戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ(55/80)PDFで表示縦書き表示RDF


戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ
作:こっこ



Episode:55


 驚いたロアからは怒りの表情が消えたが、それでもシルファはおさまらなかった。

「何よりタシュアは自分の弟を――」
「シルファ!」
 タシュアが鋭く制止する。
「だが!」

 それでも何か言おうとするシルファに、タシュアはかすかに首を振った。
 これは……学院とは無関係のことなのだ。
 そしてロアのほうに視線を向ける。

「言い訳をするつもりはありません。ですが今やらなくてもいいでしょう。
――手当てが先です」
「――分かった」

 ロアもそれ以上追求することなく、怪我人の手当てへと戻る。
 彼女の怒りの原因を、タシュアは分かっていた。海岸へ回った彼女の同級生――いちおうタシュアの同級生でもある――が、何人も死んでいるのだ。
 そのやり場のない思いが、こちらへ向いたのだろう。

(――はた迷惑ですがね)

 だがそれも、仕方がないのかもしれない。
 誰もが疲れ、苛立っていた。

 最後の戦闘で船着場が破壊されたため、本土へ船が出せない。イマドが再び門を通って――彼は無傷で通れる――助けを求めに行ったようだが、それもすぐには来ないだろう。
 薬も既に底をついている。個人が持っていたものさえも使い切ってしまい、もう頼りは魔法だけだ。
 もちろん、魔法を使える者は総動員されている。特に精霊持ちの上級生たちは、魔力も強いためずっと休みなしだ。
 だがそれでも……間に合わない。

「あ……」
 隣にいたルーフェイアが、立ち上がりかけて膝をついた。

 この少女も魔力が並外れて高いため、戦闘終了直後からずっと魔法を使いつづけている。
 だがこの子はまだ十四歳だ。しかも女子で小柄な上に、戦闘開始直後から最前線で死闘を繰り広げていたのだ。
 もう体力の限界など、とうに超えているはずだった。

「ルーフェイア、あと少しです。頑張りなさい」
 タシュアが声をかける。
 休ませてやるべきなのは百も承知だ。だがそれさえ出来ないほど、状況は追い詰められていた。
「はい」
 少女も戦場で育っただけあって、事態を良く理解しているのだろう。気丈に返事を返して手当てを続ける。

(これでどこが――勝ったと言うのでしょうね?)

 勝利の歓喜など欠片もない。
 あるのはただ……空虚さとうめき声と、死。
 終わらない悪夢の中を、学院はさまよい続けていた。


>Rufeir
「もうこれでいいから。みんなご苦労さま」
 そうムアカ先生が言ったのは、もう時間も分からないほど手当てを続けた後だった。
「後はこっちで引き受けるから。あなたたちはもう、部屋へ帰って休みなさい」
「はい……」

 最後の回復魔法をかけ終えて、あたしは立ち上がった。
 ふらつく足元に力を入れて、どうにか歩き出す。
 頭が痛かった。それに吐き気がする。疲労が限界を超えているせいだろう。

「ルーフェイア、大丈夫か?」
 見かねたのか、シルファ先輩が声をかけてくれた。
「はい、大丈夫……です」

 やっとそれだけ答える。
 本当はここへ倒れてしまいたかった。でもそんなことをしたら、治療の邪魔になってしまう。
 出口までがひどく遠い。

「あ……」

 また足元がふらついて、手から太刀がすべり落ちる。
 態勢を立て直せない。
――倒れる。
 そう思ったとき、誰かがあたしの身体を支えた。

「シルファ、私とルーフェイアの武器を持ってくれませんか? 私はこの子を連れて行きますから」
 タシュア先輩が言いながら、あたしを抱き上げてくれる。

「すみません……」

 それだけ言うのが精一杯だった。
 意識が遠のく。
 必死に繋ぎとめようとしたけど、どうすることも出来なかった。










Web拍手 ←Web拍手です

NNR 月1回のみ:ネット小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
1票で大きく順位が上がります。なお順位だけ見たい方はこちら
FT小説ランキング 毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
順位だけ見たい方はこちら

遠き風に願いし君は 筆者のムーンチャイルド用長編作品です。

筆者サイトへ(筆者連載物「ルーフェイアシリーズ」のまとめ、その日の最新話へのリンク、改行なし版等があります)







ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう