戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ(30/80)PDFで表示縦書き表示RDF


戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ
作:こっこ



Episode:30


 幼い頃から考えるより先に身体が動いた。
 呼吸するくらい自然に刃を振るい、戦場を駆けた。

――今も。

 突っ込んできた敵の剣を、身体を入れ替えてかわす。その間に手は自然と太刀を振り上げて……一閃。
 相手が倒れる。
 それを横目で見ながら、今度は敵が固まってる場所に上位の攻撃魔法。

――あたしは、なんのために?

 背後から襲いかかった相手には、後ろを向いたまま下位の炎魔法。
 怯んだ隙に反転して斬撃。

――理由なんてなかった。

 戦場で毎日を過ごしながら、本当はすぐにでも逃げ出したかった。
 そうしなかったのは……周囲の期待と、勝手に動く身体とをもてあましたからだ。

 あたし自身の思いとは関係なく、才能だけはあった。まるでプログラムされているかのように、身体は勝手に動く。

 たまたま戦場にいて、なおかつそれだけの力があって。
 ただそれだけの理由で、戦っていたことに気付く。
 誰もが必死に戦っているこの場所で、自分だけがひどく浮いている気がした。

 虚ろなまま手を血に染める狂った小娘――それがあたしだ。

「――来ないで」

 唇から言葉がこぼれる。
 三人同時ならと思ったのだろう、確信の表情で迫る敵兵。

「だめよっ! 来ちゃだめっ!!」

 でもあたしの叫びなど聞くわけもなく……数呼吸後には彼らも、物言わぬ死体の仲間となる。

 不意に風が舞い上がった。
 あたしの長い金髪が踊る。
 周囲を敵が取り囲んで、一斉に襲いかかってくる。

「お願い、来ないでっ!」

 迫る幾つもの刃。
 だがそれが、あたしに触れることはない。

「死にたくなければ来ないでぇっっ!!」

 願いは届かず――炎が吹き上がった。
 剣を振り上げた体勢のまま彼らが燃える松明と化し、たちまちのうちに灰となる。
 こぼれた涙が、小さく炎にはぜた。











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遠き風に願いし君は 筆者のムーンチャイルド用長編作品です。

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