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FILE07:恋する乙女は無敵。
自分が今、どんな状況に置かれているのか全く知らないにも関わらず、
ニッコリと無垢に笑った黒髪の聖女様(男)。

いい歳こいた野郎の笑みなんて気持ち悪いだけだ。

なんて、

昔言ったこの言葉。

只今を持ちまして、私、ヤン・メリッサは撤回させて頂きます。




「可愛いかったなぁ〜聖女様…。まさに男の夢ってヤツ?」

「−…貴様、本当に頭大丈夫か?」

聖女との挨拶もそこそこに、「もう今日は遅いから帰れ。」と、何故か急に不機嫌になった王に促されたヤンとオルガは、黒髪の聖女の元気で明るい「また会おうな!」という声を背中に部屋を出た。

片方は極度のストレスからくる慢性疲労の為、
また片方は聖女との別れが名残惜しい為、
ダラダラと城の長い廊下をひたすら出口に向かって歩いていく。

それぞれの思いを心に抱え、無言で歩いていたヤンとオルガだが、やっと城から外への出口に差し掛かったときオルガが今まで二人が歩いてきた道を心底名残惜しげに振り返ると小さくぼやいた。

「…それにしても聖女様、声は女性にしては少し低いハスキーボイスだったけど…」

「それだけですむレベルか? あれは確実におと…」

「それはそれで見た目と中身の意外性があって良いよなぁ〜」

「…………。」

「ギャップ萌えってやつ?」

可愛らしく小首を小さく傾げながらヤンに意見を求めてくるオルガ。

いい年こいた野郎がそんなことしてもちっとも可愛くねぇよ。
むしろ死刑に値する行為だな。

と、そんな幼子のような動作をするオルガをヤンは冷めた目で見やると、未だ恋する乙女オーラ全快のオルガ一人廊下に残し、彼女はさっさと外へ通じる出口へと向かう。

カツカツと、城の廊下に敷き詰められた大理石からヤンが歩く音が凛々しく響いた。

「あ! ちょっ、待てよヤン! 俺を置いていくなよ、迷うだろ!」

すると、今迄恋する乙女オーラ全快でピンクの妄想にふけっていたオルガが、その音を聞くとハッと正気に戻り、慌てたように追いかけてくる。

「心配なら無用だ。私は迷わない。」

「いや、お前の心配じゃなくて俺の心配。」

「は?」

「俺、今ここが城のどこかわかんねぇもん」

「……………………。」

ヤンの隣にやっとのことで追いついたオルガはそういってエッヘン、と胸をはった。
そんなオルガの姿にヤンは思わず絶句する。
そして、一人機嫌良くヤンの隣でスキップし始めた彼女のただ一人の幼馴染にしてこの国の大尉の酷く色ボケした様にヤンは思わず片手で顔を覆うと天を仰いだ。

こんな顔だけがとりえの馬鹿が軍を纏める大尉なんて…。

この国の行き先が酷く心配になっていくヤンだった。




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