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追記。

サブタイトルの件については、後書きを御覧になって下さいm(_ _)m


2008.5.6 作者@都神紗茅
作:都神紗茅



22.I make a head wind a fair wind


 視界と聴覚を遮るものは一切なし。数時間ぶりに見たダイニングテーブルとにらめっこしながら、新一は何もせずにいた。そんな彼に構わず、外では太陽が堂々と輝いていた。


「あの人はわざわざ自分から出てきてくれた。さ、探す手間が相当省けて、ラッキー、だったよなぁ」


 彼は、底知れぬ負の感情に支配されていた。『あの人』の自分は全てを知り尽くしているのだと告白した言葉が、幾度もリピートされることによって。


 こっちの生活には慣れたかい


「あの人――全部知ってるなら、どうして今日まで何もなかったんだ?」


 老人の目的は宣戦布告か最終予告か、それとも――。この時点での新一が数分悩んだところで、答への道標みちしるべは見つかる気配さえ皆無だった。


「一杯飲むか」


 考えが上手くまとまらなかった彼の視界に入ってきたのは、コーヒーメーカーだったのだ。透明なプラスチックの本体に、黒い蓋がついている。日本でもよく見かけるようなデザインだ。
 何気なく浮かんできた
「日本」が、新一にある一人の顔を思い出させた。


「蘭のやつ、元気かな」


 思い出させたと言っても、忘れていた訳ではない。心の奥に無理やりに押し込んできたのだ。
 彼女を身勝手で置いてきたのは、新一自身十分承知である。勿論それは、彼女を巻き込みたくない気持ちに基づいた行動である。けれども、彼の心の真ん中には常に彼女の姿が浮かび続けていた。
 この気持ちを愛しさと名づけたら、自分は愚か者と(けな)されるのだろうか。


「バカね」


 余りにもタイムリーに聞こえたラムの声に、新一は目を見開いた。


日本(あっち)に恋人でも残してきたのかしら?」


 反論しようとしたのも束の間、新一は、タイミングをラムにあっさりと奪われた。
 悔しく思う彼を全く気にせず、彼女は彼と向かい合うように椅子に腰かけた。
憐れみとも怒りとも取れない中性的な表情を崩さぬままで。
 自分はそんなに分かりやすいのだろうか。そんな風に悩みながら、新一は静かに答えた。


「恋人って呼んでいいかどうかはまだ分からねぇけどな」

「あなたは彼女に何を求めたの?」

「いつか絶対に戻ってくるから、待ってて欲しいって言った」


 コーヒーの(かお)りが漂う室内に、新一の渇いた声が響いた。
 そんな新一を見て、ラムは思わずため息を漏らした。


「そう軽々しく言ったのね。生きて帰れる確証もないのに」

「軽々しくなんかねぇよ」


 自分でも気づかないうちに、新一は反論していた。しかしそこから繋げる言葉が見つからなくて、コーヒーの湯気を見つめるだけだった。
 二度も待たせておいて、調子のいいことをと言われたらそれまでだ。それでも、彼女を再度独りにしたことに軽々しい決意はなかった。
 新一の沈黙を理解したのか、ラムは表情を緩めて静かに話し出した。


「ごめんなさい、言い過ぎたわ。あなたの決意が堅いものって分かった。だからもう追求しないわ。誰でも知られたくない過去を持っているものね」

「知られたくない訳じゃねぇけど……話す時が来たら話す」




 早く日本に帰る為に、まずは、DFCCの会長について調べることだ。新一はコーヒーを一口だけ飲んだあと、ラムをまっすぐ見て言った。


「この辺りに、インターネットが使える図書館ってあるか?」

「あるけど、今日まで休館日よ。明日からは開いてるらしいわ」

「おぅ、分かった」


 新一はそう言うと、残っていたコーヒーを飲み干して、カップを流し台へ持っていった。蛇口を(ひね)って出した水の冷たさが、彼の両手とカップを包み込んだ。


「明日から、だな」


 さりげない彼の呟きは、ラムの耳には届かなかった。




追記。

★サブタイトルの直訳:「オレは向かい風を追い風にする」

新一の心情を表しました。


★大幅変更の件ですが

今年度に入ってから勉強と部活に更に追われるようになりました。その為、最近は執筆作業にあまり時間を回せていない状況です。
(今回の更新も、美容室での待ち時間を利用しました)
後書きにもありますが、大幅変更をいつ出来るかどうかは本当に分かりません。それでも変更は必ずします。とりあえず、現段階ではそれだけを記しておきます。
では。

2008.5.6 作者@都神紗茅













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