戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ(9/80)PDFで表示縦書き表示RDF


戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ
作:こっこ



Episode:09


「着替えているところですけどね」
「……そういうことは、入る前に言ってくれないか」

 よほど驚いたのだろう。しがみついてきた少女をなだめながら、苦情を申し立てる。
 もっとも言うだけムダという気もした。
 気配を読み取るのが上手いタシュアだ。私と一緒にルーフェイアがいることなど最初から分かっていて、わざとやったに違いない。

「別段、驚くようなことではないと思いますがね?」
「だがルーフェイアは、まだ子供なのだから……」
「では、シルファは大人というわけですか」

 答えに詰まる。
 見ればタシュアは意地の悪い笑みを浮かべていた。
 下手に何か言おう物ならまた突っ込まれるだろうと、そのまま口をつぐむ。

――それにしても。

 一切の無駄のない、隅々まで鍛えられた身体。
 いつ見ても思う。美しく磨ぎ上げられた剣のようだと。
 激戦地にいた名残なのだろう、その刀身とも言うべき彼の身体には、あちこちに鈍い傷痕が刻まれていた。
 だが、それらが刃の輝きを損なうことはない。むしろ日を重ねるにつれ、鋭さを増している。

「何をそんなに見ているのですか?」
「え? あ、いや……」

 また答えに詰まる。
 そして気が付いた。
 タシュアが手にしているのは私の実家――武器商としてはかなりの老舗――で開発した、防刃繊維で織られた戦闘用の服だ。

「タシュア……何か、あるのか?」
 彼がこれを着たのは、今までに一度しかない。
「じきに分かります」
 そう言って彼は戦闘服を無造作に着ると、今度は漆黒の両手剣を手にした。

 身長ほどもあろう剣を一息で抜いて、その状態を確認する。
 この大剣はタシュアがメインとしてる武器だ。ただそれを実際に使用することは少なく、私も片手で数えるほどしか見たことがない。
 それをあえて手にしているというのは……。

「やっぱり……先輩もなんですね?」

 タシュアが服を着たのでやっと落ちついたのだろう、顔を上げたルーフェイアが、厳しい雰囲気で言った。
 驚いてこの少女を改めて見る。
 今まで気付かなかったものが目に入って、背筋が寒くなった。

「ルーフェイア、その中に着ているのは、まさか……」
「はい」

 この子も制服の下は戦闘用の装備だ。それに手にしているのも、滅多なことでは出さない銘入りの方の太刀だった。
 タシュアとルーフェイア。
 時と場所こそ違うが、戦場の最前線で育った二人。
 この二人が、同時に同じものを感じ取っている。

「一体、何があるというんだ……?」
「――先輩、いろいろ出せるだけ出した方がいいですよね?」
 私の質問には答えず、どこか諦めたような調子でルーフェイアがタシュアに尋ねた。
「あって困るものではないでしょうね。もっとも戦闘の邪魔になるようでは、本末転倒ですが」

 二人のやりとりは、明らかに激戦を想定したものだ。
 どうにも落ちつかなくなる。

「だからタシュア、いったい何が……」
 そこへ、緊急事態を知らせる鐘が鳴った。










Web拍手 ←Web拍手です

NNR 月1回のみ:ネット小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
1票で大きく順位が上がります。なお順位だけ見たい方はこちら
FT小説ランキング 毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
順位だけ見たい方はこちら

遠き風に願いし君は 筆者のムーンチャイルド用長編作品です。

筆者サイトへ(筆者連載物「ルーフェイアシリーズ」のまとめ、その日の最新話へのリンク、改行なし版等があります)







ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう