戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ(73/80)PDFで表示縦書き表示RDF


戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ
作:こっこ



Episode:73


「それに、あたしといっしょじゃ……きっとロクなことに、ならないから……」

 代々傭兵として生きてきたシュマーという家。そういう家にあたしは産まれた。
 でもあたしはそれが嫌で嫌で――なのに実力だけは一人前で――イマドに偶然誘われた時、逃げるようにこの学院へ来たのだ。

 以来イマドは、ずっとあたしと一緒にいてくれている。
 ただ外の人間が、シュマーの総領家に関わるとロクなことにならないのは、内々じゃ知られた話だった。

「ごめんね、イマド、ほんとは関係ないのに。
 でもイマド、優しいから……」

 そう。イマドは関係ない。
 偶然あたしたちの時間が交差して、いっしょになっただけだ。
 けど今ならまだ間に合う。

「もう、あたしのことなんていいから」

 あたしは……帰らなければいけない。あの戦場へ。
 そしてまた褒めそやされるのだ。

――人殺しが上手いと。

「だから、イマドはイマドで……」

 なぜだろう、涙が出てくる。
 もうここにいられなくて、あたしはイマドに背中を向けた。

「ごめん、あたし……部屋に、帰るね……」
「待てよ!」
 イマドがあたしの手をつかむ。

「悪かった」
 真っ直ぐな瞳。

「俺……昨日からずっと死んだヤツらの念食らってて……。いや、それは関係ねぇな。
――俺が悪かった」

 羨ましいぐらいに真っ直ぐな視線。
 あたしまた、泣き出しそうになる。

「――イマドのせいじゃ、ないでしょ」

 やっとそれだけ言った。
 と、急にイマドが笑い出す。

「なんか、普段と逆だな」
「え? あ、そうかも」

 言われてあたしも、ちょっと可笑しくなる。
 でもまたすぐ、二人で黙ってしまった。

「リティーナって俺のよく知ってる低学年の子、死んじまってさ……」
 ぽつりとイマドが言う。

「ナティエスも――死んだの」
「――そうだったのか」

 あたしも、イマドも、他のみんなも、誰かを亡くしたのだと気付く。
 友達、先輩、後輩、そして兄弟……。

「なんで、こんなことに……なっちゃったんだろう」
「さぁな……」

 答えはけして出ないだろう。
 ただ虚しい思いだけが、心にこだましていた。










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遠き風に願いし君は 筆者のムーンチャイルド用長編作品です。

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