出動命令
T3型短機関銃の完成品第1ロット15挺は、『東方義勇軍』アルビオン方面軍の葛西豊たちの分隊に配備された。
最初にこの分隊へ短機関銃が配備された理由は、小隊長兼第一分隊分隊長である豊が率先してこれまで自動火器を分隊内で使用していたために、隊員がその扱いに慣れていたため。また彼の分隊は、治安維持任務での出動実績が断トツでトップであったためだ。
彼は元々才人たちとは別次元の日本で、反政府のレジスタン組織の一員として戦っていた。そのため、少人数によるゲリラ戦や市街戦、後方撹乱等の戦法の方がどちらかと言うと得意だった。勢い、彼の率いる分隊もそちらの方が得意になっていた。
そんな彼らに出動命令が出たのは短機関銃が配備された僅か5日後のことだった。
「俺に呼び出しってことは、またレコン・キスタの残党狩りですか?これで何回目です?」
総司令官である才吉の元に呼び出された豊は、うんざりする様に言った。彼の分隊は既にこの任務に数回出動している。そして出動するたびに死者を出すこともなく任務を達成している。そのおかげで、豊は少尉からあっという間に大尉に昇進したし、また彼の分隊の兵士たちも同様に昇進が早く、最下級の兵士でも兵長である。
しかしながら、豊としては自分たちの分隊ばかりが動員されるというのは不公平極まりないように思えた。
「すまないな、人使いが荒くて。君ほどの人間を遊ばせて置けるほど、こちらも人が足りているわけじゃないんだ。それから言っておくが、今回の任務は王室からの要請には違いなが、レコン・キスタ狩りじゃない。」
才吉はいつになく真剣な表情で言った。
「え!?違うんですか?いつもどおりてっきりそうじゃないかと思ったんですが・・・それじゃあ、もしかして吸血鬼か何かですか?それも嫌だな・・・」
豊はさらに嫌そうな顔をした。なぜなら、もし相手が吸血鬼なら、かなり性質の悪い相手であるからだ。なにせ吸血鬼は外見が人間と同じであるからそう簡単に発見することが出来ない。それでもって強力な先住魔法を操り、さらには血を吸った人間を屍人鬼として操ると来ている。
1回だけ豊もその掃討任務に出動したことがある。その時は先住魔法を駆使して森の中を逃げる相手に散々手を焼かされ、最終的に航空機まで動員する騒ぎとなった。不幸中の幸いだったのは、発見が早かったためにこちらに被害が出なかったことだった。
ちなみに、義勇軍が開発した吸血鬼発見法は至ってシンプルである。
吸血鬼の外見はほとんど人間と同じであるが、内部構造に若干の違いがある。特に血液や細胞の性質や形が決定的に人間と違っている。(ただし人間と交配は出来る。) だから採血するか、もしくは髪の毛一本を採って電子顕微鏡で細胞を覗けば直ぐに判明する。
ちなみに、中世レベルのハルケギニアには当然採血の概念はまだないため、血を抜き取ると言うと人々は強い拒絶反応を示す。なので、多用される方法は電子顕微鏡による組織の確認である。
前回もこれを行って一発で吸血鬼を見つけ出すことが出来た。だがその後の展開は上記にあるように、散々てこずらされた。さすがの豊も、吸血鬼と戦ったのはそれが最初であったから苦労することとなった。
豊はその時のことを思い出して、嫌な顔をしたのだ。しかしながら、才吉が今回持ってきた任務はより性質の悪いものだった。
「吸血鬼か・・・実はな葛西大尉、はっきり言うと今回の敵は正体がわからないんだ。」
「はあ!?それは一体どういうことですか!?」
これまでの任務では、そのようなことは一度もなかった。だから豊は素っ頓狂な声を上げてしまった。一方才吉はそんなこと気にせず、説明を始めた。
「実はな・・・」
才吉の話によると、こうである。今回王室から義勇軍に派遣要請が出された村は、すぐそばに翼人の集落があるという。
翼人というのはハルケギニアに住む先住民族の一つで、背中に白い羽があって飛ぶことが出来るし、さらには先住魔法を操れる。ただし、吸血鬼のように人に襲い掛かるような習性はなく、基本的にこちらから手を出さない限り襲ってくるようなことはしない。
今回出動要請が来た村も、翼人たちとは友好関係を築いているとは言わないまでも、特にその関係に問題はなかった。
ところが、最近になってその村近辺で謎の襲撃事件が続発した。襲撃されたのは家族連れの村人で、さらには翼人にも何人か被害者が出たらしい。幸いケガをした人間はいたが、死者は出ていなかった。だが、相手が何者かは全くわからず、それが村人と翼人の恐怖と不安を助長させる要因となった。
この事件によって、人間と翼人たちの間に亀裂が発生し、一触即発のところまで来ているという。お互いが相手を襲ったのではないかと疑心暗鬼になっているらしい。
その土地は現在王室の直轄領となっていて、村人の嘆願を受けて王室はこれまでに数回兵隊を送った。しかしながら、成果はほとんど挙げられず、それどころかその間にも被害者が出てしまった。唯一の成果は、相手が魔法を操ることが確認されただけであった。
王軍でもダメとなると、もはや頼れるのはより強力な武器を備えた『東方義勇軍』だけであった。ちょうどこの頃、義勇軍が吸血鬼を簡単に発見し掃討したという情報もそれに拍車を掛けた。
というわけで、今回の出動要請と相成ったわけだ。
「・・・また、難しい任務ですね。しかも責任重大だ。任務が失敗すれば、翼人と村人との関係は決定的な破局を迎えるでしょうから。」
「その通りだ。付け加えるなら、早急な解決が望まれることだ。最低限相手の正体を掴む必要がある。」
「しかし、正体が全く分からないなんて。こないだ慰労会で見たプレ○ターみたいですね。」
「確かにな。まあ今回の相手はまだ誰も殺してはおらんがな。とにかくそういうわけだ。引き受けてもらえるな。」
「命令なら仕方がありません。葛西豊大尉、アルビオン王室からの治安維持任務要請による出動命令を謹んでお受けいたします。」
豊が敬礼をする。それに対して才吉も答礼する。
「よろしく頼むぞ。なお、派遣する部隊の編成と装備については例によって君に一任する。ちなみに、その村の位置だがここから東へ80kmだ。必要ならヘリを使っても良いぞ。それからこれが、王室が送ってきた現地に関する資料だ。」
才吉は彼に一通の封筒を渡した。ちなみに、豊はティファニアやマチルダのおかげで、既にこちらの文字を読めるので原版が渡された。
「それを読み込んで今日中にプランを立てろ。出撃予定は明日早朝とする。すまないがそれ以上は延ばせられないんでな。」
「了解しました。それでは、失礼します。」
豊は再び敬礼をすると、司令官室を出て、早速プランを練るために自室へと向かった。彼は資料を見て村の簡単な地形や現地の状況を考慮して、直ぐに今回連れて行くメンバーと装備を決めた。
今回連れて行くメンバーは10人。メイジ・平民問わずこれまで優秀な成績を収めた人間ばかりだ。そしてその装備は森林での戦闘が考慮され、通常の小銃に加えて、配備されたばかりの短機関銃も持っていくこととなった。
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さて、明日は12月8日。太平洋戦争が始まった日です。自分はこの時期になると、映画の「トラ・トラ・トラ」を見るのを恒例行事としています。この映画はCGではなく、実際の飛行機がバンバン飛び回り、さらに日米両サイドから描写しているので、中々面白いです。
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