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Chapter:6 勝敗
Episode:69
 気落ちした後ろ姿で、ルーフェイアが歩き出す。
 ただ昨日と違って足取りはしっかりしているから、寮までなら大丈夫そうだった。

「それで先生、私は何を……」
「これを頼む。嫌な仕事だとは思うが、まさか下級生に任せるわけはいかないんだ」

 差し出されたのはリストだ。

「兄弟でここにいる者で、死亡したケースをまとめてくれないか。
 なにしろ生き残った方も重傷を負っていたりで、まだ完全に連絡できていないようでね」
「了解です」

 渡されたリストを見る。
 兄弟でこの学院へ保護されているケースはそう多くないが、それでも相当の人数だった。
 ここから死亡者を洗い出すとなると、けっこう時間がかかるだろう。
 急いで作業に入った。

 クラスごとに安置されている遺体の名札を見ながら、チェックを入れて行く。
 下は六歳から上は私と同じ十九歳まで……。

「シルファ、ルーフェイアはどうしたのですか?」
 うろうろしていると、タシュアが戻ってきた。

「その、ルーフェイアは部屋へ戻ったんだ。それで私は、これを頼まれて……」
 タシュアにリストを見せる。
「兄弟のリストですか……。
 ここは二人とも亡くなりましたね。こちらは姉が重傷ですが、弟は無事です」

 次々とタシュアがチェックしていく。
 昨日負傷者の手当てに当たっていた際に記憶したのだろう、名前を見ただけで即答だった。
 そのタシュアの言葉が……途切れる。

「どうしたんだ?」
「いえ、なんでもありません」
「――?」
 気になってタシュアの手元を覗きこんだ。

「あ……」
 リティーナ=マルダー。
 あの子だ。

 昨日の光景がよみがえる。
 たった九歳で、未来を絶ち切られてしまった少女。

――助けてやれなかった。

 深い悔恨が私を捕らえた。
 こんな小さな子では自分を守れるわけがない。なのに私たち上級生は、なにをしていたのだろう。
 わかり切ったことだというのに。
 ほんの数メートル先の、この子のところへ行く。
 おだやかな表情をしているのが救いだった。

「ナティエスの苦無が刺さっていましたから……あの子がみかねて死なせたのでしょうね」
「ああ……」
 ナティエスはいつも、苦無にかなり強い毒を塗っていた。そのせいで苦しんだ様子がないのだろう。

「可哀想なことをしました」

 私は何も言えなかった。
 今回のことでは、タシュアもまた……。

「すまない、どいてもらえないだろうか?」

 後ろから声をかけられて振り向くと、同じクラスのセヴェリーグがいた。
 この子の兄だ。
 その彼がそっと少女の隣にしゃがみこむ。

「リティーナ、これを……持っていくといい」

 好きだったのだろう、可愛いぬいぐるみをその手に持たせていた。
 当然かける言葉などない。

「セヴェリーグ……」

 そう言うのがやっとだ。
 だがセヴェリーグが返してきたのは、まったく違う言葉だった。




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