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ティファニアの使い魔召喚 上
 アルビオン解放戦争が終わってからしばらくして、シティ・オブ・サウスゴーダ近郊の新たな領主となった平賀才吉公爵のおかげで、それまでひっそりとアルビオンの森の中で暮らしてきたハーフエルフの少女であるティファニアは、外の世界を見ることが出来るようになった。もちろんハルケギニアでは不倶戴天の敵(厳密にはメイジにとっては)として扱われるエルフの尖った耳を持つ彼女が、公にその姿をさらすことなどできはしない。しかしながらこそこそとはいえ、外の世界を見られるようになったことは彼女にとって大きかった。

 そんな彼女は才吉の勧めもあって、それまで住み慣れたウエストウッド村を子供たちとともに離れて、彼らともども今は才吉の屋敷に住まわせてもらっていた。ただしそれまで色々と自分自身の力で働いてきた彼女にとって、ただ養ってもらうということは出来なかった。

 彼女は時には屋敷の仕事を手伝ったり、時には義勇軍で不足していた臨時野戦看護士などの仕事をしたりと精力的に働いていた。特に義勇軍の仕事を手伝ってシティ・オブ・サウスゴータ郊外にある同軍基地に出入りすることが以外に多く、一部の兵士からは「南の女神シエスタ、北の女神ティファニア」とまで言われた。

 ただし、それで良いことばかりが起きたわけではない。確かに義勇軍基地に入る事で多くの人と交流を持つことが出来たし、また時折飛んでくるトリステインとの連絡便に乗ってミライの町(トリスタニア近郊の義勇軍基地の側に出来た町)へ遊びに行く事も出来た。

 しかし、彼女の整った顔立ち、長く美しい金髪、そしてどうやって支えているのか不思議に思うくらいの、ぶっちゃけ在りえない大きさの胸は男の気を引いてしょうがなかった。彼女が行く所全てで、飢えた狼のごとし男どもの視線があった。だが、長く世間から離れて暮らしていて天然の彼女は、生憎とそうした視線に気付くことが出来なかった。

 それに気付いて行動を起こしたのは、彼女の義理の姉とも言うべきマチルダだった。彼女がある日義勇軍基地で働く彼女の様子を見に来た時のこと、彼女はティファニアに向けられている鋭い視線をいくつも感じた。そして彼女はすぐに気付いた。

(ティファニアが狙われている!!)

 このままでは義理の妹の貞操が危ないと悟った彼女は、どうするべきか悩んだ。まさか彼女に四六時中ついているわけにも行かないし、かといって折角働いている義勇軍から離れさせるのもまずい。第一義勇軍から離れたところで、問題の根本的な解決にはなっていない。彼女をどう守るかが肝心なのだ。

 と、そこで彼女はあることを思い出した。それはティファニアがメイジであることだった。ちなみにその事を知っているのはマチルダと才吉、才人、ルイズくらいのごく限られた人間であった。

 さらにこの時点では、彼女が『虚無』の担い手であることに気付いている者は皆無だった。古い付き合いであるマチルダさえ、彼女が使った魔法を四系統の魔法のどれか、もしくはその中でも新たに発生した何かと考えていた。

 閑話休題。

 とにかくメイジであるなら、使い魔を呼び出せる筈である。もちろん、どんな使い魔が出るかはわからないが。それでも四六時中付いてくれる使い魔であれば、なんらかの役に立つはずだ。

「そうと決まれば、明日にでも早速あの娘にやらせてみるか。」

 そう結論を下した彼女は早速、翌日平賀公爵の屋敷に言って彼女に会った。




「テェファ、あんた使い魔を召喚してみたらどうだい?」

 自分の部屋にやってくるなり、開口一番そう告げた彼女に、テファは少しばかり困惑した。

「ええと、いきなりどうしたのよマチルダ姉さん?」

「うん?いやね、最近あんた大分忙しくなったように見えたからね。それに世の中まだまだ物騒だし、だから手となり足となる使い魔があんたにもいた方が良いんじゃないかなと思って。」

 テファからの反論は計算済みであったマチルダが、あらかじめ考えていた理由を言う。もちろん、半分は嘘だ。

「うーん・・・確かに忙しくなったと言えば忙しくなったのかな?けど、子供たちを世話する時間が減ったから必ずしもそうじゃない気もするけどな・・・」

 先ほどの会話の内容を真正面から捉えて考えるテファ。

「まあ、とにかくやるだけやってみたらどうだい?別にいて悪いっていうことはないだろ?」

 彼女に積極的になってもらうよう、そう言うマチルダ。

「それはそうだけど・・・けど、魔法なんかほとんど使ったことのない私にちゃんと出来るかしら?」

 今度は別の心配にし始めるテファ。このままでは埒が開きそうにない。マチルダはなんとか彼女をその気にさせようとする。

「だったら、とりあえずやってみよう。なんなら私がお手本示すから。」

 この時点で、マチルダには使い魔は存在していなかった。彼女はまず自分がお手本を見せることで、彼女を安心させる方法を選んだ。

「そこまで言うなら、やってみようかな・・・」

 どこか歯切れの悪い感じがしたが、とりあえずマチルダは彼女が使い魔召喚するように持っていくことが出来た。



 その日の昼、平賀家屋敷近くの森の中で、2人は使い魔召喚の儀式に挑む事となった。

「我が名はマチルダ・オブ・サウスゴータ・・・」

 数ヶ月前、ルイズらがしていたのと同じように杖を構えて、呪文を唱えるマチルダ。まもなく目の前に鏡のような物が現れ、その中から何やら棘がたくさんついた生物が現れた。

「マチルダ姉さん、それは?」

 怖々と聞くテファ。

「これは・・・ハリモグラだね。普通のモグラと違って穴を掘るスピードが速いし、地上での攻撃能力も高いわ、中々良いのが来てくれたわね。」

 彼女は早速そのハリモグラと『コントラクト・サーヴァント』を行い、主人と使い魔としての契約を交わした。

「ほら、結構簡単なもんだよ。テファもやってごらん。」

「ええ。」

 使い魔召喚を無事終えたマチルダをみて、テファも安心したようだ。彼女は一歩前に出ると、まるで鉛筆のような小さな杖を取り出して、さっそく儀式を開始した。

「我が名はティファニア・・・・」

 マチルダと全く同じように呪文を唱えるテファ。間もなく、彼女の目の前にも鏡のような物が現れた。それはマチルダの時の物より少しばかり大きく見えた。

(一体この娘は何を召喚するのかしら、水系統みたいだからカエルか何かしら?けどそれにしちゃゲートが大きいような・・・)

 マチルダはテファの『忘却』を水系統の魔法と勘違いしていた。

 そしてゲートが開いて凡そ10秒後、それは現れた。

「痛!!」

 ガシャンという音と共に地面に尻餅をついたその生き物の姿をみて、マチルダも召喚した本人であるティファニアも目が点になってしまった。

「「に、人間!?」」

 ゲートから現れたのは、どうみても20歳前後の若い黒髪の男であった。しかも、義勇軍で使っているような野戦服(これは迷彩服のこと)に身を包み、銃らしきものを抱え、さらになにやら多くの荷物を肩からぶら提げていた。

 これが4番目の『虚無』の担い手であるティファニアと、その使い魔となる葛西豊との出会いだった。
 御意見・御感想お待ちしています。
 なお、ティファ二アが召喚したキャラは、以前読者より提案されたキャラクターを使っています。なお、彼の使い魔としての能力がまだ決まっていないので、意見があったらお寄せください。


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