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注意!!この話ではもう原作を大きく逸脱、というか無視したような内容が含まれています。原作正統派の方は読まない方が良いと思います。

それでも良いという方はどうぞ。
盗賊の転職 下
 マチルダと明雄の2人は、それからちょくちょく会うようになった。その頃は別にお互い恋愛としての認識は全くしていなく、あくまで同世代で話しやすい相手としか見ていなかった。

 ただ回数を重ねていくうちに、徐々に2人の距離は狭まっていった。

 特に何かきっかけがあったわけではない。ただ自然に付き合っているうちに、友人という関係から恋人という関係に変化し、そして夫婦という関係へ発展していった。

 アルビオン解放戦争が終わってからしばらくして、マチルダは明雄からプロポーズを受けた。もちろん彼女には断る理由などなく、それを受け入れた。

 その後もしばらくの間、ハルケギニアは騒がしかった。今度はガリアとゲルマニアが突如としてトリステインとアルビオンに宣戦布告し、約1年に渡る戦争となった。それとともに起きたガリア王室とゲルマニア皇室に対する内戦とロマリアの介入がその戦争の混乱を助長させた。

 さらに、この戦争が終結すると今度は聖地を巡っての一騒動が起きた。これはほんのわずかな人だけが関わったことであったが、その後のハルケギニアの運命を左右する上での重大事であったことは間違いなく、5年後に各国政府によって正式に発表された時には大いに話題となったものだ。

 それら戦乱に明雄の所属する義勇軍は出撃し、異世界からもたらされた近代兵器とこの世界の魔法を融合した戦法で、幾度となく敵軍に大打撃を与え続けた。そして、小国トリステインを勝利の道へと(いざな)った。

 戦争が終わり、世の中が落ち着いた所でようやく2人は正式な結婚式を上げることが出来た。

 その後もハルケギニア世界は大きく動き続けた。新大陸の発見や急速な科学技術の向上。そして異世界からの継続的な技術流入など、おそらくこの世界がこれまでに体験したこともないような大革新の連続だった。




「そしてそんな時代にあなたたちが生まれたというわけね。」

 昔話を喋り終えると、今年40歳になるマチルダ・オブ・サウスゴータ・ヤマダはお茶を一口含んだ。

 椅子に座っている彼女の前には、机を挟んで3人の子供たちが座っていた。2人の女の子と1人の男の子。双子姉妹であるエリカ(恵理香)とソフィア(空飛亜)、そして山田家長男のイサオ(勲)である。

 山田家の子供達は、今母親から両親の昔話を聞いていた所であった。

 上の双子姉妹は14歳、長男は12歳。いろいろな事に興味をもつ年頃であるが、そんな彼らは母親をせかして、両親の馴れ初め話を聞きだしたのである。しかしながら、色々すごいことを聞かされて、彼らは困惑していた。

 まず母親があのトリステインを騒がした「土くれのフーケ」であったこと。彼女の存在は現在、半ば伝説化している。彼女の話は貧しい人々をいたぶる貴族を出し抜いた手口から、広く市民に愛され今やラジオドラマや小説の主人公にさえなったその名を知らない人はいないぐらいだ。

 そんな、異世界の某大怪盗の3世をなのる大泥棒のアニメキャラに匹敵するハルケギニアの女盗賊が目の前の人間と聞かされても、信じられなかった。

「ええと、お母さん。その話は本当なんでしょうか?」

 長女のエリカが尋ねる。すると、フーケは微笑みながら言い返した。

「エリカ、私が嘘を言ったことあるかしら?」

 すると、彼女は黙り込んでしまった。実際、目の前にいる母親は嘘などつかない。だからこそ周りの人からの信頼厚く、現在サウスゴータ市市長をしているのだ。

「けど、お母さんがフーケだったなんてとても信じられませんわ。」

 そう言うのは次女のソフィアだ。彼女にとって、自分の母親がフーケであったことなど、異世界が存在する以上に疑問符がつくことだった。もっとも、これは異世界の存在が正式に確認されているからだが。

 一方、マチルダの方は夫との出会いとかは無視して、そっちに注目されたことに少しばかり複雑な想いを持ちながら答える。

「別に信じたくないなら信じなくても良いわよ。」

 フーケはそう言って彼女の疑問に答えた。

 ソフィアは目の前の母親のことをもう一度よく考えてみる。普段は温厚で、物腰も非常に貴賓に溢れているが、いざ夫婦喧嘩となると粗暴な言葉を連発し、父親に対して土魔法を炸裂させるなど、確かになんとなく信憑性があるような気もしてならない。それに、市長として市議会などで相手の議員を黙らせるのも得意であるのだ。

 マチルダは顔を、黙ったままの息子に向けた。

「イサオ。あなたはどう思うの?」

 すると、息子は笑顔で言った。

「僕はお母さんがフーケであったと思うよ。ただし、こんなこと誰かに言っても信じてもらえないとは思うけど。」

 歳のわりにしっかりしていると言われる息子ならではの答えだった。

「そう。」

 マチルダは息子の答えに満足したが、それに対して2人の娘がイサオに襲い掛かった。

「この!」

「あんた弟のくせして生意気よ!!」

「痛い!痛い!やめてくれよ姉ちゃん!!」

「「うるさい!!」」

「こらこら、暴力は振るうもんじゃないわよ。」

「「だって!」」

「だってじゃないの。」

 そう言って、フーケは今の状況と、かつて自分が人を殺すようなこともしていたのと比べて、苦笑いした。

「「「?」」」

 子供達は、その苦笑の意味がわからず。母親を変な顔で見つめていた。

 そんな中、家の外から車のエンジン音がした。

「あら?早いわね!?」

「「「お父さんだ!!」」」

 まもなく家の玄関の扉が開き、青い制服を着こなした40代の男が入ってきた。

「ただいま。」

 男、ハルケギニア王国連合空軍大佐の山田明雄が帽子を外しながら言った。

「「「おかえりなさい!」」」

 3人の子供たちが父親を出迎えた。もう10年近くもつづくこの家の恒例行事だ。明雄の職務は、ヘリコプター・飛龍連合部隊の司令官だ。1週間前からトリステインで行なわれた各国空軍との合同救難演習に出かけていたために、帰ってくるのは明日のはずだった。

「お帰りなさい。早かったわね?」

「ああ。天候の関係で実施を前倒ししたから。はい、これ。アイスランドのテファさんから。郵便受けに入っていた。」

 明雄が手紙を差し出した。現在電話の普及が進んでいるものの、トリステインと浮遊大陸のアルビオンとの間では個人宅のレベルまで整備がされておらず、連絡は現在も手紙に頼られている。

「それと、これはお前たちにだ。」

 明雄は持っていた紙袋を子供たちに差し出した。大方中身は地球から輸入された何かだろう。彼らは早速中身を出して、分配を始めた。

「留守の間ありがとう。」

「ええ。子供たちにせがまれたから、昔話をしたわ。」

 明雄はそのセリフに表情を変えることなく言う。

「そうか。みんな驚いただろうに。」

「もちろん。信じられないって評定したわ。」

「そうだろうな。」

 彼は微笑んだ。

「けど、俺たちがこうして結婚しているっていのも本当だったらありえないことだったんだよな。」

「そうね。もし地球とこの世界がつながらなかったら、私はいまごろどうなっていたか?」

「小説そのまんまに生きてたかもね。」

「そうかもね。」

 そして2人は、お互いを見合って笑った。
 御意見・御感想お待ちしています。

 ちなみに、ヘリパイロットの2人の名字は戦国自衛隊(初版)からもらっています。それと、明雄の肩書の王室連合というのは、時雨沢恵一作のアリソンの中のスーベーイルをモデルにしています。


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