戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ(22/80)PDFで表示縦書き表示RDF


戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ
作:こっこ



Episode:22


「――なんでぇ、だんまりかよ?」

 バスコが見下したような笑いを浮かべる。

「まぁ、戦いの最中に女を連れ歩くほど落ちぶれたキサマじゃなぁ。ムリねぇか」

 どこか勝ち誇ったような響き。
 瞬間、思い出した。
 タシュアには弟がいると、聞いたことがある。そしてどこかの傭兵隊にいることも。
 この弟は、兄にあたるタシュアを超えたいのだ。

 だが上手く言い表せないが……彼が知っているのは多分、タシュアになる前のタシュアだ。
 そして今のタシュアは、誰も手が届かないような高みへと昇りつづけている。

――自分を責め続けることで。
 それを、この弟は知らないだろう。

「ほら、なんとか言ってみろよ」
「――シルファ。
 ナティエスと低学年を、安全なところまでお願いします」

 弟の挑発を、タシュアは完全に無視する。

「先ほど上がってきた階段を利用して地下へ降りれば、当分は安全なはずです」
「タシュア……」

 彼が他人に頼み事をすることは、あまりない。だから断ることができなかった。
 だいいち悔しいが、私がここにいてもタシュアの足手まといになるだけだろう。

「頼みましたよ」
「――わかった」

 存分に戦えるようにと、急いで出口へ向かいかける。

「それからこれを」
「え?」

 驚いて振りかえる私に、タシュアが眼鏡を外して差し出した。
 血の色をした瞳が光にさらされる。

 以前タシュアが言っていた。この眼鏡は見るために必要なのではなく……制限するためのものだと。
 強すぎる力を制御するための、いわば手段だ。
 それを私に預けると言うことは――。

「預かっておいてください。後から取りに行きますので」

 その横顔には表情がない。
 表情がないからこそ恐ろしかった。

――やはり、本気なのか?

 私に怒りが向けられているわけでもないのに、身体が冷たくなる。
 タシュアは本気で弟を……。
 戦いが孕む狂気が、辺りを侵しつつあるようだった。


>Imad

 海岸に顔を揃えたメンバーは、だいたい一個中隊ってとこだった。
 資格が限定されっから、上級生のそうそうたる顔ぶればっかだ。次々出る指示にも、反応が早えぇし。

――って、俺が最年少か?
 けどもう一学年下で合格すんのはさすがにキビシいから、まぁそんなとこだろう。

「イ〜マド♪」
「なんでお前がここにいるんだよ……」

 さっきまで一緒にダベってたミルに声をかけられて、一気に不安になる。

――そりゃ、腕はたしかだけどよ。
 ただこいつ、どう考えても性格が……。

「え〜、あたしちゃんと、三級持ってるもん! すごいんだから☆」
「分かった分かった!」

 戦闘直前のピリピリしてるとこで、頼むから素っ頓狂な声で騒ぐなっての。
 案の定、周囲が白い目で見てやがるし。

「おい、シーモアはどうしたんだよ?」
「あ、シーモアはねぇ、船着場行ったよ♪」
「――マジ?」

 頭が痛くなる。
 一縷の望みをたくして周囲を見回してみても、やっぱ同じクラスは俺だけってやつだ。
 ってことは、俺がこいつのお守りか?

――冗談。
 ンなことしてた日にゃ、戦う前に倒れちまいそうだ。

「ねぇねぇねぇねぇ、イマド、そ〜いえばルーフェイアは?」

 こいつやっぱ学習機能ついてねぇ。またきゃいきゃいと騒ぎ立てて、周囲のヒンシュク買ってやがる。

「あいつ、検定受けてねぇんだよ」
「え〜、どしてどして? なんでイマド、ちゃんと受けさせてあげなかったの?」
「俺に言うな!」

 あいつの場合事情が事情だけど、それをここで言うわけにもいかねぇし。

「けどけどぉ、ルーフェイアいなかったらキビしいよね〜」
「いいんじゃねぇか? その分校舎の守備が堅くなるからな」

 他にも向こうには、運営に関わってるような先輩たちが回ってる。

「向こうがきっちり守ってくれれば、俺らは考えないで済むんだぜ?」
「でもぉ」

 その時……聴こえた。

「――悲鳴? どこだ?」










Web拍手 ←Web拍手です

NNR 月1回のみ:ネット小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
1票で大きく順位が上がります。なお順位だけ見たい方はこちら
FT小説ランキング 毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
順位だけ見たい方はこちら

遠き風に願いし君は 筆者のムーンチャイルド用長編作品です。

筆者サイトへ(筆者連載物「ルーフェイアシリーズ」のまとめ、その日の最新話へのリンク、改行なし版等があります)







ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう