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結婚 5
 そしてついに、才人とルイズの結婚式の日がやって来た。結婚式は王宮内の礼拝堂で行われることとなったが、前から述べているように極秘の結婚式であるから、参加者の少ないどこか侘しいものとなってしまった。

 それでも、結婚式は結婚式である。2人は精一杯に着飾って、式に臨んだ。

 才人の服は、ルイズたちが予想したとおり軍服だった。旧日本海軍の士官服を模して作られた純白の礼装(義勇軍の第1種軍装)に身を包み、胸にはタルブ空中戦、ならびにアルビオン解放戦争従軍を示す2つの徽章と、トリステイン政府から送られた勲章が誇らしげにつけられていた。

 しかも2つの徽章は日常的につける略章ではなく、煌びやかな儀礼用徽章だった。

 才人は普段は茶色の略装を着るから、こんな派手な格好はしない。白い礼装を着るにしても勲章をつけることなど滅多にない。それだけに才人には気恥ずかしさがあった。

「なんか恥ずかしいな。こんな勲章をじゃらじゃらつけるなんて。」

 着替え用に用意された部屋にある鏡を見ながら才人は呟いた。すると、部屋に持ち込んであった相棒のデルフがかたかたと鞘をならしながら言った。

「いいじゃねえか相棒、せっかくの晴れ舞台なんだから。あの娘もきっと喜ぶぜ。」

 相棒の結婚式とあってか、その声はどこか嬉しそうだった。

「それにしても、『虚無』の担い手と『ガンダールヴ』が結婚するとはね・・・・」

 今度は一転して、何か思いだす物があるのか、感慨深けに言うデルフ。

「うん!?何か言いたいことでもあるのか?」

 才人が怪訝な表情で言った。だがこの時は、結局それ以上のことは聞けなかった。何故なら部屋の扉が開いて、才人の母親である瑞江が入ってきたからだ。

「才人、着替え終わったの?終わったのなら早く来なさい。」

「わかった。それじゃあ、デルフ、行くとするか。」

 才人は帽子を被り、デルフを掴むと部屋を出た。



 式場となった礼拝堂は王宮内にあるとはいえそれなりに大きい。先日ロマリア教皇のヴィットーリオが来た時も、ここで祈りを捧げる儀式が行われた。

 しかしながら、今日の結婚式では礼拝堂内は解散とは言わないまでも、どこかさびしい印象を抱かざるを得なかった。

 参加者は双方の家族と、5人ずつの友人。そして、今回司祭の代わりとして枢機卿のマザリーニだけである。

 才人が式場へ行くと、早速悪友とも言えるギーシュが声を掛けてきた。

「おお才人!!中々似合っているじゃないか!!」

「ありがとう。けど、普段こんな格好なんてしないから、結構恥ずかしいんだよな。」

 ルイズが代王となったために学院から出て、才人も義勇軍で働いている今、ギーシュと会う機会は極端に減っている。しかしながら、それでも2人の友情に変わりは無かった。

「いやいや、僕から見ればもう少し派手に着飾っても良いんじゃないかと思うよ。どうだい?」

 才人は苦笑いしながら言った。

「お前じゃないから、遠慮しておくよ。」

「ああ、ひどいなあ。」

 そしてお互いの顔を見合って笑った。

 ギーシュに続いて、他の友人たちも声を掛けてくる。

「才人、結婚おめでとう!!」

 今回アルビオンから呼ばれたテファが駆け寄ってきた。続いて、彼女に召喚された豊も才人の所へとやってきた。

「おめでとうございます少佐。心から祝福申し上げます。」

 豊は義勇軍の軍人なので、才人と同じ純白の礼装を着ていた。ただしこの時点での階級は才人より下の大尉なので、敬語を使っている。

「2人ともありがとう。」

 才人が2人に例を言うが、それに対してギーシュが横槍を入れてきた。

「いやあ、これはなんと綺麗な人だ。初めまして、私はトリステイン魔法学院2年生のギーシュ・ド・グラモンと申し、グハ!!」

 プレイボールぶりを発揮して、テファに色目を使って声をかけたギーシュは、次の瞬間目ざとくそれを見つけたモンモランシーのチョップを喰らっていた。

「こらギーシュ!!また他の娘に色目使って!!ちょっとは学習しなさいよ!!」

「ご、ごめん。」

 ギーシュが殴られた後頭部を抑えながら、謝る。才人はその光景に呆れながらも、2人に一応注意をしておく。

「あのさ2人とも。俺は驚かないからいいけど、時と場所を考えろよ。テファなんかおびえているじゃんか。」

 実際、テファはいきなりモンモランシーがギーシュに殴り掛かった光景にビックリし、豊に寄って、ブルブルと震えていた。

 2人はハッとして顔を真っ赤にした。そしてそのまま式場の隅へと下がってしまった。

 それと入れ替わる形で、今度はキュルケが声を掛けてきた。

「はあい、才人。結婚おめでとう。ルイズの相手は大変だろうけど、がんばってね。」

「ハハハ・・・、わかったよ。ありがとうキュルケ。」

 続いて、コルベールとオスマン校長がやってきた。

「おめでとう才人君。これでようやく、彼女と結婚出来るね。」

「夫として彼女をしっかり支えてやるんじゃよ。」

 2人からしてみれば、ルイズと才人は教え子であり、その成長の一端を見てきた人物である。2人にとっても、今回の結婚は大いに喜ばしい出来事であった。

「ありがとうございます、コルベール先生。オスマン校長。」

 それから才人は、地球から駆けつけてきた姉の智恵や両親、曽祖父の才吉や義勇軍から招待した菅野中佐やシエスタ、部下であるカルロ一等兵などと軽く言葉を交わした。また、娘や妻が花嫁と一緒にいるために、1人待ちぼうけしているヴァリエール公爵とも挨拶する。

「おはようございます。ヴァリエール公爵。」

「おお、才人君。ついにこの日が来たね。公に発表できないのが歯がゆいが、とにかく喜ばしいことだ。・・・・娘のこと、よろしく頼むぞ。」

 ルイズは3女であるが、結果的に最初に親の元から離れることとなった。見掛けによらず、親バカの公爵からしてみたら、色々と想う物もあるだろう。

「はい。ルイズ、いいえ娘さんのことはしっかり守ります。・・・そう言えば、今日はカトレアさんも来ているようでしたけど、大丈夫なんですか?」

 才人がカトレアと会ったのは一回だけだが、彼女が病弱で屋敷の外へ出たことがないことを知っている。だから、それが気になった。

「ああ、君の世界から持ってきた薬のおかげで最近は大分調子が良いよ。ただ、さすがに完治するまでには至らないがね。」

 公爵は、そう言うと溜息をついた。

(本当に娘のことを想っているんだな・・・この人の娘を嫁にするんだ。しっかりしなきゃな。)

 娘を想う父親の姿を見て、決意を新たにする才人だった。

 ちょうどその時、1人の女性が礼拝堂に入ってきた。ルイズの所にいたはずのアンリエッタだ。

「皆さん、花嫁の着替えが終わりました。間もなく参りますので。ヴァリエール公爵、娘さんの所へ行ってあげて下さい。」

 一国の王妃がこんなことするなど前代未聞だが、秘密の結婚式と彼女がルイズの親友ということが、この特異な現実を生み出していた。

「わかりました。それじゃあ、才人君。続きはまた後で。」

 公爵は一端礼拝堂を出て行った。そしてその数分後、礼拝堂の扉が大きく開かれた。
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