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FILE26:不幸な朝
それは先程、あの“おねしょ事件”の犯人が判明した時点まで遡る。

「な、なんてっ!羨ましい所に貴方達は潜んで……、あ、いえ、なんでそんな所にいらっしゃるのですかっ?!」

ヤンの冷たいサファイアの瞳により、一瞬にして寝言を封じられたホモリスはゴホゴホと苦しげに口をもごつかせると、この国の王リオル・ラー・エクセルトが眠るベットの下から無理矢理ヤンの細腕により引っ張り出されて来た双子の兄弟、ユン・メリッサとヨン・メリッサを睨みやった。

「だって…、ねぇ?」
「うん、ねぇ?」
しかし、彼ら双子の兄弟は全く反省の色を見せない。
それどころか両手を上げ不服そうにホモリスを睨んでくる。
「ヤン姉さまに頼まれたんだもん。」
「ヤン姉さまに頼まれたの。」
「「どっかの変態宰相から王のミサ…」」
「ちょっと待て。私は起こすようには頼んでも、このような悪戯をするようにとは頼んだ覚えはないぞ?」
可愛く唇を尖らせブーブーこの国の宰相ホモリスに対して文句を言う小さな少年たちの姿。
そんな彼らの姿は可愛い。肉親から見た欲目を除いたとしてもヤンは、彼らが可愛いと信じている。このまま、小さな身体で精一杯毒を吐き、ホモリスを見事やり込む弟達の勇姿を拝見したかったヤンだったが、しかし、こんな小さい、見た目12歳くらいの少年たちが今、発しようとしたNGワードだけはいただけなかった。いったいどこで身に着けてきたのか…。その歳にして早朝から少年たちが口にするには少しキツイ言葉を封じ、ヤンはコツンと弟達の頭を叩いた。

「「-…ごめんなさい……。」」
どこかの馬鹿と違って彼ら子供は素直だ。
その大きくて青い、トパーズ色の瞳を潤ませヤンの細い腰に抱きついてくる。
「まぁ、いい。次回からは気を、」
「ちょっとお待ちなさい!!何故一般庶民の、しかもこんな幼子がっ!我が敬愛なる王の眠りを妨げる役をやらなければなたないのですか?!」
他の男どもには厳しくとも、つい身内の、しかも彼女の弟達のこととなると途端甘くなるヤン。多忙な両親の元で育ち、いつも一人寂しく、誰もいない家で幼初期を過ごして来彼女は、突然出来た家族、双子の弟たちが可愛くてしょうがないのだ。俗に言うブラコンである。

弟達のほうもまた、多忙な両親に代わり自分たちを大切に、しかし時には厳しく育ててくれた姉が大好きでしょうがない。俗に言うシスコンで…、彼ら姉弟の間では、何とも言えないうまい姉弟関係が釣り合っている。

故にヤンは、大好きな姉に叱られグスグスと泣く弟たちの頭を口では厳しい態度を取りながらも優しく撫でていた。「次回からは気をつけろよ?」と彼女が再度弟たちに注意を促し、この話はお開きになるか否かの真っ最中…、そんな時、この国の宰相、ホモリス・ルート・ダンの待ったが掛かった。

「何を言ってるんだホモリス。これでもユンとヨンは我ら敬愛なる王、リオル王の第一の騎士、クリオの従者だぞ?」
それに対しヤンはやや面倒気に返事を返す。

「それにこの事はそこにいる王様と第一の騎士クリオ様、じきじきにこの二人にやらせるようにとお決めになり、私が頼まれ、この愚弟二人に頼んだのだ。お前…聞いてないのか?」
「聞いてません。−…それに、私はその様な戯言信じませんっ!!」

キッ、とまるで男を寝取られ嫉妬する醜い女のようにめらめらと燃える赤茶色の瞳でヤン達を睨んでくるホモリス。

「そんなことを私に言われてもな…。」
「うわぁ〜、悲惨…」
「うわぁ〜、哀れ…」

王の起こし役をいつのまにか首にされてしまった上、そのことを王から聞かされていなかったというこの国の宰相ホモリスの、なんとも鬼気迫る顔にヤンは思わず手で顔を覆った。そんな彼女の直ぐ隣では姉に慰められ、見事復活を果たした彼女の弟、ユンとヨンがそれぞれ思う宰相への見解を述べていた。

「…私は決して信じません。私の、私だけの、敬愛なる王リオル様が、まさかこの私、ホモリス・ルート・ダンを!“起こし役”から除外なさるわけないではありませんかっ?!そうでしょっ?!」
「お前の中のどこにそんな自信が眠っているのか…、前から不思議でたまらない、ってホモリスっ?!貴様いったい何をす?!」

「こうなったら陛下から直接聞くまでです!!」
「まっ、待てホモリスっ!もしこいつがいきなり起きたら…」

この状況にびっくりするだろ?と、ヤンが言葉を紡ごうとしたときは既に遅し。
あまりのショックで我を失ったホモリスはヤンが開発した“目覚め薬”を用いてこの国の王、リオル・ラー・エクセルトを起こしていた。

彼のどこまでも透き通った紅色の美しい瞳が、長い蝶のような睫毛を震わし姿を見せ、己の直ぐ顔前にいるホモリスを写す。

「なっ−…なぁぁぁあああああ??!!」

その瞬間、彼の低い絶叫が城中に響き渡り、ドサッと何かが地に落ちる効果音と、ポキと何かが折れた軽い音が共に聞こえた。

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