FILE25:怪我の理由
午前の激しい雷雨が過ぎ去った午後。
穏やかな緑の風に吹かれ、雨に濡れた草木達がクスクスと己についた雫を弾きながら楽しげに笑った。鳥達が歌い、花が鼓舞し、虫たちが美しい音色を草木と共に奏でる。
そんな…、自然豊かなイーシス国の午後。
しかし、そんな外に広がる美しい景色に反し、ここ、イーシス国現国王リオル・ラー・エクセルトが住まうオシリスの宮殿内部では今、深刻な空気が流れていた。
「−…俺が眠っている間にそんなことが…。」
ふぅ、とその歳にしてやけに老練した重いため息を吐いた王は頭を抱えた。
そんな彼の脇では未だこの国の宰相ホモリスと、この国一番の腕を誇る薬師の娘ヤンが互いに互いを睨み合っていた。いまにも小煩い口論が始まりそうな雰囲気だ。
「まぁ、いい。しかし、もしもまたこのようなフザケタことがあったら…。どうなるか解っているだろうな?」
しかし、彼らの喧嘩は決して始まることは無かった。
いつにも増して不機嫌な王、リオル・ラー・エクサルトが放った威厳ある一言により、彼らはただ口をキツク結び彼の言葉に対しゆっくりと肯定する事しか許されなかったのだ。
この部屋全体に漂う冷たく重い空気に促されるかのように、ヤンとホモリスは渋々互いに手を差し出すと軽く握手する。表面上、二人はニコニコと親しげな(胡散臭い)笑みを見せ「私の愚弟共が貴殿にご迷惑をおかけしてしまったようで…。よけいな心配を掛けた。悪かったな、ホモリス。」「いえいえ、私こそ早朝からヤン殿の屋敷になんの知らせもせぬままお伺いしてしまい本当に申し訳ありませんでした。」口だけの誤りの言葉を吐き出す。
「お前たちは…、全く…。」
ベーと、リオルが目を放した隙を見てはまるで小さな幼子のような喧嘩をしている二人の様子に彼は呆れながらゆっくりとその身をベッドから起こした。
途端、今まで喧嘩していたはずの二人が大慌てて彼に近づき声を揃え彼を厳しく非難する。
「陛下っ!いけません、今日一日は絶対安静とそこの薬師に言われたではありませんか!」
「リオル!病人は大人しく寝て置け。」
息荒く、声高にリオルを責め、ベットへと彼を押し戻そうとする二人に対し、リオルはフンと鼻で笑うとズイッと己の利き腕を彼らの前にと差し出した。
「-…お前たちな…。この怪我はいったいどこの、誰のお陰で出来たと思うんだ…?」
「「-………。」」
かなり据わった王、リオルの血に餓えた紅い瞳で見られた二人は気まずげに黙りこむと視線をスイと彼の腕からそらした。
彼らの前にグイと差し出された王の右腕。
その腕にはいつの間にか怪我したのか…、グルグルと厚く巻かれた白い包帯がくっきりと見えた。
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