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FILE09:瞳の先に。
現在イーシス国は極度の緊張状態にある。

隣国のウェス国は現在百年前に絶対王政が倒れたことで今では共和制になり、民衆の手自らで政治を行っている。その為、今も王政を執っているイーシス国がウェス国にとっては酷く目障りでしょうがないのだ。

常に隣国でありながらウェス国はイーシス国に対し、アレコレと政治内容、さしては年若き王についてアレコレといちゃもんをつけてはイーシス国自体を批判してくるのが常だった。

故に、王を敬愛するイーシス国の民たちにとって彼ら、ウェス国の人たちはあまり良き存在ではない。おそらくイーシス国とウェス国では全く国民性が異なるのだろう。ウェス国のものがイーシスに、又はイーシス国のものがウェス国に商業に行った者達が互いの異国の地で小さないざこざを起こし、青あざを作って帰ってくるものが両国の間では常だった。

また、イーシス国の肥沃な大地と温暖な気候を恨み、イーシス国の上に位置するノース国はこの春から夏にかけての時期にかけて何かとイーシス国にちょっかいを出してくるし、イーシス国の下に位置するサウリア国は信仰する宗教の違いからイーシス国は異端国として忌み嫌われている。


まぁ、そんなわけで現在…、
というよりもずっとずっと昔から、隣国同士との愛称に恵まれなかったイーシス国は常に緊張状態にあった。

しかも最近ではノース国の王が代替わり、新しい王が立ったという情報が隣国に放った数多くあるスパイの中から入ったのだ。

前の王は比較的穏やかな性格をしてくれていおかげでノース国との戦争は何とか避けられたがもし今度即位したと言う新しい王が残虐な性格をしていたとしたら…。


この地は再び血に染まるだろう。





故に、この国最大の明るいニュースで、とてもおめでたいまるで奇跡のような“伝説の聖女誕生”の知らせは人々の最後の希望なのだ、願いなのだ、平和への。


争いが好きなものなど、
大切な者達が死に行く世界を望むものなど、

本当は誰もいないのだから。




故に、聖女であるトールとこの国、イーシス国の王であるリオルの結婚を急がせなくてはならない。


黒髪の聖女は、王と共にあることでより大きな価値が生まれるのだから。





陰干しにした薬草を今までにない丁寧な仕種で拾い上げてゆきながらヤンは北の空を仰いだ。

彼女の燃えるように赤い、栗毛色の髪が風と戯れ、野薔薇のように緑生い茂る森に広がり咲く。

まるで空の青さを飲み込んでしまったかのごとく美しい青色の瞳が一瞬、悲しげに揺れた。


その瞳はまるで、これから起こる事を全て知っているかのように深い、深い、


悲しみの色をしていた。




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