自動小火器物語 上
『東方義勇軍』では、ハルケギニアに流されてきた地球製武器、その中でも高性能で近代的な武器の収集、さらに出来うるならそれらの持ち主の捜索に全力を挙げていた。これは例え万が一にもこの時代の人間に使われたり、複製されたりして自分たちの優位が揺らぐこと、さらにはガリアなどのトリステインの仮想敵国がより大きな脅威になることを防ぐためであった。
義勇軍総司令官の平賀才吉は、アルビオン解放戦争前からトリステインとアルビオンの協力を得て、独自の情報機関である『トウ機関』を作り上げていたが、そうした人脈を使ってトリステインやアルビオン以外の国からも極秘に武器の運び込みを行っていた。
そうした結果、さすがに飛行機や戦車と言った大がかりな物を運び込むというようなことは簡単には出来なかったが、銃とか小型のミサイルなどはコンパクトであるために、結構な数が手に入った。これらは発見されると、現在の持ち主から買い取るか、それともちょっといけない手段を使って入手し、トリステインのミライにある義勇軍基地へと運び込んだ。
具体的にどのような種類の兵器が収集されたかというと、陸上自衛隊の64式小銃や、ソ連製のAK74型小銃、ナチス・ドイツのパンツァーファースト対戦車ロケット、フィンランド軍のスオミ短機関銃などなど、その種類は相当数に登った。また明らかに才人たちのいた地球製の物ではない物もあった。葵マークのついた小銃とか、東露西亜帝国とキリル文字で刻印された軽機関銃、五色の星マーク(満州帝国軍)のバズーカ砲などがそれである。
こうした武器は、例え破損していなくても弾薬がなかったり、あっても弾倉1個分のみというようなものばかりで、とても戦闘に使えるようなものではなかった。
そのため仕方がないので、こうした武器の多くは予備武器や参考品として、ミライ基地の専用武器保管庫に納められた。
この武器保管庫の責任者は、元「にぎつ丸」乗組員で旧日本陸軍出身の大久保久作特務大尉であった。彼は数年前にオーク鬼との戦闘で負傷し、杖無しでは歩けない体となっていた。本来なら軍隊での生活は無理であったが、銃器に関して一通り精通していたので、その才能を買われて予備役である特務階級を与えられ、戦闘とは関係ないこの部署を任された。
大久保は平成日本から取り寄せてもらった様々な資料を読み込んで日々知識を溜め込むとともに、時折運び込まれる武器の調査にあたった。しかしながら、先にも書いたとおり、持ち込まれる武器で実戦において使えるレベルの物はほとんどなく、定期的に行われる幹部会議での報告会でも発見場所と武器とともに飛ばされたと思われる人間に関する情報、そして使用不能かそうでないかを報告するだけだった。
もっとも、全ての回収された武器が無用となったわけではない。例えばアルビオンで治安維持任務中に回収されたM16小銃やM40狙撃銃は、その後狙撃部隊を作る切欠を作ったし、また手榴弾やロケット弾などの中にも本格的な戦闘には投入されなくても、治安維持任務に使われることはあった。
強力な吸血鬼とかオーク鬼相手の掃討任務ではこうした強力な員数外の武器は隊員たちに喜ばれた。特にアルビオン方面軍所属の葛西豊大尉(当時)はこうした武器を有効に使いこなした。
また小銃の中には改造を施して、義勇軍制式のT1小銃用の弾薬を使えるようにする試みもなされたが、これは費用効果の面から合理的ではないとして2挺ほどになされただけで終わった。
さて、話は変わるが義勇軍内ではかなり早い時期から何度か自動小銃、もしくは短機関銃の採用が議論された。自動小銃というのは自動的に連発可能とした小銃である。短機関銃は連発できる点では同じだが、元々塹壕内での近距離戦闘を目的に開発され、弾薬に拳銃用弾を使用するのが特徴で、反動は小さいが射程や威力の点で自動小銃に大きく劣る。
しかしこの議論に関してはようやく生産ラインに乗ったばかりのT1小銃の生産を混乱させる可能性があること。また、自動小銃はコスト高であること、短機関銃は射程が短く威力に乏しいことを理由に反対意見が出された。
実際、自動小銃のコスト高という問題はかつて多くの国で出た問題で、かの陸軍大国ドイツでも予算不足から自動小銃の開発が遅れ、仕方がなくソ連から捕獲した銃を配備したという過去がある。そして短機関銃の威力不足も拳銃弾を使用する点で仕方がない問題であった。
結局この問題は最終的に幹部たちの意見統一が出来ず、やむなくT1小銃の充足を待って検討するということになってしまった。
これは当時自動火器導入推進派だった大久保にとっては不愉快極まりない結果だった。
「相手はメイジだけじゃない、森の中を敏捷に動き回る吸血鬼とかオーク鬼だってそうなんだぞ!!そんな連中相手に、兵隊たちに一々再装填が必要なボトル・アクション銃で戦えっていうのか?」
彼はこう公言して憚らなかった。実は彼が負傷した原因こそ、複数のオーク鬼に襲われて、銃弾の再装填が間に合わなかったために起きていた。そのため連発可能で携帯も出来る強力な武器を少数でも良いから配備するよう平賀司令官に直に進言することさえした。
彼の意見を受けて、才吉はイギリスのステン短機関銃の複製を考えた。この銃は第二次大戦時の銃だが、非常に簡素な造りをしていて、プレス機さえあればおもちゃ工場でも量産できると言われたほどのものだった。
もっとも、その生産自体は先ほども書いたとおりT1小銃が充足してからとした。やはり生産設備の限界はどうしようもない問題だったのだ。
結局大久保に出来ることは、手に入れた自動小銃や短機関銃を必要に応じて兵士たち(しかも自動火器に扱いなれている者のみ)に貸し出すだけであった。
そんな中で大きく状況を変える事態が起きた。
外洋諸島の調査中に、義勇軍所属の「にぎつ丸」が座礁していた太平洋戦争中のアメリカの輸送船を発見したのである。同船には海兵隊向けの航空機24機が搭載されていたが、実際に載っていた物資はそれだけではなかった。
その輸送船、リバティー船という種類の船は航空機搭載専門船型なら100機あまりの航空機が輸送可能で、また通常の貨物船型でも1万tの物資を輸送することが出来た。
そのため、24機の航空機以外にもそれらの予備部品、そして大量の米海兵隊用の武器が搭載されていた。その中には、100挺近い数のM1ガーランド小銃もあった。さらにほぼ同数のトンプソンM1短機関銃や、弾薬が共通のコルト拳銃も数十挺あった。
この報告は義勇軍幹部陣を驚かすと共に、義勇軍は生産の労を要さずして大量の自動火器を手に入れることとなった。
これらの銃についての使用方法が直ちに検討されることとなり、その結果ガーランド小銃はM1充足後、一部の部隊で試験運用がなされることが決まり、他の2種類については治安維持任務充当用兵器として活用されることとなった。
もっとも、その程度で満足しない人間もいた。
御意見・御感想お待ちしています。
なお今回の作品では、ジョン・ドーさんからの意見を参考にしています。どうもありがとうございます。
次話では大久保特務大尉や葛西大尉に活躍してもらおうかと考えています。
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