自動小火器物語 下
棚から牡丹餅的に手に入った自動火器の数々。それらは試験的に『東方義勇軍』内で運用されることとなった。しかしながら、それで満足しない人間たちもいた。自動火器導入推進派であった大久保特務大尉もその1人だった。
「平賀司令!!あのような試験運用だけでは手ぬるいです!!この機会を捉えて自動携帯火器の本格的な生産に入るべきです!!」
彼は定例会議の席で、何度もその意見を唱えた。しかしながら、才助は中々首を縦に振らなかった。出来ない事情がそれなりにあったわけである。
「大久保大尉。君の言いたいことは良くわかるが、ようやくT1小銃の生産が軌道に乗った所なんだ。ただでさえ弾薬の系統が違う狙撃部隊用の銃弾生産を開始すると言う時に、より大量の弾薬を消費をする自動火器の量産は現状では難しいよ。」
だが大久保は諦めなかった。
「では、短機関銃の弾薬だけでもお願いします!!今回手に入ったM1短機関銃は密林戦やゲリラ戦、市街戦では現用のT1小銃よりも遥かに実用的です。それに銃弾を拳銃と共通できるメリットもあります。この際、拳銃と統一してしまいましょう。」
大久保は自動小銃は無理でも、短機関銃の生産だけは認めさせようとした。
才助も短機関銃の必要性はこの時点において戦訓からよくわかっていた。アルビオンでは葛西豊大尉が、「にぎつ丸」に搭載されていた100式短機関銃や、予備武器として回収されたドイツ製のMP18短機関銃を治安維持任務で使用して効果を挙げていた。特に接近戦では、大きな威力を発揮していた。
一方で、生産設備の限界は事実であった。この時点において稼動しているトリステイン、アルビオン、ゲルマニアの各工場では、地球から導入した工作機械を使い、一部では後の大量生産方式に近い方式を取り入れるなどして生産力を向上させていた。しかし、それでも小銃以外に航空機搭載用ロケット弾、重機関銃弾、手榴弾などを生産している関係で生産ラインはもう一杯一杯であった。
ここへ数挺レベルではあるが、狙撃部隊用の弾薬の生産ラインを入れたが、それも当初は口径の近いなどから様々な調整を要した。
またこれ以上に生産力を上げようにも、地球からさらなる人間のスカウトや機械の投入をしたくても、運べる量に限界があるのでどこまで生産力を底上げできるか疑問であった。
そのため才助、さらには連絡を受けたアルビオンにいる総司令官の才吉としても生産にGOサインを出すことを躊躇わざるをえなかった。
そんな状況を一気に転換させたのが科学力を持っているロマノフ公国との交易開始と、新型輸送機投入による地球からの輸送量の飛躍的アップであった。
トリステインと短期間の内に友好条約を結び、交易を開始した東の大国ロマノフ公国の科学力は、地球で言えば日露戦争から第一次大戦の間程度であった。そのため、T1小銃や手榴弾の生産は十分可能であった。さらに技術供与を行えば、より近代的な兵器も生産可能であった。しかもハルケギニアとは違い、既に近代的な大量生産方式を持っていたため、数も今までの数倍レベルで生産できた。
さらに、地球では北海道の桜花飛行機製造会社における航空機の生産交渉がまとまり、これによってレシプロとはいえ、これまでよりも搭載量の大きい航空機の使用が可能となり、地球から運び込める人や荷物の量が飛躍的にアップした。
こうした生産環境の大幅な変更が出来たことで、ようやく才助は短機関銃の生産と、それと弾薬を共通にする拳銃の生産を許可した。ちなみに、それと同時に大幅な戦力強化計画も提議されたが、今回それについては割愛する。
早速、トリステインやアルビオンの工場ではそれまでのT1小銃の生産を停止して、短機関銃と新型拳銃の生産に着手した。モデルとなったのはリバティー船から回収されたトンプソンM1A1短機関銃であった。
『東方義勇軍』で使っている武器は軒並み地球に存在した兵器の無断コピーである。もっとも異世界に著作権が通用するかどうかはわからないからこの言葉が適当かはわからないが、とにかくそういうわけで新規設計する必要がないから開発期間は非常に短い。この時期には工場で働く労働者の質が向上したこともあり、なんとたった3週間で実戦配備している。
もっとも、実際の所は大久保の強い懇願を考慮して、早い時期から才助が一部のラインでの試験生産を考慮していたからこんなことが出来たのである。
完成した銃はメイジに『固定化』の魔法を掛けてもらうと、そのまま部隊に配備される。もっとも、先にも述べたように自動携帯火器の扱いに慣れていない兵も多いので、必然的にモニター役に指名されるのは扱いなれた人物となる。
そういうわけで、大久保の強い願いの元で完成した短機関銃が配備されたのは、アルビオン方面軍の葛西豊大尉率いる分隊であった。
「こいつが新型の短機関銃ですか?まんまM1ですね。」
それが新型の短機関銃、T3型短機関銃を受け取った時の豊の意見であった。実際コピー製品であるから外見はそのままである。それどころかスペックだってほぼそのままである。
「それについては否定しないよ。M1をそのままコピーしたんだからね。」
銃を手渡した本人、出来上がった銃を渡すためにアルビオンへ出張してきた才助もそう言って笑った。
「けどそれだったら、オリジナルの方が欲しかったですね。」
そう言って彼は笑った。
彼の言うオリジナルのM1銃は全てミライ基地にて保管されたため、彼がこれまで使ってきた自動小銃は全て、運用評価名目で借りたその他の銃ばかりであった。そして今度は実用数未知数(コピーとはいえ実際には目に見えないような問題がある可能性もある)の銃である。
おそらくこれほど多種多様な銃器を扱っているのは彼と、ミライ基地の武器保管庫係の兵士だけだろう。
「すまないね。けど贅沢は言わないでくれ。我々は今ある物、そして今自分たちで作れるものしか使えないんだ。その短機関銃を実戦に使えるか使えないかで、今後の作戦に与える影響も大きくなる。だからよろしく頼むよ。」
「わかっています。お任せください。平賀中将。」
彼はそう言ってウインクした。
「期待しているよ。・・・それにしても、武器を使わないでよければそれに越したことはないんだが、武器を使うことを期待しなくちゃいけないとは、なんとも皮肉だな。」
才助がしみじみと言った。
「仕方がありませんよ。この世界じゃ戦争は決して珍しいことではないんですし。それで人同士の戦い以外でも、武器を使わなければいけませんし。現実は厳しいですよ。」
「だな。理想論だけじゃ生きてはいけん。まあ、とにかくお願いするよ。さ、ちょうど正午を回ったことだし、飯にでもするか。」
「そうですね。」
豊は銃を肩にかけると、才助と一緒に歩き始めた。
「そう言えば、ティファニアさんはどうしてる?」
「今日は子供たちに文字を教えているはずです。最近は近所の他の子供も来るようになって、色々と忙しいようです。」
「そうかそうか。彼女もがんばってるんだな。それで、実際のところ彼女とはどうなんだ?」
才助は意地悪な顔をして言った。
「え!?彼女とは別に何にも。」
「本当かい?才人が言うには中々良い雰囲気だというじゃないか。」
「な!!あんの野郎!!」
豊は拳を強く握り、トリステインにいるであろう才人の顔を頭に浮かべた。その姿を見て、才助は笑った。
「ハハハハハ・・・・」
平和な光景である。しかし、理想と現実が中々一致しないのが人生というものだ。使わないに越したことはないと才助は言ったが、この銃に出番が回ってくるのは、この数日後のことであった。
御意見・御感想お待ちしています。義勇軍の装備や、軍歌などなんでも受け付けています。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。