マリヤの骸(5/6)PDFで表示縦書き表示RDF


マリヤの骸
作:宵之口 闇太郎



赤い幕間


 眠りから目覚めると、何やら激しい口論が聞こえてきた。私の居る、赤い部屋の外からである。



「************!」

「…****。*********。」



 何を言っているのか、皆目分からぬ。普段は耳にしないような、酷く口汚い様子の言葉の羅列。
 口論の度に怒りを含んだ振動が赤い部屋を揺さぶっている。ひしひしと、赤い部屋を通して感情が伝わってきた。


「******。****。」


「*****! **********…。」



 怒り。そして絶望。それが今赤い部屋を支配している。それはどうにも、私にとって嫌に居心地が悪いものだった。


嫌だ。
この感情は、嫌だ。

 この感情は、部屋を圧迫させる。声がする度にぎゅうと周りの圧力が増し、それが私を締め上げるのだ。苦しい。それと同時に何故だか悲しさを感じた。



気持ち悪い。

止めろ。


 
……………止めろ!!


 そうして私は、部屋の壁を蹴った。どすどすと、あらん限りの力を使い、持てる限りの嫌悪の念を込めて。

 すると、はたと口論は収まった。代わりに悲愴な呟きが一つ、こぼれ落ちてきた。

「…********。」

 何を言っていたのか。それはどんな意味だったのか。


 取りこぼしたそれを私が拾うことは最早叶わなかったが、私にとってそんなことはどうでも良い。

 ただ、酷く部屋が狭く不快だった。それが解消された今となっては、私にとって外の出来事なぞとるに足りない物なのだ。


 それにしても、本当にこの部屋は心地が良い。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう