FILE27:青い思い出
何故か己の部屋でありながら、なんとも居ずらい重い雰囲気漂うこの部屋に、この部屋の主リオル・ラー・エクセルトは心底疲れたように溜息を吐いた。己の利き腕である右腕を妬みがましく見つめる。「これで政務の仕事がまた遅れる…」額に手をやり、先を思いやるリオル。怪我を作った原因に自分の不注意も関係しているかと思うと泣けてくる。
「もう、いい。…皆下がれ。」
暫く重い沈黙が続いたが、彼の言葉にホモリスを初めとした人物達は静かに退場した−…、と思いきや、退場したすぐ傍、ドア付近からヤンとホモリスの言い争いが聞こえる。
「全く私まで怒られて…」
「んなっ!元はと言えばあなたの弟…」
「ふん、貴様が変…」
「何ですって?!」
ムキー!と声高に叫ぶは、普段の彼とはあまりにも異なるこの国の宰相ホモリス・ルート・ダン。そんな彼の後ろではヤンの双子の弟、ユンとヨンの「「姉さま頑張ってぇ〜!」」というなんとも無責任な応援がドア向こう側で響いていた。
−…全く、賑やかな奴らだな…。
身体を軽く動かすたび、腕に走る鈍い痛み。
あっけなくベッドから落ち、折れてしまった己の利き腕でもある右腕に、この国の王、リオルは心内密かに嘆きながらリオルはヤレヤレと頭を振った。
聖女といい、北国の武力問題といい…、この国、イーシス国の王である彼には、これから片付けなければならない国の問題が山済みだ。
それなのに−…。リオルはがっくり肩を落とす。
「はぁ…。もう、勘弁してくれ…。」
一人残された広い部屋。この部屋がこんなにも広く感じるのは何年ぶりだろう…。
突然訪れた嵐が去り、跡に残されたあまりにも静か過ぎる静寂に、リオルは軽く戸惑いながらもフッ、と固く結ばれた唇を緩め笑った。
起きたばかりだというのに、何故か酷く疲れている己の身体をもう一度ベッドに深く寄りかからせると彼は、久々に訪れた休みを堪能するかのようにその世界で唯一つの宝石の如く美しい、柘榴石の瞳を閉じた。先程までは確かに聞こえなかった自然の声を聞く。
「−……、」
深い深い、闇の中で聞く、自然豊かなイーシス国が奏でる美しい自然の音楽。
この音色を聞くたびリオルはふと、昔を思い出す。
まだ王に成り立てで、右も左も解らなかったあの日…。
誰も信じられず、ただ一人殻に籠もっていた彼はある日、一人の少女に殴られる。
『−…病人が。さっさと寝床に戻れ。』
『お前……、』
彼だけしか、出口を、道を知らない筈の迷いの森、ヤミの森で出会った小さな少女は、どこまでも青い、青い、果てしない空のような−…、深い蒼穹の瞳を持つ少女だった。
−…全く。変わらないな…。
ふと目を閉じれば、まるで昨日の出来事のように思い出される己の過去に身を浸しながらリオルはゆっくり意識を深い闇へと沈めていった。
明日もまた忙しくなりそうだ。
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