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緊急出動!!連合歩兵隊 下
 出動準備を終えた義勇軍歩兵部隊は、トラックやジープ、サイドカーといった車両に乗り込み、次々と出発した。ちなみに、これらトラックやジープはこちらに持ってくる際、すべて自衛隊の車両に近い迷彩色に塗り変えられており、以前どのように使われていたのかは全くわからない。

 彼らは基地を出ると、複数のグループに分かれて行動する。これは王都トリスタニアへは向かわず、それぞれ街から少しはなれた街道を封鎖する事にしていたからだ。

 一方空からの監視も加わる。既に歩兵部隊同様、連絡を受けた航空部隊から複数の機体が飛び立ち、歩兵部隊を空から掩護することになっていた。

 

 出動から30分ほどで各街道を封鎖した義勇軍歩兵隊は、早速王都からやって来る馬車や人の臨検を始めた。その間にも、基地を通じて詳しい情報がもたらされた。

 今回襲撃を受けたのはガリア大使を乗せた馬車で、トリスタニア中心部を走っていた所でテロに遭ったらしい。しかも相手は風魔法を使ってきたらしいので、明らかにメイジだった。幸いと言えたのは、死者はなく、護衛の騎士が2名負傷しただけだった。

 しかしこれは少しばかり厄介な事だった。

 現在ガリアとトリステインの関係は必ずしも良好ではない。アルビオン解放戦争以後このかた、トリステインとアルビオンは政治的にも経済的にもその結びつきを強くしつつあった。それが表向き、ガリアやゲルマニアを刺激する形となっていた。

 さらに両国に駐屯する『東方義勇軍』の存在も、その疑念の火に油を注ぐ事となった。

 もっとも、実際の所ガリア王ジョゼフにそのような深い考えはなかったのであるが、とにかくガリアとトリステインの仲は悪くなる一方だった。そして今回のテロ事件である。

 もし犯人を捕まえなかったら、ガリアが国際信義に反する行為として、なんらかの強行手段を取って来ることだって考えられた。

 だからなんとしても犯人を逮捕して、ガリア側に引き渡す必要があった。

 そう言うわけで、出動した各近衛部隊はそれこそ血眼になって犯人を追ったのであるが、犯人は中々見つからなかった。

 そんな中で、義勇軍歩兵部隊は各部隊無線連絡を取り合いながら行動する。

「こちら第二分隊隊長ニコラ少尉。現在トリスタニア西方の街道を封鎖中。今の所不審者はなし。各部隊状況を教えてください、どうぞ。」

 するとすぐに返答がなされた。

「こちら第一分隊山下中尉、東方街道上を封鎖中。異常なし。」

「こちら第三分隊ローレンス少尉、北方街道上を封鎖中。同じく異常なし。」

「こちら第五分隊内田少尉、南方街道上を封鎖中。同じく異常なし。」

 無線から各部隊の状況が伝わってきた。

 それを聞き終わると、二コラは無線機の送信機を置いた。そして胸のポケットから紙タバコとマッチを取り出して吸い始めた。

 二コラは義勇軍の兵士が、地球出身か平民の貧困層者出が大半という中で、元傭兵出身という比較的珍しい経歴を持っている。5ヶ月前のアルビオン解放戦争では独立大隊付き軍曹として従軍し実戦参加、義勇軍以外では数少ない武勲勲章を授与されている。

 その後王室軍に見切りをつけて義勇軍に入隊した。そしてその実戦経験を買われて少尉に任官されて、分隊長となった。

 ちなみに義勇軍の兵士は、彼のような王室軍からの編入者や実戦経験者を除く全員がまず3等兵として登用される。そして3週間の基礎訓練で成績優秀者はそのまま1等兵か兵長となる。さらに1等兵曹までは1年から半年単位で自動昇進し、そこから先の尉官昇進は戦功などから判断されることになっていた。その他にも賞罰によってや成績優秀者には特別昇進がある。

 これは軍隊としては少しおかしな昇進人事であるが、もともとが士官や下士官専門の養成制度を持たないことと、部隊全体が少人数であるために、これで一応成り立っているのであった。

「隊長、本当に犯人は来るんでしょうかね?」

 1人の若い兵士が二コラにそんな質問をしてきた。

「そんなこと俺にわかるわけないだろ。来るかもしれないし来ないかもしれないとしか言いようがないよ。とりあえず相手はメイジらしいから、心構えだけはしておけ。わかったなオーウェン1等兵。」

「わかりました。」

 兵士はさっと敬礼すると、仲間たちのもとへと歩いていった。

 初陣のせいか、兵士達はどことなく緊張していた。二コラはそんな兵士たちに発破をかけつつ、自分自身このような任務は始めてであったから、若干の戸惑いがないわけではなかった。

 その後1時間ほど、彼らは時折王都の方向からやってくる車両や人間を臨検したが、いずれも白だった。

 その場を通る人々は、彼らの多くが義勇軍と知ると「お勤めご苦労様です。」と言って頭を下げていった。人々の義勇軍に対する人気は相変わらずであったが、こうしたことが兵士たちの士気をさりげなく上げているのだった。

 しかしそれ以外に動きはなく、兵士たちも退屈を感じてきたようで、手空きの兵士達は地面に車座になってトランプやチェスをして時間を潰し始めた。

 こうしたけだるい空気は、実戦配備中の軍隊としてはちょっとまずいが、状況に変化がない以上、仕方がなかった。

 そして動きが現れたのは、街道の封鎖を始めてから2時間ほど経った時だった。

「こちら歩兵部隊隊長梶田!!全部隊に告げる!!銃士隊が目標らしき人間を発見、これを追跡中!!」

 二コラは直ぐに無線機の送信機を取った。

「目標の現在位置報せ!!」

「目標はトリスタニア中心部より場所を西方方向に逃走中!!相手は二人組のメイジだ!!現在銃士隊が追跡しているが、魔法攻撃を受けて負傷者が出ている模様!!第二分隊は必ずこれを止めろ!!」

「了解!!」

 二コラは荒らしく送信機を置くと、すぐに兵士たちに命令を下した。

「お前ら!!直ぐに車とトラックを街道に横向きにして並べろ!!完全封鎖するんだ!!それとサイドカーはいつでも追える様にしておけ!!」

 彼の言葉に、それまでのんびりしていた兵士達が飛び上がった。

「了解!!」

 兵士達は車やトラックに飛び乗るとエンジンを起動し、街道に並べる。街道と言っても馬車が2台ならべるほどの幅しかない道だ。ジープとトラックが1台ずつあれば事足りる。

 それを見届けると、二コラは周波数を操作して再び無線機を取った。

「上空の航空部隊!一番近い機は誰だ!?航空支援を要請する!!」

 するとすぐに返事が帰ってきた。

「こちら航空部隊シエスタ特務兵長機です。現在トリスタニアの西の上空を飛行中です。」

「こちら歩兵部隊の二コラ少尉だ!西に向かう街道の5km地点にいる、直ぐに来てくれ!!」

「わかりました。直ぐに行きますね!!」

 どこか調子が狂う可愛らしい返事をされたので二コラも面食らったが、とりあえず航空支援を取り付けたので、気にしない事にした。

「さあ!着やがれ!!」

 二コラは街道の東、トリスタニアの方にじっと目を凝らした。
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