第二十三話『試練3』
ネールが言う『試練』という言葉は大方合っていた。ソハネは最低限、九十五階で用意したモンスター程度も勝てないようじゃ、闘う資格は無いし、闘っても意味は無いと思っていた。何故なら魔法を使わなくても、今回用意した敵なら楽々倒す事はできる。ソイドに言われなければこのまま到達できずに死んでくれても構わないとソハネは思っていたが、本当に危なくなったら転移魔法で百階に転移させようと思っている。そして意味の無い戦闘でぼこぼこにした後、一階に転移させようと計画している。ソハネの見立てでは九十八階までなら九十五階から数が増えただけで、同じモンスターを用意したので何とか倒せると思っており、ここまで倒せば上出来だと思っている。九十九階はネール達の実力では絶対に越えられないとソハネ自身思っている試練でそれまでと違うエンドレス四十六階クラスのモンスターを用意しており、勝てる確率は一%ぐらいだろうと踏んでいる。だがこの計画にも懸念材料は一つある……それは。
~九十八階~
「俺様様の攻撃でくたばりやがれ」
最後に残ったゴーレムにガラドは力を振り絞り、ジャンプし体重と闘気を載せ、頭から真っ二つに両断する。九十五階の敵を倒したネール達は九十六階、九十七階とモンスターの数が増え徐々にきつくなっていったが何とか倒し、九十八階の敵はゴーレム十体とシルフィー五体。熾烈を極めた戦闘もガラドの一撃で最後の敵を倒したが、ネールの防御魔法をもってしても無傷とはいかなく、ネール達は九十六階九十七階は無事だったが、だんだんと疲れが見え、そして九十八階、鬼華はシルフィー五体による連携攻撃に色々な箇所を斬られ特に右肩と両太股の傷は深く、残り一体の所で、傷の痛みから転びそうになり絶体絶命だったが、闘気技を使い何とか倒す事が出来た。今は立つこともできず地面に寝そべっている。
本来ガラドは打たれ強さをうりに、肉を切らして骨を断つタイプなので、一番攻撃を受け、見える部分全てがどす黒く染まっていて肋骨にひびが入り、あばら骨の何本かは折れていて、呼吸するのもやっとの状態。最後の攻撃は火事場の馬鹿力で、今はピクリとも動かず地面に突っ伏し、呼吸で体が上下し生きているのが分かるレベル。
クランツは九十七階辺りから逃げ回っていたので、一番傷が少なく、両腕両太股に少し切り傷ができ、軽い打撲が数か所ある程度で済んだが、ネール達からは役立たずのレッテルを貼られ、逃げ回った事により失望されていた。
最後にネールだが、九十八階ゴーレムの攻撃で右腕の骨が砕かれ、吹っ飛び壁に激突し、防御魔法を使わなかったら死んでいたかもしれないぐらいのダメージで、後頭部からは血がだらだらと落ち、意識が朦朧としながらも的確に魔法を放ち、今は最後の敵を倒すのを見届けた後、意識を手放した。
一時間程経過し、ネールは起きる。血を失い軽く貧血状態だったが。
「水よ癒しの性質に変化し、自身に浴びせよ」
水の治癒魔法で直し、その後鬼華とガラドに同じ魔法を放つ。
水魔法エンジェルウォーター:水の治癒魔法で傷や骨、打撲などの異常を直してくれるが、傷の度合いによって使う魔法量は変化する。
「俺も直してくれよ! さっきから痛くて仕方が無いんだ。フィアンセ貴方なら分かりでしょこの勇士の傷が」
クランツは騒いでいたがネール達は既にいない者として相談を行っていた。
「次の階はどうなのでしょうか、魔力の方も既に一割を切っていますしこれ以上多くなると対処しきれません」
「私も闘気量がそこを尽きかけておりまする」
「がはは俺もじゃわい、これはさすがに俺様様でもちとやばい」
「とりあえず九十九階の敵を見てみましょうか、それから決めた方が宜しいですね」
方針が決まりネール達は九十九階に移動する。九十九階に着くと尋常ではないプレッシャーを感じ、その時点でネール達は今までと違う敵だと感じる。
ネールが合図しガラドが恐る恐る扉を開け見た者は、身長百八十センチ銀色の毛並みを持った、ムーアエリア五十階のエリアボスを抜かして、最初のエリアで最強の敵、狼人が五体いる。
ソイドは戦いを見た事が無かったので四十階とよんでいたが、戦った後はアイテム等が揃っていれば四十五階までならいけるだろうと考えを改めたが、必ず四十六階で負けると思っており、何回もネール達の戦いを見ているソハネも同じ意見だった。
四十六階~四十九階に出てくるモンスターは一種類のみ……そう、狼人だけだった。
「無理だこんなの、俺達じゃあんな化け物倒せない。おっ俺は逃げるぞ。犬死には御免だ、お前等屑どもだけでやれ、さっフィアンセよ俺達だけで逃げま…がっ」
そこまでいった後、クランツは全員からの一撃でたやすく意識を手放し、三人で終わりの見えない作戦会議を始めた。