戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ(62/80)PDFで表示縦書き表示RDF


戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ
作:こっこ



Episode:62


「――どうしたの?」
 私のグラスにまたワインを注ぎながら、先生が尋ねる。

「私は……何もできないから……」
 少し酔っていたのだろうか? ついそんな言葉が口をついた。

「タシュアに頼るばかりで、自分ではなにも……」

 努力はしている。少しでも追いつきたいと、必死に努力はしている。
 だがタシュアはそれ以上で、差が開くばかりだった。
 それを知るたびに自分の無力さを思い知らされるのだ。

「だけどタシュアは、あなたを必要としてるように見えるわよ?」

 その問いにも答えられなかった。

 落ちこんでいたタシュア。
 それなのに私は、かける言葉さえ持たない。
 タシュアはいつだって私を支えてくれるのに、私はこんな時でさえ力になれない。

「私は……タシュアにとって、いったい……」
「しっかりしなさい、シルファ」

 不意に先生が厳しい声を出した。

「あの子は……タシュアは、人を拒絶してる。
 昔、何があったかは知らない。あんな風になるんだから、おそらくとんでもないことなんでしょうけど。
 けどシルファ、あなただけでしょ? そんなタシュアに近づくことが出来るのは。
 だったらこんなところで油売ってないでほら、さっさと行って慰めてらっしゃい」

「先生……」

 どうするべきか迷う。
 タシュアは、ひとりにして欲しいと言っていた。
 なのにそんなところへ押しかけようものなら、嫌われてしまうのではないだろうか?

 他のことはどうでもいい。ただそれだけが怖かった。
 タシュアをなくしたら私は……。

「シルファ=カリクトゥスっ!」
「は、はいっ」

 とつぜん鋭く名前を呼ばれて、思わず反射的に答える。

「あなた、自分とタシュアと、どっちが大事なの!」
「それは……」

 考えるまでもない。
 そして、気がつく。
 自分がなにをすればいいのか。

「先生、ありがとうございます」

 そう言って立ち上がった。
 足元がふらつく。

「大丈夫? あなた意外に、飲んでたものねぇ。
 ともかく、しっかりやってらっしゃい」

 ムアカ先生に励まされて(?)食堂を出た。
 急に動いたせいか、頭がぼうっとしてくる。
 それでも真っ直ぐ、私はタシュアの部屋へ向かった。










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遠き風に願いし君は 筆者のムーンチャイルド用長編作品です。

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