ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
義勇軍VS空中装甲騎士団 2
 魔法学院へ向けて飛び立った4機は、ベテランの菅野中佐を先頭にして綺麗なV字編隊を組み、一路飛行する。もっとも、馬で4時間以上掛かる距離も飛行機なら20分もしない内に着いてしまうが。

 離陸し、編隊を組んでからそれこそあっという間に4機は魔法学院上空に到達した。才人たちが引き揚げた現在、魔法学院の城壁の外に造られた格納庫も、吹流しなどを備えた簡易滑走路もすでに撤去されている。だから各機はそれぞれ独力で着陸場所を見定めて、降りなければいけない。もっとも、ハルケギニアの大地は平地や草原が多いから、飛行機が着陸できる場所は結構ある。

 そういうわけで、菅野を先頭にして早速着陸に入ろうとしたのであるが、ここでまたもシエスタから意外な提案が出た。

「中佐、せっかくですからあれやりませんか?」

 この2人結婚しているとはいえ、義勇軍内ではちゃんと階級で呼び合っている。

「そうだな。ようし、ならやるか!」

「「?」」

 才人とは2人が一体何をしようとしているのかわからなかった。そこへ菅野から無線で指示が飛んだ。

「平賀中佐とカルロ兵長は少し離れてくれ。これからシエスタ兵曹と一緒に編隊宙返りをやる。」

 この言葉で、ようやく才人らは彼らが何をやろうとしているのかを理解した。

「了解!でもくれぐれも気をつけてくださいよ。特にシエスタは飛行経験が浅いから。」

 この世界にたどり着く以前から飛行機を操縦し、さらに48機撃墜の菅野は飛行時間が既に4桁に達している。しかし、昨年から習い始めたばかりのシエスタは飛行時間がようやく200時間を越えたばかりだ。佐々木少尉の血を継いでいて、なおかつ運動神経の良い彼女の腕は悪くないが、経験という点からはさすがに心配になった。

 しかし、無線からはシエスタの自信満々の声が返ってきた。

「あら、私の腕を見くびらないでください。それに経験で言ったら才人さんも同じでしょ?安心して下さい、ちゃんと中佐とみっちり訓練してきましたから。」

 そういうと、彼女らはそれまでの4機編隊を解いて才人たちからは距離を取る。幸い今日はちょうど授業のない虚無の曜日であるから、授業の妨害にもならない。

 菅野機とシエスタ機はピッタリと並ぶと魔法学院の真上まで飛び、そこでグルッと垂直に円を描く形での宙返りを始めた。

「へえ、上手いじゃないか2人とも。」

「惚れ惚れするぐらい息が合ってるね。」

 才人とデルフがそう言うほど、2人の息はピッタリであった。2機は美しく円を描いて飛ぶ。それこそアクロバットチーム顔負けの腕だった。才人が感心するのも無理ない。

 菅野とシエスタの2人は計3回の編隊宙返りを披露した。もっとも地上の生徒たちが一体どのような反応をしたかはわからないが。

「ようし、お遊びはここまでだ。着陸する。」

「「「了解。」」」

 菅野の命令により、才人らも着陸態勢に入った。ちなみに、才人と菅野は階級は同じ中佐だが、軍歴の関係で菅野の方が先任指揮官となっている。

 4機はそのまま魔法学院の城壁の外の野原に機体を着陸させたが、幸い事故は発生しなかった。才人の2番機であるカルロ兵長は飛行時間がようやく100時間を越えた所であったが、彼も危なげなく着陸した。

 着陸すると、4人は機体に車輪止めをかませて飛行服を脱いだ。一応今回は魔法学院という高貴な場所を訪問するために、全員飛行服の下に茶色の軍服を着込んでいた。白い礼装でないのは、なるべく目立たないようにという配慮からだ。

 ちなみにここの所めっきり出番が少なくなったデルフもちゃんと才人はもっていく。

 4人は中へ入るために城門まで移動した。まずそこで衛士に止められるが、才人が才助から女王名義の許可状を見せたことで、通ることができた。もっとも許可状などなくて、かつて魔法学院に暮らしたことのある才人なら通れたであろうが。

 魔法学院内に入ると、シエスタはマルトーや元同僚のメイドたちに会うと言い、菅野とともに行ってしまった。その姿を見ながら、才人は思った。

(多分マルトーさんたち、すごく驚くだろうな。)

 シエスタが魔法学院をやめたのは半年以上前のことであるが、それこそいきなりという言葉が良く当てはまる物だった。それだけでもマルトーたちにはビックリであっただろうに、さらにそのシエスタがいきなり旦那を連れて現れたら、驚きも100倍になって当たり前である。

 才人の脳裏には、驚愕の表情となったマルトーらの顔が思い浮かんだが、すぐにそれを打ち消して、自分の仕事をすることにした。

「それじゃあ、俺たちはとりあえずオスマン校長に渡す物、渡してくるか。ようし、カルロ行くぞ。」

「はい。」

 才人は部下を連れて校長室へと向かった。

 虚無の曜日であるせいか校内は静かで、時折生徒や教師の姿を見かけるだけであった。そうして出会う人の中に、見知った顔はいなかった。また相手も最初はこちらを訝しげに見ていたが、制帽にハルケギニア語で書かれた『東方義勇軍』の文字を見ると、何も言わずにそそくさとどこかへ行ってしまう。

 最初こちらの世界に来たばかりの時や、義勇軍が創設されたころは平民ということで随分と馬鹿にされたが、タルブやアルビオンでの活躍がトリステイン国内に響き渡ると、そうしたことはなくなった。

 才人は校長室へと着くと、扉をノックした。

「誰じゃ?」

 中から聞き覚えのある老人の声がした。

「『東方義勇軍』の平賀才人です。」

「入りたまえ。」

 そう返事が来るなり、才人は扉を開けて中へと入った。

「おお、よく来たね。」

 立派な白ひげをたくわえ、タバコを吹かしている老人、魔法学院校長のオスマンが才人の顔を見るなり言った。

「お久しぶりですオスマン校長。」

 才人も帽子をとって挨拶した。

「うむ。おや、そっちは誰かな?」

「ああ、俺の部下です。カルロ、これからちょっと大事な話をするからしばらく外で待っていてくれ。」

「わかりました。」

 彼は部屋の外へと出て行った。それを見届けたところで、才人は本題に入った。

「それじゃあまず、こちらをお渡しします。」

 才人は才助から頼まれた書類をオスマンに渡した。

「ふむ。確かにあずかった。どこまで出来るかわからないが、やれるだけやろう。」

 既に何回もしていることなので、受け渡しも非常にスムーズだった。オスマンは書類を受け取ると、机の引き出しにそれをしまった。

「よろしくお願いします。」

 才人は頭を下げた。

「ああ。ところで、どうかね最近は?」

 用件は終わったとばかりに、

「そうですね・・・」

 2人は世間話を始めた。才人はこの世界にだいぶ慣れたことや、義勇軍でのこと、国際情勢について話した。また、そうした暗い話題ばかりじゃだめだと思い、ルイズとのことも話した。

「・・・まあ、そんな感じです。」

「そうかね。ところで、君は確かグラモン家の息子とは仲が良かったね?」

 急にオスマンがそんなことを言った。グラモン家の息子とはギーシュのことである。

「え?ええ、ギーシュとはそうですけど、それが何か?」

「実は先日、学生の志願者を中心として新たな近衛部隊として水霊騎士隊が創設された。その隊長に彼が抜擢されたんじゃよ。今日彼らは学院の裏庭で訓練中の筈だから、会ってきたらどうだね?」

 才人はそういえば、そんなことをルイズに聞いたということを思い出しながら、彼にも会ってみたくなってきた。

「そうですね。そうします。ありがとうございました。」

 こうして才人はオスマンとの会話を切り上げ、部屋を出た。
 御意見・御感想お待ちしています。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。