ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
Chapter:4 狂気
Episode:26
>Tasha Side

 ナティエスを抱いて、シルファが出て行く。
 子供たちの足音が遠ざかっていった。
 あちこちから聞こえる悲鳴。爆発音。
 だが……ここだけはまるで、時が止まったようだった。
 その中で、兄弟が対峙する。

「ずいぶんとよぉ、甘っちょろくなったもんじゃねぇか」

 タシュアをを見下すようにバスコが言った。
 すでに兄を超えたと思っているのだろう。

「神に抗う者だの大層な名前を喜んでた割にゃ、落ちたもんだなぁ!」
「たしかに……私は変わりました」
 その弟に、静かに兄が言葉を返す。

「ですがその変化を、私自身が気に入ってもいます。守るべきものもできました。それを守るためならば、かつて以上に冷酷にもなれます。
――試してみますか?」

 タシュアが初めて表情を見せる。
 氷よりも冷たい微笑。

「な、なに笑ってやがる……」
 死神の微笑みに弟の声が震えた。

「ですから、試してみなさいと言っているのです。
――私を超えたのでしょう?」
「だったら死ねっ!!」

 バスコが戦斧を振り上げ、タシュアへと挑みかかる。
 数え切れないほどの犠牲者の血を吸ってきた戦斧が、勢い良く振り下ろされた。
 だが刃は、虚しく床をえぐっただけだ。

「おやおや、ずいぶんのんびりとした攻撃ですね。そのうち蠅がとまりますよ」

 タシュアは軽々と後方へ跳び、簡単に避けてみせたのだ。
 その顔には、どこまでも冷たい嘲笑。

「このぉっ!」

 逆上したバスコが次々と斧を繰り出す。
 常人なら決して避け切れないような鋭い攻撃。
 が、どれも空を切るばかりだ。

「掛け声だけは勇ましいですねぇ。当たらない以上意味はありませんが。
 それと備品を壊さないでいただけますか。どうせ弁償する気などないのでしょう?」
 言いながらタシュアは教室内を移動し、一番前まで戦いの場が移っていく。

「なんだかんだ言って、逃げてるだけじゃねぇか!」
「そう言うのでしたら、逃げられないような攻撃をしてみなさい」

 教卓に寄りかかりながらのタシュアの言葉は、まさに嘲ってるとしか言いようがない。

「もっとも、力任せに斧を振るうことしかできない脳細胞では、連続技など考えもしないのでしょうが」
「――!」

 言葉にならない雄叫びをあげて、バスコが斧を大きく振り下ろした。鈍い音がして、刃が完全に教卓――端末も兼ねた、据え付けの大きなもの――にめり込む。
 が、やはりそこにタシュアの姿はなかった。

「さて、どこを切り落としてほしいですか?」
 バスコのすぐ隣で、死神が囁く。
「う……うおおおぉぉっ!!」

 抜けないほど深く食い込んだはずの戦斧が、引き抜かれ薙ぎ払われた。
 初めて二つの刃がぶつかり合う。

「なっ――!」
 バスコが驚愕の色を見せた。分厚い戦斧の刃が、真っ二つに折り飛ばされたのだ。

「武器はただ振り回せばいいというものではないのですよ。
 まぁあなたの単純な頭で、それが理解できるとは思えませんがね」

 タシュアの大剣が閃く。
 黒い残光としか言いようのないものが軌跡を描く。
 あっさりとバスコの左腕が切り落とされ、脇腹まで黒い刃が食い込んだ。
 激痛に弟が絶叫する。

「痛みだけは、人並みに感じるようですね」

 言いながらタシュアが、容赦なく両足をも切り落とした。
――ナティエスと同じように。

「いかがです? 少しはやられる側の痛みがわかりましたか?」
 冷酷なまなざしがバスコを射る。

「たっ……助けてくれ……アニキ……」
 弟の、兄への懇願。
 だがタシュアの答えは冷たかった。

「そう言った方々に、あなたは何をしてきました?」




Web拍手 ←Web拍手です

FT小説ランキング  毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
 順位だけ見たい方はこちら

NEVEL Ranking  月に1回:NEWVELランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票


◇イラストいろいろです。随時募集中です♪◇
シエラ学院制服  Blue Ocean  ルーフェイア・シリーズ

自サイト美術室はこちら
掲示板はこちら。お気軽にどうぞ♪


筆者サイト
↑筆者サイトへ
最新話へのリンク、改行なし版等があります


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。