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Chapter:2 予感
Episode:08
「ですけど……自室にこもってるなんて、珍しいですよね?」
「たしかにタシュアは図書館にいることが多いが……それほど珍しくはないな」

 この子がよく目にする放課後、彼もたいてい図書館にいるだけだ。授業をサボって自室にいることも、実はよくある。

 それにしても、この子も面白い。
 タシュアは人を寄せつけなかった。だから私はともかく、ルーフェイアがこうして傍にまとわりつけること自体が、かなり異例といえるのだ。
 それだけタシュアも、この子を可愛いとは思っているのだろう。

――よく泣かしてはいるが。

 いじめ癖のあるタシュアにとって、素直でなんでも真に受けるルーフェイアは、かっこうのオモチャらしい。
 しかもルーフェイアが信じられないほど繊細で、ちょっとしたことで泣き出してしまうものだから、よけいに面白がっていじめるのだ。
 まぁそれなりに厳しいことを言ったり時たま助言をしたりと、面倒もみてはいるのだが。
 ともかく行った先でも気をつけてやらないと、また泣かされるだろう。

「あの……男子寮なんてあたし、初めてで……」
 どこか不安げな調子で、ルーフェイアが小さく言う。
「本当か?」
 これは意外だった。
 他のところは知らないが、この学院はそれほど規律は厳しくない。消灯時間前ならば、それほど咎められることもないのだ。

「イマドの部屋も……行ったことがないのか?」
「はい」

 ただ、ルーフェイアらしくもある。
 イマドというのは、ルーフェイアと同じクラスの男子だ。なんでも戦場にいたこの子が学院へ来るきっかけを、彼が作ったのだという。
 そのせいなのだろう、よくいっしょにいて仲がいい。
 ただルーフェイア、何と言うか恋心や何かを、どこかへ落としてきたようだ。それでどうにも進展せず、ずっと仲良しのままだった。

――イマドも大変な相手を選んだな。

 思わず可笑しくなる。
 幸いイマドの方がそのあたりをよく分かっていて、それなりに二人で上手くやってはいるのだが。

「先輩、あたし……なにか変なこと、言いましたか?」
 つい笑ってしまった私に気が付いて、ルーフェイアが不思議そうに尋ねてきた。
「あ、いや、なんでもないんだ」
 慌ててそう言い訳する。

 男子寮二階の一番奥、そこがタシュアの部屋だった。
「シルファ先輩と、ちょうど反対側ですね」
「そうだな」
 言いながら部屋のドアをノックしようとすると、先に中から声がかかる。

「どうぞ。開いていますよ」
 いつもと変わらない声。どうやら杞憂ですんだようだ。

「私だ。入るぞ……」
 一言断ってからドアを開ける。
 部屋の中に入って最初に目に入ったのは、脱いでいるタシュアだった。
 上半身がさらけ出されている。

「きゃぁぁっ!!」

 間髪入れずにルーフェイアの悲鳴が響き渡った。どうも刺激が強すぎたらしい。




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