ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
FILE19:道なき道

「あぁ、いけない、いけない。私としたことがつい、楽しさのあまり子供のようにはしゃぎすぎてしまったではないか。なんと、恥ずかしい。」

「子供どころでは無−…、いえ、すみません。何でもありません。」

ニコリ、と異常なほど爽やかな笑顔でヤンに微笑みかけられたホモリスはいそいそと頭を下げた。

聞こえたのだ。
彼は。
ヤンの言葉にするにもおぞましい裏音声を。
そのご令嬢の如き甘い微笑から。


コツコツ、と互いに無言。
片方は酷く晴れやかな笑みを、片方は酷くやつれきった病人顔を、浮かせ歩くは絢爛豪華な宮廷内。

そう、二人は今、この国の王が住まう王宮に居た。

ホモリスを思う存分、気の向くまま、締め上げたヤンは何故か自分の顔を見てはブルブルと震え怯える幼い兄弟達の姿にキョトン、と首を不思議そうに捻ったものの、“彼らはきっと疲れているのだろう”という結論を経て、患者及び客間用ベットにそのまま寝かしてきた。

きっと明日になれば彼らも元気になっていることだろう。


暫くホモリスの後を追うようにヤンは早朝の城内を歩く。
歩く、歩く−…歩く…。


「おい、ホモリス。お前は一体、私をどこに連れて行くつもりだ?」

思わず口から乱れた息と共に零れる疑問。
歩けど歩けど、いつまでたっても目的地にたどり着けない…、それどころか、奥へ奥へと進んでいく度、何やら道が無くなっていくこの先の道のりにヤンはいやな予感を覚える。


「まぁまぁ、もう直ぐでつきますので後暫しのご辛抱を。」

先程何回かのやりとりで繰り返された言葉を更にもう一度繰り返しながらホモリスは、腰から下げた剣を抜き、「アハハハッ」と、壁を伝い道を塞ぐかのように高い天井からたれた太いツタをバッサバッサと切り捨て前を歩く。

そんな彼の姿にヤンは不安を隠せない。


−…まさか…、コイツも方向音痴、なんてオチはないだろうな…。

ヤンの昔からの幼馴染であり、この国の大尉でもある彼の、無駄に整った顔を思い出しながら彼女はホモリスへの疑いを隠せない。

「フフフン」、鼻歌を歌いながらヤンの前を軽快な足取りで歩く彼の姿を胡散臭そうに睨みながら、それでも彼女は彼の後に続く。


だいたい何故煌びやかな城の中だというのに、いつのまにか私達はも昔の遺跡のような古ぼけた場所にいるのだろうか…。

謎である。


全くの人気がない道なき道を彼らは歩き続け、そしてようやく、なにやら見覚えのある道に出た。


−…長かった。

「はいはい、あと少しですから頑張ってください。」

グッタリと、壁に手をつき疲れた身体を休めようとしたヤンの背を押し前へ前へと強引に推し進めるホモリス。

「くっ、貴様っ!もしかしてコレは私へのリベンジか?!」
「えっ?何のことですか?」

最近とある新薬開発のため、ずっと引きこもりの生活を送っていた上、昨夜から全く睡眠をとっていない彼女はもはや立っているのもやっとだった。

そんな彼女のフラフラな身体をやや引きずられるかのように強引に前へと歩かせるこのホモリスの行為(彼なりの善意)は、もはや彼女にとって今、最高の嫌がらせだ。

たとえその行為にきちんとした意図が無くとも。


「全く、いったいどこへ私を−…って、」

時々意識が飛ぶ自分の身体の限界をヒシヒシと肌で感じながらヤンは、その先にあるものを見、心底いやそうに顔を引きつらせた。

とても、見覚えがある道である。


「おい、ホモリスここは…」
「はい。王の寝室へと続く道でございます。」

なんの迷いも戸惑いも無しにペロリと口にしたホモリス。
しかし、その答えはあまりにもありえない答えだった。というよりも、あまりにも聞きたくない答えだった。

お気に召しましたらクリック願います→cont_access.php?citi_cont_id=706007759&size=200


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。