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結婚 2
 才人とルイズの結婚に関して、ロマリア教皇のヴィットーリオが賛同の意を示したことが、2人にとって追い風となった。しかしながら、それでも反対する輩はいた。

 結婚に関しての会議が始まると、賛成派と反対派で喧々囂々の議論となった。

「2人の結婚は教皇聖下もお認めになっていることだぞ!!それに、お2人はいずれ王室から出ることになるのだから良いではないか!!」

 と賛成派の大臣が言えば。

「そうかもしれないが、元々平民である人間を一時的とは言え王室にいれるなど前代未聞だ!?今後に禍根を残さんとどうして言えるか!?」

 という感じで反対派の大臣が言い返し、その勢いのまま応酬が続いた。これはこれまでにも見られていた光景で、このまま続けば結局議論は平行線のままであったが、しかしこの時は違っていた。

 ヴィットーリオの発言のおかげで、これまで反対派だった一部の人間や中立派だった意見の人間が賛成派に回ったために、反対派の人数が少なくなってしまっていた。そのせいで反対派の勢いが以前ほどではなくなり、結果賛成派が会議の流れを掴んで優位に立つのは当然の帰結といえた。

 もともと(古い)トリステインの貴族は伝統を重んじることで知られているが、その反動かどうも論理的な議論が苦手と見えた。こうなると、少数派はただ押し切られるしかない。

 しかしながら、例え良いことであっても革新的なことにはとんと興味を持たなく、やたら反対するくせに、古いことにはとことん拘るのが(古い)トリステイン貴族だった。

「では2人の結婚を認めるにしても、条件がある。」

 1人の反対派の老齢な大臣がそんなことを言い出した。釣られる形で他の反対派の人間も妥協し、条件付での結婚を認めた。

 この後、2人の結婚に関する会議はその条件を詰める会議へと変わった。そしてこちらはそこまで白熱した会議とはならなかった。賛成派もさすがに無条件で2人の結婚を認める気などなかったからである。

 そして最終的に取り決められたのは以下のような物だった。

1 2人の結婚に関しては公には発表しない。他の王室に関しても事情を理解しているアルビオン王室のみ伝えるものとする。

2 2人に子供が生まれても、その子は王宮では育てない。

3 平賀才人氏は王宮内に住まない。(つまりは通い婚)

 随分と厳しい条件である。特に才人が一緒に住めないというのは、ルイズにとって不本意なものであった。だが他の国の特使やら大使やらがよく出入りする王宮内に、彼を住まわせると何かと都合が悪いのも事実であった。どうせ数年の間(と彼女他皆そう考えていた)であるのだから、我慢である。

 さらに反対派は、2人が結婚しても才人には王室の紋がついたマントを渡さないようにしようとした。これはなんとかルイズと賛成派のマザリーニ枢機卿たちの説得によって阻止できた。

 最終的にこの条件の下で、2人の結婚は進められることとなった。もちろん、ルイズはそれでも不満ではあったが、結婚できるようになったのだから贅沢を言ってはいけなかった。

 

 2人の結婚が決まると、結婚式の準備が早いスピードで行われた。もっとも結婚式とは言っても、先ほど書いたとおり公には2人の結婚は発表されないからささやかな物である。

 参加する人間も2人に関係ある人物としては、両家の両親に兄弟(ルイズの姉のカトレアは体調の関係で欠席が予定されたが、無理を通して参加することとなった)、そして親しい友人を5人ずつのみとされた。

 才人は義勇軍内でお世話になっている菅野中佐にシエスタ、そして才人の下で飛行訓練を受けていたカルロ上等兵、そしてアルビオンにいる豊とティファニアを呼んだ。

 ルイズの方は魔法学院時代の友人であるキュルケとギーシュ、モンモランシー、そして恩師であるオスマン校長とコルベールの5人を呼んだ。本来ならギーシュではなくタバサを呼ぶつもりであったが、彼女は生憎この時まだ地球にいたため無理であった。

 ちなみに参加者への招待状には、他言無用を強く念押しする一文が書かれていたのは言うまでもない。

 参加者が決まると、本人たちが着る服の採寸等、着々と準備が進められた。

 その準備が行われている最中、アンリエッタアルビオン王国王妃がトリステインに里帰りして来た。母親であり、現在は隠居したマリアンヌに会いに来たのである。彼女は数日間トリステインに滞在し、そのまま2人の結婚式に飛び入りで出ることとなった。

「よかったわねルイズ、才人殿と結婚できることになって。きっとウェールズ様もお祝いしてくださるわ。」

 結婚式の3日前、ルイズとアンリエッタの2人は王宮の庭で静かに椅子に座りながらお茶を飲み、お喋りを楽しんでいた。

「けど姫様、結婚しても才人と一緒に暮らせるわけではありません。」

 ルイズが少しばかり憂鬱そうに言った。

「仕方がないわよ。けど数年の我慢よ。その・・・私たちに2人目の子供が出来るまでだから。」

 アンリエッタがそんなことを言うが、ウェールズと彼女の間には、未だに1人目が生まれる兆候すらない。それによく考えれば、子供がたて続けに生まれるという保証もない。もし2人に2人以上の子供が生まれなかったら。それはそれで厄介なこととなるだろう。

 ヨーロッパの中世時代と文化が似ているハルケギニアにとって、跡継ぎを生むことは非常に重要なことであるし、その跡継ぎがどのような人物かも非常に重要である。例を挙げるなら、ガリア王室がよく当てはまるだろう。

 またそれが生む側にとって大きなプレッシャーになることも事実だった。アンリエッタは先ほどの言葉を、ルイズを思って言ったかもしれないが、それがさらなる圧力になる可能性もあった。

 子供の頃から、そして今も親友であるルイズは彼女に負担をかけさせてまで自分の幸せを掴みたいとは思っていなかった。

「別に、私そんなつもりで言ったわけじゃありません。姫様は気にしないでください。」

 アンリエッタの言葉に、ルイズはそう返した。

「相変わらず変わらないわね、あなたは。だからこそ才人殿もあなたとの結婚を望んでいるんでしょうね。」

「もう、茶化さないでくださいよ。」

「茶化してなんかいないわ。傍から見ればあなたたちはお似合いのカップルにしか見えないもの。」

 才人とルイズの2人は喧嘩して、言い争いをしていることが結構ある。しかしそれはそれで『喧嘩するほど仲が良い』と言うとおり、周りから見れば仲の良いカップルに見えるものだ。事実2人の仲は悪いように見えて非常に良い。

「とにかく、3日後が楽しみだわ。ドレスはもう仕立てたのよね?」

「ええ、一昨日終えました。」

 彼女のドレスは母親のカリーヌが付き添って造り、一昨日完成していた。

「ルイズのことだからきっと良く似合っているでしょうね・・・そう言えば、才人殿はどんな服を着るんでしょうね?」

「さあ?多分義勇軍の制服だと思いますよ。それに才人がタキシードなんか着たって似合わないですし。」

「それもそうね。」

 2人はそう言うと、お互いの顔を見て笑った。
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