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Chapter:3 戦端
Episode:15 戦端
>Tasha Side

「いよいよですか……」
 シルファとルーフェイアが出ていった部屋で、タシュアはつぶやいた。

 実を言えば昨日から、嫌な予感はしていたのだ。
 戦場で育ったが故なのだろうか? なにか大きなこと――それも悪いことばかり――がある場合は、事前に奇妙な感覚を覚える。

 激戦になる。そんな気がした。
 相手は分からないが、おそらく正規兵だろう。

(――有利とは言えませんね)

 この学院が誇る(?)上級傭兵隊は、そのほとんどが派遣されて不在だった。タシュアたちも、とある契約をたてに拒否していなければ、今ここにいなかったはずだ。

 僅か十数名の上級傭兵隊。
 いくら従属精霊の力を借りているとはいえ、絶対的な数が少なすぎる。
 しかも残る生徒の八割は、実戦経験が無い。所詮は「訓練生」なのだ。

 さすがに厳しい表情のまま、タシュアは自室を出た。
 騒然としている中、女子寮へと向かう。

「――タシュア!」
「準備は終わったのですか?」
 向こうから急ぎ足で来たパートナーにそう尋ねる。

「ああ。といっても、いつもの装備だけなんだが……」
 タシュアやルーフェイアの構え方を見たせいだろう。シルファは多少自信がなさそうだった。

「それだけ整えてあれば問題ないでしょう。
――行きますよ」

 そのまま歩き出す。後ろからサイズ(大鎌)を手にしたパートナーが、ついてくる気配がした。

「タシュア、待ってくれ。いったい……どこへ行くんだ?」
 本来向かうべき海岸へ行こうとしないタシュアに、シルファが尋ねる。
「教室へ行きます。低学年を守る人間が殆どいませんからね」

 攻撃理由は定かではないが、この学院の兵力は基本的に金で買える。
 いっぽうで迫る船団はどうみても、どこかそれなりの所属――小国かそれ以上――だろう。
 それほどのところが金を出さずに包囲攻撃するということは、この学院を邪魔に思っているということだ。

 兵力を見ても同じことが言える。
 本土への交通手段さえ封じてしまえば、学院は折れざるを得ない。だがそれにしては、持ち込んでいる兵力が大げさだった。

 もちろん、脅しのためにわざと、という可能性もあるが……だがタシュアにはどうしても、そうは思えなかった。
 何かが違うのだ。
 こういう状況を考え合わせると、低学年でも危険は免れないだろう。

 しかも学院のその辺りの運用は、どうにも下手だ。子供たちをシェルターにでも入れるなら分かるが、出入り自由な教室にクラスごとに分散させて、気休め程度の上級生を引率につけた程度で、守れるわけがない。

「それなら私も行く」
 命令違反を承知でシルファも同行する。
 その時、裏庭の方で悲鳴が上がった。

「始まりましたか」

 まだ船団は上陸していない。それなのに裏庭で戦闘が始まったというのなら、もはや校舎も安全とは言えないだろう。

「シルファ、急ぎますよ」

 惨劇の幕が上がろうとしている学園の中を、二人は走り出した。




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