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暗い水槽

作者: 谷下 希

 寂れた喫茶店で、私達はただ黙々と珈琲を飲んでいた。

 その日は雨が降っていて、光る路面の上を車が泳ぐように走っていた。

 深海のように、深い夜だ。窓からその闇を見つめていると、水槽の中の魚になった気がした。醜い、醜い魚。

 あなたは思い詰めた顔つきで、私に切り出した。

 涙は出てこなかった。

 銀のスプーンが鈍く光って、私の顔を映す。魚の丸い目が、こちらを呆然と見つめていた。


 あの日以来、暗い水槽から出られないでいる。 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] とても美しい描写だと思いました。雨に濡れた窓を通して見る車が泳ぐように走り、自分が水槽の中の魚になった気がしたなんて私には絶対に書けない描写です。 とても閉鎖的な空気と不穏な雰囲気を感じます…
[一言]  言葉選びが実に谷下さんらしいなぁと、うっとり。  特に、車の比喩は情景がすぐ浮かび、心に刺さりました。  短い間ですが、200コンを目一杯楽しみましょうね!
[一言] こんにちは。ソウイチです。 谷下さんも200コンに参加されたのですね。ちょっとテンション上がりました。(もっと早く気づけという) 雨水が伝う喫茶店の窓に、喪失感を抱いた女性の顔が映し出され…
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