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Chapter:3 戦端
Episode:19
 なんでよ! どうしてこんなことするのよっ!!

 低学年のリティーナ――あのキザで有名なセヴェリーグ先輩の妹――が、切り刻まれてる。
 手を、足を、胴の一部まで切り落とされてまだ生きてる。
 それをこいつ、嬉しそうに眺めて悦に入って……。

「たすけ……おにいちゃ……たす、け……」

 虚ろな目で天井を見ながら、リティーナがつぶやく。
 けど、助けたいけど、近寄れない。ただ見てるだけ。
 だからあたし、自分の苦無を投げつけたの。リティーナに向かって。
 苦無には即効性の猛毒が塗ってあるから、当たればすぐに息をひきとるはず。

――これで楽になるよね?

 狙いたがわず苦無は飛んで……リティーナに突き立った。
 この子の身体から力が抜ける。

「邪魔するんじゃねぇよ……」

 そいつが初めて声を出した。
 ヤな声。ザラザラしてる。

「お姉ちゃん!」
「早く行くのよっ!」

 あたしの厳しい声に、慌てて最後のちびちゃんたちが部屋を出た。

――よかった。

 とりあえず、生きてる子はこれで全部だ。
 苦無を構える。

 あいつの武器ときたら、あたしじゃ持ち上がらないような戦斧。これじゃどうみたって、不利なんてもんじゃないかも。
 でも、引き下がるもんか。
 後ろには低学年がいる。あの子たちが安全な場所へ行くまで、時間だけでも稼がなくちゃいけない。

――先手必勝!
 苦無を二本、立て続けに投げる。いくら大男だろうが力があろうが、かすればこっちの勝ち。

 けど、甘かった。

 戦斧が一閃して、苦無が叩き落されて。
 その上あっという間に間合いを詰められた。
 次の苦無を投げるよりまだ早く、戦斧が振り下ろされる。
 とっさに腕をかざして身体をひねって……。

 激痛。

 左腕が切り飛ばされて、わき腹まで刃が食いこむ。
 あたし悲鳴を上げたのかな? よく分からない。
 倒れたあたしの目の前に立ちはだかるこいつだけが、いやにはっきり見えて。
 酷薄な笑い。

――愉しんでるんだ。

 そのことに気が付いて歯を食いしばる。
 悲鳴を上げて、こんなやつを喜ばせたくないもの。
 睨みつけてやったら、こいつの表情が変わった。あたしの態度、気に食わなかったみたい。

――ざまみろっての。

 ちょっとだけ楽しくなる。
 でもこのサディスト、それだけじゃ終わらなくて。
 もう一度戦斧が振り上げられる。

 鈍い音。
 今度は……両足。

――負けるもんか。

 目をつぶって歯を食いしばって激痛に耐えて。
 「助けて」なんて、死んでもコイツに頼まない。
 まぁ……言う前に死んじゃいそうだけど。

『手の空いてる隊、教室へ来てくれ! 低学年が襲われてる!!』

 切羽詰まった感じで、通話石に報告が入って。

――ちょっと……遅いってば。

 その時、誰かの手があたしを抱き上げたの。そして急に痛みが消えて。
 やっとの思いで目を開ける。

「タシュ、ア……せん……ぱい?」
 瞳に飛び込んできたの、意外すぎる人だった。

「喋らないように。傷に障ります」
 言葉遣いはいつもとおんなじ。けど、ずっと優しい感じ。

――そっか。

 いつもルーフェイアが言ってたっけ。タシュア先輩はいい人だって。
 ほんとだったんだ。
 ならあの子たち、きっと助かる。

「せんぱ……あの子……た……おね……が……」

 ひどく眠かった。




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