2.突然の配達物
期待を大いに裏切られつつも、気を取り直してアンケートを淡々とこなし始めた透は、数分もしないうちに最後の質問まで難なくすすんだ。 アンケートの内容は、紙に書いてある時点でもう分かり切っているので、ササッと答えることができる。
だが、透は最後の質問に悩んでいた。
――こんな質問、紙には無かったんだけどな………。
その質問の内容は、「質問.貴方は、最後までやり抜くことができますか?」という内容だった。なんとも答えにくい質問…と透は感じた。
真剣に答えてYesならば、でもそれは浅はかな考え、もしくは口先だけということを思い知らされることに直面しそうだからだ。 不審な質問で、このあとに何か不祥事なことが起きると言う暗示のような気もする。
色々と考えた結果、透の答えは「Yes」。
結局は、深くあれこれ考えず、直感で答えることにした。透は、TVゲームが出来ない時間を延ばしてまでアンケートにこだわっていることに、いい加減うんざりしていた。 答えた直後に、もしものことを考えると不安になったが、「まぁ、いいか」と思いなおしてマウスを離す。
――こういうことは結局、取り越し苦労になることが多いんだよね。
散々迷った事柄に限って、実はどうでもいいことで悩んでいたということが透の経験上、多かった。その反対に、「これは大丈夫だ」と言って高をくくった挙句、自滅することも多々あった。 その結果、「悩めば大体のことは大丈夫」なる誤った方式が透の頭の中に出来上がっていた。
透は自分の可笑しな考えに、微かに鼻で笑っていると、突然画面が切り替わった。
一瞬、嫌な予感がした透は目を見張って画面に食いついたが、表示されたのは「ご協力、ありがとうございます」という一行のお礼だった。
「どうした?」
気紛れに振り向いて聞いてきた由久は例の如く、「さして関心が有りません。」と主張するかのように半目でこちらを見てくるが、何となく悔しい思いを感じていた透は無視した。
なにか起こるのではないか?と、危機感がいつしか期待に変わった透は、無言で画面を見守り続ける。 だが、しばらく待っていたが何も起きない。収穫の無かった透は首を振ると、由久は「やっぱりか」などと言って肩をすくませた。
――結局、無駄な時間を過ごしてのだろうか
期待していたがために落胆すると透は、ため息とともに諦めて立ち上がろうとした。その時、不意にチャイムが鳴る。
「ん?誰だろう。こんな時間に…………。」
時計の針は、夜の一時をさしている。かれこれ、馬鹿のように何時間も長ったらしいアンケートに振り回されていたようだ。
――そういえば、途中で「いい加減、アンケートなんてやめろよ!」って怒っていたっけ。
テレビに背を向けて座っていた透が後ろに目を向けると、二人が透抜きで遊んでいて長時間経っていることが分かる。倒そうと言っていたボスも倒したようで、見たことのない場所を駆け回っているからだ。
――ああ、倒したかったなぁ…ボス。一人じゃ倒せそうにないし、一人でやっても楽しくないだろうからとっておいたのに…。
「…はい、今でます」
遠い眼をして画面をみていたが、二度目のチャイムが鳴りかけると、透が少し不機嫌そうな声を上げた。
ノロノロと立ち上がっては玄関に向かう。 消した明かりを点け、扉を開けると宅急便の配達員がダンボール箱を持っていた。
「あ、夜分遅くに申し訳ありません。速達です。お荷物、お届けに参りました」
灰色の作業服を着た青年は、商売用らしい、不自然に少し高い声で言葉を区切りながら矢継ぎ早に言った。
「印鑑をお願いします。」
透より幾分も歳が上だと思われる青年が無理な笑顔を作って言った。きっと眠いのだろう。無理やりこじ開けたようなほそ目をしていて、目線が時々上向きにヒクヒクッと痙攣している。本当に眠そうだ。
透は、気持ちいい睡眠の最中に叩き起こされて理不尽にも配達を言い渡された哀れな青年配達員などと勝手に思い浮かべ、独りでに同情の念を持ち始めていた。
「こんな時間に………大変ですね。」
その哀れな表情と表現しても良いような顔色は、非常識な時間に来た宅配便に少しだけ腹を立てていた様子の透が、思わずありふれた気遣いの言葉をかけてしまうほどだった。
「いえ………お客様からあらかじめお荷物を承っていれば、要請は電話、電子メールで一本。いつでも配達するのが我、宅配会社の特徴ですから。」
毎回のように言っているのか、説明に宣伝を加えたような言い方をする青年の目の下には薄いどころじゃない、くっきりとした隈が出来ている。
「そうですか………。」
その様子に、続けざまに「あの、すいませんが、送った人の名前わかりませんか?」と聞こうと思ったがやめた。頭に一つの考えがよぎる。 これは何かの軽い嫌がらせだ。この宅配会社を使えば、少なくとも熟睡を妨げさせて不快な思いをさせることくらいできる。
透が嫌疑の念が顔に表れないように眉を上げておどけた表情で箱を見ていると、名前もない空白の差出人の欄に目がとまり、思わず眉間に皺が寄る。やはり悪戯だったらしい。それを勘付いたのか、配達員は困った様に笑うと
「すみません………お客様のご希望で名前を出せないんです。これは景品だということですから………。大丈夫です。中身はわが社が責任を持って調べて、危険物ではないことが保障されています。」
「景品?」
先ほどのと同じく言い慣れたセリフのようにスラスラという配達員の言葉に、つい聞き返してしまった。景品の貰えるようなハガキなどは一切していない。
「そうです。なんでもアンケートの景品だとか。」
「はぁ、そうなんですか…。」
――怪しい。透はそう思いつつもどうすればいいかわからなかった。
受け取りを拒否して、もしなんでもなかったら、迷惑の上に酷く馬鹿らしい。何しろ、「わが社が責任を持って調べて、危険物ではない。」と宣言しているのではないか。
透は配達員に「少々お待ち下さい。」というと、早足で部屋に戻り、自分の机の引出しを開けて印鑑を探す。
「透。一体、誰が来たんだ?」
物音に気付いた由久が、ゲームを止めて振り返ると聞いてきたので、透は「宅配便だ」と、素気なく答えた。
全く。こっちは印鑑を探して必至だというのに…。
「こんな真夜中に異常じゃねぇか?」
「………なぁ松之介?」
松之介も加勢してきたので、イライラしているのをワザと分かるように声色を変えて松之介に振り返った。
「お前、今何時だと思ってるんだ?お前んち、確か門限のせいで、遅くても八時に帰らなきゃいけないんじゃなかったっけ?」
撫でつける様な声でゆっくりと皮肉を込めながら言うと、松之介は焦る様子もなく、
「合宿に出ることになったって言っておいた。」
「――はぁ?」
何とも思ってない口調で言い返してきた松之介に、豆鉄砲を食らった鳩のように目をぱちくりさせる透は、
「お前、…そんな嘘が通るのかよ!?」
と声を裏返して聞き返すと
「父さんが加勢してくれたんだよ。厳しいのは母さんだからな。」
松之介は少々うんざりした表情で答えた。
「あ…そ。」
色々と言い返してやろうかと思ったが、今日は彼の意思だけで、初めての泊まりなのかもしれないと考えると、言い返す気力がなくなった。
しばらくして、ゴチャゴチャに乱れた引出しからやっと目的のものを取り出すと、急いで玄関に走って行く。
「あ、すいません。お待たせしました。」
玄関の外に立っていた配達員の青年は真剣そうな面持ちで、道路の方を見つめていたが、透が来た途端にころっと表情を変えた。もしかしたら配達用の車に相方がいるのかもしれない。その相方が寝ているのを見て、怒っているのだと思った。
何せ、目を細めてじっと闇の向こうをにらんでいたからだ。
「いえ、ここに判を………はい、ありがとうございました。」
「ご苦労様です。」
ニコニコ笑顔で印鑑が押されるのを眺めて、受領証を受け取ると、途端に急いでいるかのように素気ない態度で宅急便の配達員が立ち去っていった。 不審に思った透だが、「きっと、本当に眠いんだろうなぁ…」と解釈した。
透は彼が闇に消えるのを見送ると玄関に鍵を閉め、ダンボールを部屋に運ぶ。
――アンケート………。
透が契約したアンケートのものではないことは確かだった。とすれば、先ほどのアンケート。おそらくあれに協力することで、これが送られてくる仕組みなのではないだろうか。
何が入っているのかと思うという好奇心が、数々の疑問の影を薄めていく。
部屋に戻ると、二人はやはり先ほどのTVゲームの続きを、こちらのことを気にすることなくやっていた。 ムッとした透はわざと手前に座っていた松之介にダンボールの角をぶつける様に横を通り抜けた。
「いっ………なにす――」
振り返り、文句を言いかけたが箱を目にして、「なんだ?それ」と興味有りげに聞く。
「さぁて、ナンデショー?」
喜んでいる様子の透はそのまま部屋に入り、由久の方にも蹴りを入れ込んだ後、テーブルの上のパソコンの横に置いた。
「あ?今度はなんだ。」
由久は箱を見ると、まるで面倒な物を持って来られたかのように目を細めた。
透は答えることなく引き出しに印鑑を戻し、代わってカッターを取り出す。刃を出して継ぎ目に突き立てると、中身を傷つけたくないので、軽くスーっと刃を滑らせて切れ目を入れる。 切れ目に指を押し込むとそこから力任せに切り裂いた。クッション用のエアマットを退かすと、黒色の本体が見えた。
透は両手を箱の中に入れ込み、発泡スチロールに挟まれたその機械を取り出してテーブルの上に静かに置いた。
一見すると、黒色に長方形でパソコンの本体のような形の機械。側面には機械の名称だろうか、『V―ユニット』刻まれている。
「あ?この前の最新型のゲーム機か?………いや、ちがうな………V―ユニット?」
出てきた本体に目を凝らし、ぶつぶつと由久が独り言を言っている。 透は再び、箱を更に荒らす様に腕を突っ込むと箱の底から説明書が出てきた。3ページしかない案内用紙のような説明書だ。
手に取ると説明書に書かれている「はじめに」の項目に書かれている説明を読み上げる。
「えーと………本精密機械『V―ユニット』〈ビジョン―ユニット〉は、家庭用ゲーム機の試作品ですが、他の会社のソフトに対応できません」
透はそこまで読むと顔を上げた。松之介がクッションやら邪魔なものを箱の外に追い出しながらダンボール箱の中身を更に探しているが、どうやらソフトらしき物は入ってなかったらしい。
「他のゲーム会社のソフトに対応してないって………ソフトなんて入ってないぜ?」
不思議そうな表情をしながら言うと、周りに散らかしたごみ類を箱に戻す。
「え?でも、まだ続きが…」
困惑気味の透は、松之介の質問を曖昧に受け流して再び説明書に目を落とす。
「……『なお、このゲーム機はテスト用の物で、日本に1,500台しか在りません。くれぐれも扱いにはご注意下さい。』……日本に1,500台しかないのか…!」
先ほどの困惑気味の様子はその一行で消えさってしまった。透が説明書から目を離し、興奮気味に言いながら二人を見た。透は「試作品」という、神秘的な謎を秘めた機械に注ぐ好奇心により、興奮が抑えきれていない。
「ソフトがないからできることも限られてるだろうけどな」
透の興奮に水を差すように、由久が冷たく言った。
「それに、試作品やテスト用ってことはこれもアンケートの一環だろう」
由久がパソコンの画面を再び望みこみながら、苦々しげに呟く。相変わらず「ご協力、ありがとうございます」の文字が、白地の背景に、黒く浮かんでいる。
「完全に終了したのなら『ありがとうございました』という言葉になるはず。そこを「ます」ということは、まだ続くという意味にも取れるだろ。」
「ああ、そういう風にも取れるな。で?その問題のアンケートがなんでヨルのところに?」
由久の言葉に頷きながら松之介が聞いた。アンケートについて納得がいかないようだ。何故こいつが?ということらしい。
「んなこと、俺がわかるか!それならヨル、お前、なにか心当たりないか?何かの記録に残りそうな物。」
「え?」
不意に、由久に聞いてきかれて、透は咄嗟にとあるものを思い出す。小遣い稼ぎにいつもやっていたアンケートだ。
「いつも来るアンケートの方からかじゃないかな。ほら、日本中のデータを集計するのに協力するやつ。」
「ああ、ありえなくもなさそうだが………。そもそも、そういう所が個人企業と協力してこんなことをするのか?」
由久が疑い深そうに目を細めながら、透の後ろに積まれている黄緑色の封筒を見た。その視線を追って振り返った後、透は「さぁ」と言って首をかしげた。
「でも、それくらしかないんだよね。心当たり。」
前に向き直りながら言うと、透の手元の説明書に由久の腕が伸びていた。反射的に説明書を引っ込めると、手のひらを差し出して制止させた。
「………まぁいい。あとで考えるとして、早く先を読んでくれ。これで何ができるのか知りたいんだ。」
説明書をとりそこなった由久がしばらくにらんできていたが、ため息をつくと『V―ユニット』を指差しながら言った。
「だよね。」
透が適当に流しながら頷くと説明書に目を落とした。
「んと?『このゲームには特殊な性能があり、本ゲーム機にソフトを入れずに付属しているヘッドマウントディスプレイを装着して――」
読み上げられて行く説明書。内容が進むにつれて透の声には熱が籠り、時折、喜びに身を震わしてうめいた。
「『――この時、プレイしたい特定の姿が決まっている人は、その姿に関する特徴的なデータを良く覚え、頭の中でイメージできるような状態にしてください。』…どうする?」
短くも、所狭しと文字の多い説明を読み終えた透の顔には、今まで見たこともないような喜びが顔全体に広がっていた。
「ありえない!仮想空間に、実際に冒険!?もう、最高だ!!」
意気込んで言う透の眼には思わず感極まって、うっすらと涙が出ている。
「あ、いや…別にいいんじゃないか?」
「では、早速準備だ!」
透の熱意に圧され気味の松之介は、言葉を濁しながらもコクコクと頷いた。彼の返事を聞くか否か、透ははじかれたように立ち上がりながら叫んだ。
「コントローラーは、無いみたいだね。………………………これか。付属のヘルメットは………ここに端子を入れ込んで………………………インターネット用の端子はこれで………」
透がぶつぶつと独り言を言いながら準備している間、二人はテーブルの真中に置いてある煎餅を食べていた。
「出来たか?」
由久が、さして興味が無いような調子で聞いた。この新型のゲーム機よりも先ほどまでやっていたゲームがやりたいらしい。 だが、松之介がデータを保存すると電源を切ってしまったのだ。
再び電源をつけてやり始めればいい話なのだが、何しろ二人がこの状態だ。一人でやらなければならないが、戦場は、集団で戦っても苦戦してしまうところまできてしまっている。結局、死にに行くようなものだ。
「ん〜?まだだな、後もうちょっと。」
説明書から顔を上げて答えると再び顔を下げて説明書を読み始めた。しばらくの間、松之介が待ち切れずに「おせ〜、まだかよ」と言う声と、由久の煎餅の食べる音だけが静かな部屋に響いた。
「――おし!だいたい憶えた!」
静寂の漂っていた中で透が突然、立ち上がる。眠気が襲って始めて、寝ぼけ眼の二人は驚いた様子で見上げた。
「由久、松之介。手順を言うから良く聞いてくれよ?まず、人数分ヘルメットを繋げて。それに、この六角柱のクリスタルの様なもの。」
透が二人の目線高さに淡い青色を帯びた六角柱型の透明な物体を差し出した。片方に金属端子のようなものが付いている。
「これはゲーム進行時中の記録保存のために使う、これ専用のメモリーだってさ。四つあって、三人。一人一個はあるから、自分のヘルメットの側面に入れるところに金属部から差し込んで。んで、これをかぶって後は俺が設定するよ。
意識をとばした後、ゲームの世界に侵入する前に、さっき俺が読んだ説明書通り、自分の具像化したイメージによって姿が形成されるらしいから。詳しいことは、たぶんまた説明が出ると思うから――あ。」
寝ぼけかけていた二人の頭では少々苦しいほどの速さで口早に説明した後、最後に何かを思い出したのか動きを止めた。
「そうそう、なんかデータの変換だかの都合で姿が思い通りの姿にならず、強制的に他の姿に変えられちゃうことがあるらしいから。」
透は先程までの早口とは違い、口元に笑みを忍ばせながらゆっくりとした口調で言い終えると、二人の反応を待たずにヘルメットのようなものを取り出した。
「じゃ、始めるよ。」
頭にすっぽりとかぶると、二人に笑いかけながら言った。装着すると右手でコードの途中で枝分かれしたパッドを取り寄せ、首筋にピタッと貼り付ける。ヒヤリとしたパッドに一瞬だけ身震いが走った。
横の方でカチャカチャと音がする。多分二人も被っているのだろう。 しばらくたつと目の前が全面青になり、項目が出る。透は左にある、耳あてについたボタンを使ってカーソルを移動し、下の[ソフトを入れず、中で遊ぶ]の項目を選んだ。
由久が「何も出ないぞ」けだるそうに聞いてきたが、透は「設定中」とだけ答えて作業を続ける。
[プレイヤーの数は?]と出てきたので、[1]を[3]にし、スタートボタンを押した。すると、画面中央に[プレイヤー1、あなたは 夜茂木沢 透様 本人ですか?] と、無機質な文字がすっと現れた。
「え、名指し?」
説明書にはなかった展開に、思わず口から出てしまった。後ろを振り返ってみる。ディスプレイの青の奥に二人と自分の部屋の姿がうっすらと見えた。
「そっちには名前出てる?」
透が聞くと松之介、そして由久の順に首を振り、「おれはプレイヤー2。」「こっちは3だな。」と答えてきた。
「あ、そうなんだ。…いや、なんでもない。」
透は首を戻し、目の前のV―ユニットの方に顔を向けている状態になる。
――アンケートが送られてきたのは俺だから、なのかな。そんな風に考えながら右のボタンを操作すると「Yes」にした。
まもなくして、青一色だった画面に異変が起きた。目の前が真っ白になっていく。見たこともない、文字と謎の数式が現れては、渦を巻いて画面の奥に落ちていく…
錯覚だろうが、体が吸い込まれていきそうだ。『すごいなぁ』と、言おうとしたが口が動かない。意識が飛び始めたらしい。
その時、後ろからドサっと倒れこむ音が頭の中に鈍く響いた。
――あ、……急に…眠気?
意識が脳の端っこにしがみついているような状態で、玄関が開いた音が聞こえた。聞きなれたあの音は普通に開けた音のハズだが、微かで遠くに聞こえる。
意識が次第に空白へと変わりはてていく中で体が傾きつつあるのを感じた。必死の思いでゴムに覆われたような鈍い感覚の体に力を入れ、ドアに向くように体を捩じらせながら床に倒れた。
何を見ているのか、だんだんと認識できなくなり始めたとき、廊下から部屋に入ってくる何者かが現れた。
「……うっ……っ〜………」
誰?そう言ったつもりが、半開きになった口の中で舌がうごめき、唸り声がかすかに出る程度だ。
視界は、真っ白に輝く光でおおわれ、最後は体の感覚が完全に消え去るのを感じた。
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