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義勇軍VS空中装甲騎士団 7
 才人が零戦改を城壁の外に広がる草原に着陸させると、早速菅野中佐とシエスタ、さらにギーシュが走りよってきた。

「やったな才人君。見事だったよ。」

「旧海軍の撃墜王にそう言って貰えるなんて、夢にも思いませんでしたよ。まあ、今回は相手が相手でしたから、勝てて当然ですよ。」

 才人がゴーグルを取りながら答えた。

 その菅野の後ろから、今度はシエスタが声を掛けてきた。

「才人さん、私とても心配だったんですよ。いつ才人さんが実弾を使わないかと。」

 才人が別の心配をしていたことを正直に言った。

「ハハハ・・・心配してくれてありがとう、シエスタ。けど、俺だってさすがにそんな無茶はしないよ。」

 今度は苦笑いをしながら答えた。

「いやあ才人、お見事だったよ。おかげで胸がスカッとしたよ。」

 ギーシュが満面の笑みを浮かべながら、才人をたたえる。彼としては普段から威張り散らしているものの、家の関係で注意ことすら出来ないベアトリスと、その親衛隊とも言うべき空中装甲騎士団の存在は気に入らないものだった。それを才人がコテンパンに叩いたのだから、胸がスカッとして当然だった。

 才人はコックピットを出て、機体の外へと出た。そして翼の前にやってきたギーシュの側に行く。

「ありがとう、ギーシュ。けどこれで、あの姫さまもちょっとは俺たちの実力を認める気にはなったかな。」

「彼女だけじゃないさ。君たちの実力に半信半疑だった学院にいる他のメイジたちも、きっと考えを変えたはずだ。」

 そこでギーシュは表情を、何かを心配したようなものにする。

「けど大丈夫かい?あそこまでコテンパンに打ちのめしちゃって。きっと彼女はカンカンだよ。」

 だが才人は表情をまったく崩さずに答えた。

「ああ、それなら大丈夫。万が一の時は、あんまり出したくはないけど、強力な切り札があるから。」

「切り札?・・・ああ、なるほどね。」

 ギーシュが首を傾げた。

「そういうことですよ、ギーシュ大佐。おっと、早速噂のお姫様が来ましたよ。」

 才人に続いて着陸したカルロ兵長が、いつの間にか2人の傍へと来ていた。そして視線を別の方向へと向けていた。彼の視線の先には、顔を真っ赤にして才人の方へと歩いてくるベアトリスの姿があった。

 彼女は才人の前にやってくると、まくし立てるように言った。

「よ、よくも私に恥をかかせてくれたわね。いえ、これはもはや私だけではないわ。グルテンホルフ大公国全体への侮辱だわ!!この事は代王殿下にもお伝えしますからね。覚悟しなさい!!」

 才人が挑発したとはいえ、空中戦を言い出したのは彼女である。それに負けてなおこう言うのだから、完全な逆恨みである。しかしながら、才人はバックに強力な手形を持っているだけに、余裕の態度で言い返した。

「あんたを挑発したことは一応謝りましょう。けど、戦いを仕掛けてきたのはあなたの方だ。その戦いに負けてなおそんなことを言って、見苦しいとは思わないのか?」

 その言葉に、ベアトリスの怒気はさらに大きくなる。

「まあ、平民のくせに生意気な!!」

 彼女の言葉に、ついに我慢が出来なくなったのか、カルロが一歩前に出て言った。

「ベアトリス殿下、失礼ながら言わせて貰います!平賀中佐はメイジではありませんが、平民ではなく、前女王陛下直々に男爵位をいただいたれっきとした貴族です。それに今は、王族の中に名を連ねておられます!」

 彼の言葉に、ベアトリスは一瞬キョトンとしたが、すぐに彼の方へ顔を向けると、先ほどと同じく、捲くし立てるように言った。

「はあ!?そんなことがあるわけないじゃない。あなた、今の言葉は王室を侮辱する立派な不敬罪よ!!」

 だが、カルロは彼女を無視するように、才人に向けて言った。

「中佐、この頑迷な姫様に、あれをみせてやってください。」

 すると、才人は苦笑いしながら言った。

「あんまり俺は着たくないんだけどな、ああいう堅苦しいもんは。けど、こうなったら仕方がないか。」

 才人はゼロ戦に上って、操縦席に頭を突っ込んだ。どうやら何かを探しているようだ。

 20秒ほどして、彼はようやくお目当ての物を見つけた。

「あった。」

 それは折りたたまれた一枚の布地であった。彼はそれを広げ、自分の肩にかけた。

「ああ!!」

 それを見て、ベアトリスが叫んだ。才人が広げた布地は、マントであった。それはこのハルケギニアにおいて、羽織っている人物を貴族と証明する何よりの証だ。ところが、才人のつけているマントは、明らかに普通の物とは違っていた。

 まず布地自体が、明らかに高級な物で、それこそ公爵家のような高貴な家柄にしか許されないような代物だった。さらに、そのマントの首元にあたる部分には、2つの紋章が刺繍されていた。1つは、彼自身が男爵であることを示す紋章。そしてもう1つは、王族に名を連ねる者だけが許された百合の紋章だった。

「そ、そんな・・・どうして!どうして魔法も使えないような平民が男爵なの!?どうして王族の紋章を付けているの!?」

 ベアトリスが体を震わせながら言った。ただし先ほどのような怒りによるものではなく、それは恐怖によるものだった。トリステインの王族に喧嘩を打ってしまったかもしれないことによる。

「あなたには教えてあげても良いでしょう。今代王になっているルイズとは、あいつが王宮に入る前に正式に婚約しました。その後政府内からの反発で正式な結婚式をあげることは出来ませんでしたが、7ヶ月前に一応内々で結婚の儀式を上げました。ですから、俺とあいつは今じゃ夫婦で、しかも俺は末席ですが王家に名を連ねています。まあもっとも、アルビオンのウェールズ国王や、アンリエッタ姫殿下の応援もあって、近いうちに本当の結婚式をあげることになるでしょうけど。」

 最後の方の言葉は、すでにベアトリスの耳には入っていなかった。彼女は才人の言葉で、自分が一体何者に喧嘩を吹っかけたのか、よーく理解した。

 彼女は父親から逆らってはいけないものを3つ教えられていた。1つはマザリーニ枢機卿。1つはラ・ヴァリエール家。そして最後の1つはトリステイン王室であった。

 彼女はその内の2つを事実上敵に回していたわけだ。いく彼の正体を知らなかったとはいえ、彼女はトリステインという国を敵に回したも同然だった。もし今ここで彼女がルイズに才人のことを訴えたところで、良くて無視されるか、悪いとグルテンホルフ公国になんらかの罰が与えられかねない。

 そしてベアトリスは知らなかったが、ルイズはグルテンホルフをゲルマニアの成金が創った国に過ぎないと考えていたから、後者の可能性が高かった、だいたい才人がグルテンホルフを傀儡国家と発言したもの、そもそもがルイズと話していたときの印象が強かったからだ。

 口をパクパクさせて、もはや言葉すら出なかった。そんな彼女に、才人は一言声を掛けた。

「これからはちょっとばかり、人に対する態度を改めると良いですよ。もうちょっと謙虚にならないと、後でとんでもないしっぺ返しを貰いますよ。」

 そう言いおえると、才人は菅野やシエスタ、カルロに向かって言った。

「さ、そろそろ帰りましょうか?」

「ああ。」

「ええ。」

「了解です。」

 3人は才人の言葉に頷いた。



 この後、結局ベアトリスが王室へ才人のことを通報することはなかった。そして彼女は、以前とは人が変わったかのように、謙虚な姿勢を取るようになったという。また、この事件が魔法学院生徒たちの平民に対する考えを変えるのに一役買ったのだった。

 そうした様子をみて、オスマン校長は笑みを浮かべていた。
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