FILE08:友。
「−…で?、貴方様はいったいどうなさるおつもりですか、我が敬愛なる王よ?」
黒髪の聖女と会った次の日、ヤンは密かに王に城へと呼び出された。
一般庶民では決して目にしたことも、ましてや触れたことも無いといった豪華で美しい巧み細工が施された家具が、料理が、ズラリとまるで彼女のご機嫌でもとるかのように並んでいる。
「…リオルで良い。」
「なら、リオル。率直に言う。お前はあの聖女とやらをいったいどうするつもりなんだ?」
「どう…する、とわ?」
互いに向き合うように座り、相手の出方を伺っていた王とヤンだったが、そのうち痺れを切らしたヤンが身分不相応にも先に口を開いた。
その上、この国一国の王に向かって「お前」呼びだ。
もし彼以外の人がいたならばヤンは即不敬罪として首を切られていただろう。
が、しかし幸いにもこの部屋には王とヤンの二人しかいない為、その様な血なまぐさい事件は起こらなかった。
「とぼけんなさんな、このど阿呆が。この私が何も知らないとでも思ったか?」
「むっ!」
「それは残念だったなリオル。−…しかし、お前も相変わらずオメデタイ頭の持ち主だな。脳みそちゃんと詰まってるか? 夜中に耳から変な汁とか出てないか?」
「なっ!、ヤンお前少し言葉が過ぎ…」
「イーシス国憲法百九十八条、古の神々との規定により、オシリスとイシスの愛し子、黒髪のホルスがこの地に降臨せしとき、王は汝が持つ命の限りその者を守り、愛せよ。」
「グッ…」
「−…まぁ、つまりはあの黒髪の聖女様、トールと結婚しなさいって、王であるお前に言ってるようなもんだな。」
「うわぁ!!もう言うな、頼むからもう…」
「お前の友としておめでとうといってあげよう。」
「いわんで宜しい!!」
真っ青な顔で自分にうろたえ叫ぶこの国の王、リオルの情けない姿にヤンは心底面白そうに笑った。
普段、その彼のいる絶対的地位から、人に威張り腐った顔で(歪んだヤン目線から)上から目線で命令してくる野郎ども(大臣や役人)の親玉(王)を、このようにコケにして馬鹿にすることが出来るのが自分だけだと思うと…。
もはや、ヤンにとって、彼を言葉攻めにして虐めるという行為はものすごい快感だった。
「クッ、クック…。別にお前が心配することなど何も無いじゃないか。」
思わず隠しても隠し切れない歪んだ笑みがヤンのわりと整った顔に零れた。
「んな凶悪面で笑いながら自分はいかにも心配しているんです、って言葉を吐くなっ!」
「何をそんなに嫌がってるんだ? いいじゃないか絶世の美女だぞ? あ、いや美男子か?」
「美人か不細工か関係あるか! 嫌がるも何も、…私とあいつは男同士だ!」
「−…男同士でも夜伽は出来るぞ? 子供は出来んがな。」
「なっ!お前っ、破廉恥なっ!」
あれ?今自分うまい事言ったんじゃね?的に得意顔になったヤンとは間逆に王は真っ赤に顔を染めている。
そんな彼のウブな反応に気をさらによくしたヤンは更に酷い言葉を彼にあびせた。
「それにあの聖女…、トールだったか?の見た目なら問題ないだろ。口を開かない限り女で通る。」
「おいっ!」
「このままあいつを女で通し、結婚でも何でも早くしろ。子供なんてもの出来なくてもお前の姉上であるリーシャ様から養子を取ればいいだろ。なにも問題無いではないか。」
「−……………。」
無情で冷たく、
それでいて的を得ているヤンの台詞にやりこまれた、この国の王リオルは、このほんのひと時の会話で翌日から悪夢にうなされるようになったと言う。
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