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義勇軍VS空中装甲騎士団 6
 重々しい発射音と共に発射された銃弾は、曳光弾による赤い尾を引きながら狙った竜に吸い込まれていった。

 そして次の瞬間には、2匹の竜とそれに乗っていた騎士が弾けたペイント弾の染料によって真っ赤になった。実弾だったら撃墜確実である。

 もっとも才人とカルロの方はそれを見届けている暇などなかった。なにせ300km近いスピード差がついているのだ。100mそこそこの距離など、それこそあっという間に追いついてしまう。つまり機銃弾を発射させた直後に操縦桿を倒し、フットバーを蹴って避けないと衝突してしまう。

 才人とカルロは一撃を加えると、そのまま竜騎士の編隊の右下方をすり抜けた。

「カルロ、大丈夫か?」

「はい、ちゃんと中佐の後ろについています。」

 今回が実戦(もしくは実戦にかなり近い演習)初参加のカルロが何かアクシデントを起こすのではないかと心配していた才人であるが、さすがに訓練生の中でも優秀な成績を収めていただけあって肝が座っていて上手い。

 才人はそんな彼の腕前に大いに満足していた。

「ようし、今度は敵の前方から上昇しながら一撃をかけるぞ!!」

「了解!!」

 2機は降下を止めて、急旋回すると、今度は竜騎士の右下方からの攻撃を掛けるために上昇した。

 一方、攻撃された竜騎士の方は大混乱に陥っていた。才人たちの乗る零戦改の高速もさることながら、その高い機動性に全くついていけないのだ。さらに20騎という数が逆に足かせになっていた。

 相手が同程度の運動性しか持たない竜や幻獣、それに地上目標なら特に問題にならないが、驚異的な速力と上昇力、急降下能力を持つ零戦(ゼロセン)改に対抗するには迅速な対応力が必要である。そうなると、リアルタイムで連絡を取り合う必要があるのだが、生憎とハルケギニアに無線機という便利な代物はない。

 竜騎士の隊長は風魔法での通信を試みるが、そんな悠長なことをやっている余裕はなかった。2騎の竜を血祭りに上げた才人らはあっという間に旋回してくると、下方からの一撃を放ったのだ。

 竜騎士が竜にブレスを、自身も魔法で攻撃を掛けようとしたが、それも結局間に合わなかった、才人らは悠々と攻撃を行った。再び2騎の竜と乗り手がペイント弾によって真っ赤になった。

 さらに才人は旋回するほんの一瞬の間だけ照準に入った竜にも一撃を与えていた。まさに『ガンダールヴ』の真髄を発揮した瞬間だった。

 わずか2分もしないうちに、空中装甲騎士団は20騎の内の5騎士に被弾していた。もちろん被弾した竜はそのまま戦線を離脱している。戦力の4分の1がそれこそあっという間にやられてしまった。

 これは装甲騎士団の竜騎士たちにとてつもない恐怖を植え付けた。

「化け物め!」

 また地上で見ている魔法学院の生徒をはじめとするギャラリーたちも、タルブ上空で起きた『東方義勇軍』の伝説を目の当たりにし、メイジたちのほとんどは呆然としていた。またマルトーら平民たちはメイジの前であるから、表立って喜べなかったが、内心では才人らに喝采を浴びせていた。

 その中で冷静にしている人間が2人。菅野中佐とシエスタである。2人は持ってきた双眼鏡で空中戦の様子をしっかりとみていた。

「すごいですね、さすが才人さん。それにカルロ君も中々やるじゃないですか」

「いやいや、才人君はともかく、カルロ兵長の方は旋回の時の切れが甘い。それに弾を少しばかり無駄にばら撒いている感じがするぞ。やっぱり100時間じゃ訓練不足だな。基地に帰ったら、しっかりしごかないとな。」

 歴戦の撃墜王だけあって、中々辛口の批評をする菅野。だが言葉とは裏腹にその表情は明るい。これはカルロが100時間という飛行時間で戦っていることに、内心満足していたからだ。

 彼のいた旧日本海軍の航空隊はパイロットの養成を怠っていた。とくに、戦争末期の頃は80時間から100時間の飛行経験しかないパイロットを特攻に投入していた。そのほとんどは基礎の飛行が出来る程度で、敵戦闘機の追尾を撒くことも、場合によっては敵に辿り着くことさえおぼつかない者もいた。それを知っている彼からしてみれば、100時間で空戦をしているカルロは期待できるパイロットであった。

 なお余談だが、けっして飛行時間と腕が比例するわけではない。現にかつて沖縄の米軍基地に夜間攻撃を仕掛けていた芙蓉隊という飛行部隊では、飛行時間200時間のパイロットでもレーダーもない飛行機で夜間攻撃を行うだけの腕を持ち合わせていた。

 閑話休題。

 5騎の竜騎士を撃破されたところで、ようやく空中装甲騎士団は態勢を立て直して反撃に移った。部隊を2個に分けて、一隊が攻撃を受けても、その隙にもう一隊が攻撃を掛けようと考えたらしい。

「2隊にわけたな・・・カルロ!相手は2隊にわかれたぞ。恐らく1隊に攻撃をしている内に、もう一隊が攻撃を掛けてくる気だ。だから油断するな!!いいか、とにかく相手に隙を見せるな。攻撃したらすぐに離脱しろ!!」

「わかりました!!」

 2機は攻撃を再開した。空中装甲騎士団は左右にわかれて挟撃を図ろうとしていた。才人は右の編隊に攻撃を掛けた。もちろん、狙いは外さず2騎の竜騎士にペイント弾をぶち込んだ。

 その間に左側の竜騎士は才人らの先回りを図った。だが才人は攻撃をし終わると、全速での急降下に移った。もちろん竜騎士は同じように急降下で追跡を図った。だが、ゼロ戦はオリジナルでも600km、機体を強化した零戦改なら750kmは出る。そんなスピードに竜が追いつけるはずがない。たとえ追いつけても、乗っている騎士が耐えられるはずがない。

 才人とカルロは急降下で彼らを撒くと、先ほど攻撃を掛けた方の編隊に一撃をかけ、またも2騎を血祭りに上げた。しかも上昇して旋回すると、さらに一撃を与えて2騎にペイント弾を撃ち込んだ。

 この時点で既に残存する竜騎士は9騎にまで減っていた。空戦が始まってわずか5分で敵は半減した。そして竜騎士からしてみれば、たった2機の敵によって味方の半分が落とされたことになる。

 ここまで来ると、竜騎士の恐怖はピークに達していた。さらに竜の方も零戦改のエンジン音と、重い機関銃の音に完全に恐怖心を持ってしまっていた。

 こうなるともはや編隊など組む余裕はない。ただでさえ、竜騎士は編隊を組むほど意思疎通が利かないのだ。ついにバラバラになって遁走をはじめた。

 だが最高速度が違いすぎる零戦改から逃げられるはずがなかった。それどころかバラバラに逃げたために、各個撃破するチャンスを敵に与えただけだった。

 結局残る9騎士もわずか5分の間に全滅してしまった。

 一回蛮勇を発揮した竜騎士が、カルロに向かって風魔法を最大威力で発射して才人も地上で見ていた2人も冷やりとしたが、彼はこれを見事に交わした。

 戦闘開始20分もしない内に、空中装甲騎士団は全滅してしまった。

「やりましたね中佐!」

 初めての実戦を勝利に終わらせたカルロが興奮しながら無線連絡してきた。

「ああ。ようし、カルロ。学院上空でヴィクトリーロールをして決めるぞ!!」

「了解!!」

 2人はギャラリーたちの真上でヴィクトリーロールを行い、自分たちの勝利に華を添えた。

 一方、自慢の装甲騎士団を短時間で全滅させられたベアトリスは、わなわなと震えていた。

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