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桜花飛行機ー義勇軍航空機調達秘話 中
 それから2週間後、疑心暗鬼ながら、才蔵についていく形で東京へと派遣された若手社員が興奮しながら桜花飛行機へと帰ってきた。

「社長、あの人の言っていたことは本当でしたよ!!異世界は確かにありました。そして彼らはそこで軍隊を作っていました!!飛行機の発注は本気だったんですよ!!」

 さらにその若手社員が撮ってきた写真や映像によって、異世界の存在と、平賀才蔵が言っていた『東方義勇軍』の存在も裏付けられた。

 その翌日、才蔵が桜花飛行機を再び訪れた。

「信じていただけましたかな?」

 大田と話し合いを始めるなり、才蔵は微笑みながらそう言った。

「取り敢えず、あなたの言っていた異世界存在と、あなた方が戦闘機や練習機を欲しがっている理由もわかりました。しかしながら、なぜ我々なのですか?うちの会社は確かに飛行機を製造出来るだけの実力を持っていると自負しています。だが経験はほとんどないし、取るに足らない弱小企業ですよ?」

 才蔵はその質問の答えを、表情一つ変えずに説明した。

「我々としてはだからこそあなた方に頼んだということでしょうか。大手企業や、飛行機の生産経験がある中核企業では、生産ラインに余裕があるかわかりませんし、だいいち与太話として取り合ってもらえない可能性も高い。それに我々の秘密が漏れる可能性も同時に高くなる。失礼かもしれませんが、この会社位の規模がそういう点で丁度良かったのです。加えて、北海道という立地も好都合です。試験飛行の時に目立たなくて良い。」

 その説明に納得すると、大田は受注契約を纏め始めた。

「なるほど。わかりました。」

「それではお受けしてもらえるのですね?それなりにリスクもつきますよ?それでもよろしいのですね?」

 才蔵が念押しの意味で問うと、大田は深く頷いた。

「もちろんです。」

 こうして、桜花飛行機は『東方義勇軍』に協力してくれることとなった。2人は堅く握手をして、協定締結の書類にサインした。

「それで、発注してもらえる飛行機はこないだ話された数で宜しいのですか?」

「取り敢えずは。ただし、場合によっては今後定期的に航空機を発注するかもしれません。しかもより多い数で。」

「わかりました。その場合は改めて方策を考えましょう。それと、費用は複数発注とはいえ、1機あたり1億前後になる可能性が高いですが、よろしいでしょうか?」

「ええ。最近は金の値段が上がっているので、我々が向こうの世界から持ち込んだ金の量で十分支払えます。」

 現在金の値段は世界的な金属高騰でかなり上がっていた。そのため、一回に地球へ持ち込む量で十分支払える筈だった。

「それでは機体の納期について・・・・」

 この時の話をまとめると、以下のような感じで商談がまとまった。



 発注する機体の第一陣は赤とんぼ練習機6機、ゼロ戦4機の計10機。いずれも武装は義勇軍引渡し後の搭載とするが、無線機などは義勇軍側の指定した製品を搭載する。

 材質に関しては、オリジナル通りにこだわる必要はなく、新素材などを使っても構わない。つまりカーボン等の素材を使っても良い。

 この発注については他言無用。役所等に聞かれた場合に対してはアクロバット用、もしくは映画撮影用の機体と説明すること。

 義勇軍側は前金として1億円を支払う。

 なお北海道から東京への空輸は困難なので、分解して移送する。その費用は義勇軍側が負担する。(後に、これは北海道からも新月を利用してハルケギニアへの輸送が可能と証明されたために不要な条項となった)

 ゼロ戦については22型をモデルとすること。

 航続力はオリジナルより多少下がっても良い。その代わり防御力と武装を高めること。

 今後の発注を見越して、改良型や新造機の設計を行うのは構わないが、発注要請がない機体の場合、桜花飛行機側が全責任を持つこと。(この条項も後に廃止となった)

 

 こうして商談が結ばれ、早速桜花飛行機はそれまでの大手の下請け仕事を全てキャンセルして、注文された飛行機の生産に全力投球することとなった。

 いずれの機体も昔実際に生産されていた機体であるので、設計図を手に入れるのは用意であった。桜花飛行機の技術陣、といってもこの時点においては、社長の太田含めたった4人であったが、彼らは早速オリジナルの改良を数箇所に施した。

 しかしながら、その改良もこの時はまだまだ経験不足であったために、小規模な物を数箇所行うに留めた。それでも機体の一部素材をカーボンに取り替え、さらに機銃の取り付け位置の変更(機首銃を翼内へ移設。) や新型防弾ガラスの設置。燃料タンクの防弾化などを行った。

 こうした改良は外見的には大して変化はなく、この新造ゼロ戦はこれまでに『東方義勇軍』が使っていた物と外見的には変化がなかった。

 ただし機体強度はオリジナルよりもはるかに強化されているので、急降下して空中分解ということは絶対に起きない。さらに防御力もアップしているので、一発被弾したら火達磨ということもないはずであった。

 一方練習機の赤とんぼの方も、外見の変化はなかったが、機体のフレームの一部にカーボンが使われたことにより、重量の軽減と機体強度が上がっている。

 また両機種の共通事項として、エンジンを当時の設計のままで、現在の技術により造った物を搭載した結果、軒並み出力は2〜3割アップし、機体自身の性能も速度や燃費などが1〜2割アップしている。

 これらの設計は桜花飛行機設計陣が不眠不休で取り組んだ結果、約1週間で終わり(彼らは大晦日と正月を返上した)、1月4日の仕事初めのころには機体の製造に取り掛かっている。

 機体の製造は、義勇軍側から2月の新月には空輸したいという注文があったため急がれた。それまで月に1、2機のグライダーや、大手企業の下請けで航空機用部品を作っていた工場では、突貫で10機の製造が進められた。

 最新の機材と労力を惜しみなく投入した結果、赤とんぼの1号機は1月20日、ゼロ戦の方も2月1日にはそれぞれロールアウトした。

 完成した機体はさっそく晴れの日を狙って試験飛行が行われた。

 もちろん、飛行するのだから当然国土交通省の監査が入ったのであるが、なんとかアクロバット用と飛行学校用の機体として検査をパスできた。まあ、飛べるように造ったのだからパスできた当然だった。

 桜花飛行機の技術者たちは、監査委員が機銃の取り付け位置などに気づくのではと警戒したが、結局怒るべきか笑うべきか、全く気づかなかった。

 そして2月10日までに赤とんぼ6機、ゼロ戦2機全てがロールアウトし、北海道の大地に翼を連ねることが出来た。

 これらの機体はその後領収に来た義勇軍の空輸部隊のパイロットによって試験飛行が行われた後、義勇軍に引き渡された。この時1人のパイロットの提案によって、北海道でも新月を通れるか実験を行った。その結果、通ることが出来た。ただし、通じていた先はトリスタニア上空ではなく、ラ・ロシェール上空だったが。

 この結果、地球製航空機輸送用のルートは変更となった。さらにはそれまで使われていた物資の空輸ルートも、それまでの東京近郊の飛行場〜ミライ飛行場へというルートから、北海道桜花飛行機本社工場〜ラ・ロシェール飛行場に変更となる。

 とにかく、こうして義勇軍は地球での新造航空機の生産と輸送が可能となった。もちろん、物語はここで終わりはしない。
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