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追跡!! 下
 重々しい重機関銃の発射音が森の中に鳴り響いた。

 発射された12,7mmの銃弾は、残念ながら命中しなかった。揺れる車の上で、しかも木が林立する森の中で撃ったのが原因だった。ただし、赤い曳光弾は相手にそれなりに恐怖心を与えたのか、すこしばかり動揺して馬の足並みが乱れた。

 そして。

 ドスン!

 2人の内、後ろを走っていた1人がバランスを崩して落馬した。

「よっしゃ!!」

 ニコラが歓声を上げる。だが、落馬した人間は無傷なのか直ぐに立ち上がって、今度は走って逃げ始めた。しかも、もう1人とは別の方向に。

「2手に分かれたか・・・」

 隊を2分しようかと一瞬考えたニコラだが、後ろから声を掛けられた。

「あいつは我々にお任せを!あなた方はもう1人を頼みます!!」

 後ろから追いかけてきたアニエスが叫んだ。

「了解!全員、落馬した野朗は銃士隊が引き受けてくれるそうだ。俺達はこのままもう1人を追うぞ!!」

 というわけで、ニコラら義勇軍歩兵部隊は馬で逃げるもう1人を追う事にした。しかし、やっぱり森の中では車やサイドカーより馬のほうが小回りが利く。離されはしないが、距離も中々縮まらない。もう1回威嚇射撃するのも考えたが、同じ手が2度利くか不安である。

「参ったな・・・」

 そこで二コラは再び無線機のスイッチを入れた。

「こちらニコラだ。シエスタ兵長、俺たちが見えるか?」

 二コラは上空で旋回しているはずのシエスタを呼び出した。木々のせいで二コラからは見えないが、プロペラとエンジンの音が聞こえているから近くにいるのは間違いない。

「こちらシエスタです。はい、見えています。」

「森を出るまであとどれくらい距離があるかわかるか?」

「そうですね・・・300m、あ、いえ、300メイルですね。」

 義勇軍では通常地球で使う単位を使っている。そのためシエスタはわざわざハルケギニアの単位に言い直した。

「別に同じ義勇軍だから言い直す必要はないのに・・・まあ良い、じゃあシエスタ兵長、向こうが森から出たところで威嚇射撃をしてくれ。別に当てなくて良い、向こうの足止めになればそれで良い。」

 二コラはシエスタに、空中から支援攻撃をするよう要請した。

「わかりました。」

 シエスタの返事を確認すると、二コラは無線機を置いた。

 ニコラたち歩兵部隊は、とにかく相手を追って森から追い立てようとする。獲物のウサギを追う犬のように。

 その途中でサイドカーが木にぶつかって横転し、他の1台が救援のために落伍した。そのため、最終的に追跡しているのは二コラのジープと、サイドカー1台だけになった。

 そして木が途切れ、森から出るところに犯人が差し掛かるのが見えた。その直後。

 グワーン!!タタタタ・・・

 飛行機のエンジン音と、軽快な機関銃の発射音が聞こえた。間違いなく、シエスタの飛行機による機銃掃射だ。ちなみに銃の音が軽快なものだったのは、彼女の乗っているPo-2の搭載機銃が7,7mmだからだ。

「やったな!!」

 そしてすぐに無線で連絡が入ってきた。

「やりました!!相手は驚いて馬から落ちました。」

「ようし!!今度こそとっ捕まえるぞ!!」

 部下を叱咤し、二コラたちも森の外へと出た。そして視界の中に、馬から落馬し、先ほどの男と同じように走って逃げようとする男の姿が入ってきた。二コラはある程度距離が縮んだ所でジープを止めさせた。

「止まれ!!もう逃げられないぞ!!」

 二コラが12,7mm機銃の銃身を向けて言い放った。だがそれに対して、男は懐から杖を出した。

「メイジか!?後退!」

 そして数秒後に飛んできたのは、鋭い空気の矢だった。幸い相手がジープの動きを読みきれなかったのか、当たらずに済んだ。

「野朗、舐めやがって!!メイジだからっていい気になるなよ!!」

 平民傭兵のニコラは拳を震わせて呟いた。

「全員ありったけの音響閃光弾を投げつけろ!!それと例の新兵器もだ!!」

「「了解!!」」

 彼と部下達は一斉に音響閃光弾と、新兵器である催眠弾を投げつけた。それと同時にニコラはサングラスを掛けて指示する。

「全員目を閉じて耳を塞げ!!」

 全員分のサングラスがあれば良いのだが、生憎とそれだけの数はまだ揃えられていなかった。

 そして次の瞬間凄まじい閃光と音響、さらに白い煙が場を包んだ。白い煙は今回初使用の新兵器、催眠弾によるものだ。

 催眠弾は科学研究所の研究員の1人が、地球から持ち込まれた催涙ガスをヒントに開発したもので、対メイジ用の兵器の1つである。ちなみに化学薬品で調合された物と、アカデミーの協力で作られた魔法薬で調合された2種類が開発されている。実験では魔法薬のほうが強力だが、持続性の調整が出来ないというデメリットがあった。

 付け加えると、このガスは化学薬品、魔法薬かまわずガスマスクをしていれば効かない。そして魔法役バージョンの方は、煙を無色無臭にする研究も進められている。

 今回はその両方を混用して使った。もっとも、1個でも人間相手なら充分なはずだから、数個も投げるのは明らかに過剰である。

「どうだ!?」

 二コラが犯人のいたあたりを見るが、催眠弾の発した煙のせいで見えない。そして、煙が晴れると、男が倒れて眠りこけているのが見えた。すかさず、兵士達が捕縛する。

「よっしゃ!!」

 彼は笑顔になると、無線機を掴み取った。

「こちら第二分隊ニコラ、残る犯人の1人を捕縛した。繰り返す、残る犯人の1人を捕縛した!!」

 任務完遂の叫びが、無線機を通して義勇軍中に知れ渡った。



 銃士隊が追った犯人の方も捕まり、ガリア大使襲撃事件の犯人は全員捕まった。義勇軍歩兵隊司令の梶田少佐は、アニエス銃士隊隊長とともに王室から派遣された衛士に犯人を引き渡した。

「本日はお互い無事損害もなく任務成功でしたね、アニエス隊長。さすが精鋭の銃士隊だけある。本当に感心しました。」

「いやいや、あなたがたこそ武器もさることながらよく訓練されていると思いましたよ。」

 お互いの部隊を褒め称える2人。

「しかし、義勇軍の使っている装備はすごい。我々も是非とも欲しい。」

 アニエスには、義勇軍基地や今日の追跡劇で見た兵器の威力に感心し、やはり自分たちも使えたらと思った。しかし、それはかなわぬことだと考えていた。

 ところが、梶田から思いも寄らない言葉が発せられた。

「もしかしたら、さすがに重機関銃や無反動砲は無理でも、近々あなたがたにも小銃や手榴弾が供与されるかもしれませんよ。」

「え!?」

 いきなりの梶田の発言に目が点になるアニエス。

「アルビオンに造った工場がなんでも稼動を開始したそうですから。生産にいくらか余裕が出たとかで、全員が平民から構成されているあなた方にならもしかしたら・・・まあ確実な情報ではありませんけど。」

「そうですか・・・しかしやはり欲しいです。あの小銃や手榴弾があるだけでも、戦争が変わります。」

「ハハハ・・・そうかもしれませんね。それでは本日はご苦労様でした。」

「こちらこそ。」

 2人はお互いに敬礼した。そしてこの会話の内容が現実になることを、2人はまだ知らなかった。
 御意見・御感想お待ちしています。
 ようやく本日テストが終了しました。再びバンバン小説を・・・と行きたいところですが、来月は3日から7日まで広島へ行くので、また更新が滞るかもしれません。
 そして外伝のネタがまた尽きています・・・


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