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記憶
作:望月愛



5,きっかけ


「じゃあ今日はこれで〜」

カラオケ店の前でタクヤが言う。

すんなりと3組の男女はそれぞれの方向へ向かった。

???3組?アユミとジュンもカップル成立してましたー。

ってそれよりやっぱ気まずいんですけど…。無言が続く。

「東横線でしょ?何駅?」

サトシって人がやっと喋った。めっちゃ無愛想だけど。

「私は菊名だよ。えっと、アナタは?」

「俺は祐天寺。だから各停乗りたいんだけど菊名なら急行が良いよね?」


「あっ、じゃあ私急行で帰るんで…。」

これで気まずい時間が短くなる。

「そう。」

ホント無愛想だなぁ。

「何で今日何も喋ってなかったんですか?合コンなのにー。」

なんか足元がフラフラしてきた。

「急に呼ばれたからだよ。第一合コンなんて聞いて無かったし。」

「そうなのー?じゃあ私のせいだー。」

「アンタなの?急に増えたヤツって。」

「そーだよー。なのに誰からも誘われないし、アドさえ聞かれ無かったー。私オンナの魅力ゼロー。」

「ちょっと、駅で叫ばないでよ…。」

はい、私の記憶にあるのはここまで…。


目を開けると真っ白な天井が視界に入る。

「えっ?どこ?」

ベッドから上半身を起こすとサトシって人が床に座ってた。

「やっと起きた?アンタ記憶ある?」

「えっと、多分ないかな…てかここどこ?」

状況が全く分からない。

「ここは俺んち。アンタ駅のホームで寝ちゃったんだよ。何回起こしてもちゃんと起きないし、タクヤ達に電話しても繋がらなくて。アンタが起きるまで待ってたんだけど終電来ちゃったからとりあえず家帰ってきた。」

「あ…色々すみません。」

「始めに言っておくけどやましい気持ちじゃないから。むしろ大声出されたりして困ったし。」

「もちろん分かってます。」

「もう電車ないし、アンタが良かったら朝まで寝てきな。」

「ホントごめんなさい。…アナタは一人暮らしなの?」

部屋は白と茶色を基調としてて、モダンで大人っぽい感じ。

「あぁ。」

「へぇーえっ!?」

床の端っこの方に…ぶ…ブラジャーが落ちてる。しかも見覚えのある…。
はっと自分の胸に手を当ててみる。

…ない…。

「あ、あの〜」

「やっと気づいてくれた?言っとくけど自分で取って投げてたからね。」

だからずっとこっち見ないで話してたのか。

「私寝る時はブラ取る習慣があって…」

って何言ってんだ!?

「そんでいっつも投げてるの?」

「そんな事無いよ!」

…ホントはそうなんだけどね。

「とりあえずどうにかしてくんない?俺部屋出てるから。」

「すみません。」

サトシは部屋から出てった。
なんだか謝ってばっかだなぁ…ってか謝る事ばかりしてるのか。

とりあえずブラを拾う。

これ、絶対見えてたよなぁ。

こういう日に限って白のピタッとしたTシャツ…。
なんかもう全てにおいて恥ずかしい。

『ブーッブー』

ケータイのバイブが机の上で鳴ってる。サトシのだ。落ちそうだったから慌てて拾った。

『あっ。』

サトシのケータイ、私とおんなじストラップが付いてる…。

「ごめんなさい、終わりました。」

扉の向こうに向けてちょっと大きな声で言った。

「これ良かったら飲んで。」

サトシは冷たい麦茶を差し出した。

受け取ってとりあえず床のクッションに座った。

「ありがとうございます。あの、ケータイ鳴ってましたよ。」

「あぁ。タクヤだ。もういいや。てか今更敬語使わなくて良いから。さっきまで言葉遣い凄かったし。」

「それは酔ってたからで…じゃあそっちもアンタって呼ぶのやめてください。サキで良いから。」

「じゃあアナタってのもやめて。すっげぇ冷たい感じ。」

「だって何て呼べば良いか…。」

「俺、あだ名とか無いしフツーにサトシで良いから。」

「分かった。」

またサトシのケータイが鳴る。
メールかな?

「あのー、もしかして彼女いる?」

「えっ?居ないけど。居たら合コンなんて行かないし。何で?」

「そのストラップ、ディズニーのでしょ?2つで1コになるやつ。」

「あぁ。でも彼女じゃないよ。」

「良かった。酔っ払ってたといえ彼女居る人の家に行くのは申し訳ないと思って。ちなみにそれ私ともペアになるよ。」

そう言ってミニーのストラップの着いたケータイを見せた。この片割れはもちろんユータが持ってる。

いや、もう捨てたかな。

「アンタ…サキこそ彼氏居るんじゃ?いや…でもさっきモテないとか色々叫んでたな。」


「とっくに別れたよ―。なのに忘れられない未練がましい女なんですよーだ。もしかしてサトシもそう?」

「そんなんじゃないって。てか俺彼女居た事無いし。」

サトシは超平然として言った。

「えーウソだぁ〜。そのルックスで彼女居た事ない訳ないでしょーしかも医学部で。」

「ホントだって。何ならシンタロウとかにに聞いてみなよ。」

そこまで言うなら本当なのか…。

「その片割れの人とはどんな関係なの?」

「アンタには関係ないだろ?」

「またアンタって言った。良いじゃん。始発まであと2時間だし語ろうよ。」

さっきまで無愛想って思ってたけど話してみると意外とフツーだ。てか他の3人とは違う話し易さがある。

「まいっか。今日居た奴らに言うなよ。」

「大丈夫。誰の連絡先も聞いてないし―。」

「そうだったな。てかそんなに面白くないよ。」

「いいから言って―。」

「これ、妹に貰ったの。」

「は?」

「だから、妹に貰った。それだけ。」

「何それ―?つまんない―。」

「言っただろ?面白くないって。」

「何で妹とハートのペアストラップ持ってんの?もしかしてシスコン!?」

「違う。妹が極度のブラコン。これ外すと怒るんだって。」

「それヤバくない?」

「俺だって嫌だったよ。しかも俺に好きなコ出来ると何でかそれ知っててそのコに嫌がらせするし。」

だから彼女いなかったんだ…。なんとなく納得。

「ってかさぁ、そのストラップしてるから彼女出来ないんだって。ディズニーのストラップ=彼女居ます。だもん。」

「そういうもん?」

「そ―いうもん。」

「じゃあそのコトバ、そっくりそのままサキに返すわ。」

「……。」

間違いない…。

「てか妹何歳なの?」

「18歳。…生きてれば。ね。」

「えっ。」

「去年の夏、交通事故で死んだんだ。」

「そうなんだ…。ごめん…。」

「別に気にしないから。このストラップくれた1週間後だったんだ。だから形見なわけ。でもこれしてたら彼女出来ないのか。もしかしたらサキの陰謀かな?」

「サキ?」

「あぁ、妹の事サキって呼んでたんだ。ホントは咲子。」

「紛らわしい名前でごめん。」

「だから気にしてないって。始めは戸惑ってアンタとか言っちゃったけど。」

「そっか。」

「じゃあ今度はそっちの話聞くよ。」

「悪いけど長くなるよ?」

「まじで?途中で寝てたらごめん。」

そんな事言いつつサトシはずっと話を聞いてくれた。

気づいたら電車が動き出して1時間経ってた。

「つまり、何で振られたか分からんから未だにスッキリしないのか。」

「多分そこに行き着くと思う。男の人ってそーゆーもんなの?」

「そんな事俺に聞いても分かるわけないじゃん。」

「そうだよね。ねぇ、もしかしてチューもまだした事無いの?」

「お前よくそんな事言えるなぁ。ハイハイ、ありませんよ。」

「まじで!?ハタチでしょ―?」

「うるさい。」

「かわいそうだから付き合ってあげようか?」

「そんなん要らねぇよ。ズボラ女はイヤだし。」

「ちょっと。勝手に決めつけないでよ。」

「いやいや。行動見てれば分かるから。どーせ部屋汚いだろ?」

す、すごい…。

「今はキレイだもん!!」

「『今は』って。オレ汚いのはムリだもん。」

確かに部屋の中はかなりキレイだし物が無い。

「ちょっと!私汚くないからね。」

「分かってるって。」

「じゃあサトシはどんな女の子が好きなの?」

「んっと、明るくて、いつも笑顔で…サキみたいな子。」

「えっ?私みたいな子?」

「言い直すわ。咲子みたいな子。」

「分かってるって。てかやっぱシスコンじゃん。」

「うるさい。でもアンタ本当に咲子に似てる。」

ちょっとドキっとする。


「似てるの?」

「あぁ。雰囲気がそっくり。喋り方もだし、幼稚なトコロとか。」

「陰ながら私の事バカにしてない?」

「よく分かったじゃん。」

「何かはじめ会った時と性格全然違うね。」

「それ言うならそっちでしょ?大人しい子だと思った。」

「人見知りなだけ。ホントは騒がしい子だよ。」

「それはもう知ってるよ(笑)」

「サトシこそ全く喋ってなかったじゃん。」

「あ―いう雰囲気苦手なんだよ。しかも騙されて機嫌悪かったし。」

「私も!あの雰囲気苦手。」

「だから寝てたんだ。」

「そんなにイジメないでよ。そこ後悔してんだから。」


なんだかんだでサトシの家を出たのは午前8時くらいだった。

「駅近いね―。」

サトシが駅まで送ってくれたんだけど、3分もかからなかった。

「駅に近い物件を選んだからね。」

「この辺りで家借りると高いでしょ?」

「まぁね。実家なら3LDKくらいに住める家賃だな。」

「実家田舎なんだね―。」

「フツーそこ突っ込まないだろ?実際ド田舎だけど。」

「まぁ良いじゃん。今日はホント―にありがとうね。ご迷惑おかけしました。」

「あぁ。とりあえずサキは外で飲まない方が良いな。」

「まだ言うの〜!?」

サトシが笑った。

「じゃあ今度メシでも行こうよ。もち酒抜きで。何食べたい?」

「ん〜焼肉!!」

「可愛げないな―。オッケー。また連絡するから。」

そう言ってわかれた。

ん?サトシにアドレス教えて無いじゃん。
てかご飯誘われたよね…。
正直嬉しい自分が居る。

電車に乗り、空いてる席に座る。

長い長い一日が終わった。


…ん?始まったのか?

とりあえず眠いや。

電車の揺れが心地良かった。












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