持っていない。
そのグワネットは、マチルダの隣で今は丸まって寝ていた。
「とにかく、テファのことは私がちゃんと守るから安心しな。」
彼女はそう言い切った。
さらに、豊の部下たちも彼女たちに同調した。
「まあ良いじゃないですか分隊長。女性が付いてきてくれたほうが、村人からの受けも良いでしょう。それにはティファニアさんは家事が大の得意分野で、救護の腕も家の部隊内で一・二を争うほど良いんですから。」
「そうそう。あと、マチルダさんの土魔法が強力なことは隊長もよく知っていることじゃないですか。彼女が協力してくれるなら、力強い限りじゃないですか。」
そんなことは言うものの、実際のところは2人の美女がついてきてくれるのがうれしいのだろう。もっとも、言っていることに嘘偽りはない。
結局、ここまで言われては豊としても引き下がるしかなかった。
「わかったよ。けど、2人とも本当に気をつけてくださいよ。」
豊はそう言って念を押した。
と、ちょうどその時、機長の山田明雄中佐が声を張り上げた。
「間もなく目的地です。着陸しますので注意してください!!」
UH60Jヘリは目的地の村上空に着いた。明雄は機体を空中で停止させ、着陸によさそうな場所を見つけると、機体を降下させた。
空からいきなり現れた珍客に、村人たちは当然驚いた。そのため着陸した時には鍬やら火縄銃やらで武装した村人に囲まれてしまった。
ただし、すぐに豊が義勇軍旗とアルビオン国旗を部下たちに揚げさせたので襲われるということはなかった。それでも村人たちは警戒を解かず、近寄って来ようともしなかったので、仕方がなく豊の方から村人たちのほうへ歩いていき、呼びかけることとなった。
「突然驚かしてすいません。我々は王政府から要請をうけてやってきた『東方義勇軍』者です。」
すると、村人たちの間からざわめきが起こった。
「義勇軍!?」
「たった3日でレコン・キスタを倒したあの!?」
そしてその表情が明るいものになっていくのも、豊たちにはわかった。
そんな中、村人たちの中から1人の老人が豊の前に出てきた。
「村長のライトラーです。ビギン村へようこそ。」
豊は片手を挙げて敬礼する。
「『東方義勇軍』今派遣部隊隊長の葛西豊大尉です。よろしくお願いします。」
「いきなり先ほどのような歓迎をして申し上げない。しかし、村人たちは姿なき魔物に怯えていますので、どうか御理解いただきたい。」
「わかっています。我々は謎の襲撃犯から皆さんを守るよう命令されて来ました。全力をあげて、任務を遂行します。」
「よろしくお願いします。」
こうして、この村での任務はスタートした。
御意見・御感想お待ちしています。
最近オリジナルキャラ色が薄いので、勢いでテファとマチルダを出しましたが、どうでしょうかね?
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