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カーテン

作者:龍守炎魔
少々改稿しました。
流れは変わっていません。
 この間席替えをした。
 ラッキーな事に窓際で、先生の視界にも入りづらいカーテンの近くだった。
 まぁ俺は自分なりに真面目に授業も受けてるつもりだから、居眠りとか怒られるような事をするつもりはない。
 それでも時折眠気に負けて気付いたら寝てた。なんて事もあったけど、故意ではないんだ。
 勿論その時は今の席じゃなくて先生に見つかって怒られたんだけどな。
 でもあの先生も悪いと思うんだよ。なんかこう催眠音響というか、眠気が凄く誘われる感じなんだよ。
 その上昼休み後の授業だぜ?
 満腹感+催眠音響だ。俺の眠気も分かってくれって感じで……あ、すまん脱線しちゃったな。

 話を戻すな。席替えの話だ。
 さっきも言ったけど幸運なことに気配が悟られ難い席なんだ。
 まずカーテンが俺の左前方にある。うちの学校はカーテンがついてる学校なんだ。
 そんでそれが生地が厚くて結構大きいのな。まぁ教室の大きな窓を覆う為にあるんだから大きいのは当然なんだけど。
 だから、収めてても結構膨れてくれるのよ。
 勿論人が見えないぐらい膨れるわけじゃない。けどその膨れた部分に俺が少し遮られるぐらいにはあるわけよ。
 更にこの席は教壇から見て右端にはあるが、最前列でも最後列でも真ん中でもない。そういう中途半端な位置にある。

 大きなポイントとしては二つ。
 一つ、カーテンを収めてる時に限られるがある程度俺の姿が遮られている。
 二つ、端ではあるが最前列でもなく最後列でもなく真ん中より後ろ。
 この二つの条件で俺は存在が気取られ難い。そう思っている。
 勿論、堂々と机に伏せて居眠りとかしたら速攻ばれるだろうし。
 そういう不真面目な生徒だと先生にマークされていたらこんな席も無意味になっちゃうけどな。
 説明が長くなったけど、俺はそういう席に引っ越すことになったわけだ。

 うちの学校は三学期制で、席替えを学期の前半と後半でやる形。
 三学期は席替えなしになっちゃう。テストで区切ってるからさ。
 今は一学期後半。中間テストの成績は親に普通に見せることが出来るぐらいだった。
 まぁ俺の成績はどうでもいいんだ。俺が話したいことはこれから暑くなっていくこの時期にこの席は良い席なんじゃないかという話だ。
 クーラーがないこの教室で窓の近くというのはラッキーかもしれない。勿論日差しが一番きつそうだが、窓は南側で日差しがきつい時は教室全体に降り注ぐ筈だ。それなら風の一等席になるであろうここは良い席……だといいなぁ。
 クーラーを設置するかもしれないという話もあるので、とりあえず今はそれに期待しつつこの席を堪能しよう。
 目立ちにくい(であろう)、風も一番吹いてくる(筈)、授業に集中出来ない時は校庭を見下ろして気分転換できる。うん、きっといい席だ。

 そんな席に引っ越して一週間が経った。
 ここの居心地はある一点を除けば、悪くはない。
 今は梅雨入り前で、少々じめじめするが窓を開ければ少しはましだ。
 ただ花粉症のクラスメイトがいて、今の時期にも花粉は飛んでいるらしくそれについて申し訳なく思って謝ったんだがじめじめするのは同じ思いみたいで辟易していたらしく大丈夫だよと言ってくれた。翌日からはマスクをつけていたので、じめじめしたら開けさせてもらっている。

 授業に関しても問題ない。
 居眠りは……実は一回だけしてしまった。例の催眠音響な先生の授業で、我慢出来なくて思わず突っ伏してしまったんだ。
 10分ぐらい寝てしまったと思うんだけど、俺の見立て通りだったのか見つかって怒られることはなかった。
 ただ、まぁ罪悪感はあるのでやっぱり寝ないように気を付けて頑張りたいと思う。

 さて、問題の一点だけど。それがカーテンなんだ。
 カーテンの恩恵は結構あった。日差しがきつい時があって、その時はカーテンを広げて日光を防いだし。先も言ったように居眠りを隠してくれたんじゃなかろうかと思ってる。
 ただ、何か気配を感じるんだ。
 実際に気配を感じるって言うと「どこのつわものだよ」とか言われそうだけど。
 後ろから誰か来るとか。蚊が飛んでるとか。または親が帰って来たとか。今日はカレーだなとか。
 五感で何となくだけど察することはあるだろ?俺が言ってる気配っていうのはそういうやつだ。
 この気配を感じる時、視覚で感じる場合は目の前に見える範囲じゃなくて視界のぎりぎり隅とか意識してない中で動いてるものを感じてるんだと思うんだ。

 最初その気配を覚えたのは視覚からだったと思う。
 カーテンを収めてる状態の時に、陰になっている部分で何か動いたように見えたんだ。
 「ん?」と思ってそっちを見たんだけど何もない。気のせいかと思ってその時はスルーした。
 けれど、それから度々その気配を感じるようになったんだ。
 流石に何回もそんな事があったから、気配があった所を凝視したり待ってみたりしたんだけど。何かが見えたり出てくることもなかった。
 ただ、こういうのは皆も同じような経験はないだろうか。そう例の夏場に出てくる奴でだ。
 一度見て、逃してしまったり。また退治しても同じようなパターンで出てくることがあるからだ。
 だからまぁ気にしすぎかなとも思った。あと、念のためにカーテンを広げて確かめてもみた。アレが出てきそうで凄く嫌で恐る恐るだったけど、何もなかったし出てこなかった。
 幸いでもあったけれど、その時から既に不気味なものを覚えて寒気を感じていた。この頃から俺のノイローゼの兆候は出ていたんだろう。

 そんな気配を気にしないようにしつつ一週間は過ぎて、席替えから一ヶ月が経った。
 そろそろ期末テスト、そんな時期に俺はノイローゼになっていた。
 相も変わらず気配を感じていたのだ。
 先に説明したように気配を感じるのは五感で、様々な兆候を察して覚えるのだが最初の一週間は視覚でだけだった。
 けれど、日に日に音でも察知するようになった。音の種類は色々だった。それこそ虫が「カサカサ」と這うようにもまたはカーテンと擦れるような音のように聞こえたことがあった。
 または声のようなものが聞こえたこともあった。カーテンの方から「ァァ……」と呻くように、他にも何か言っているような「……ィョ」とか。
 もうここまで言ってて自分の耳がおかしいと本気で思う。だから席の近くのクラスメイトにも聞いたんだ。「カーテンの方から音が聞こえないか?」って。
 返答は「聞こえない」だった。注意してもらったり、俺が聞こえた時にも聞いてみたが答えは相変わらずで訝しげに見られた。
 俺はカーテンから感じる気配に追い詰められてノイローゼになってきている。

 この席に引っ越してから気配に悩まされ続けている。自分はこんなに神経過敏な奴だったろうか。
 ノイローゼと自覚出来る程になって、そうして気配は視覚、聴覚、続けて嗅覚と来た。
 この匂いも音と同じで色々な匂いを感じた。
 最初はそれこそ異臭だったろうか。変な何とも言えない、少なくとも不快な匂いがすると思ってどこからだと探して見たらカーテンからだった。
 別の匂いでは癖があってでも気になって何度も嗅ぎたくなるような匂い。知らずに何度も嗅いでいて、はっと気づいて言い知れぬ気持ち悪さにえづいた。
 吐きそうな臭い匂い、これは実際に吐いてしまった。周りの席の皆には迷惑をかけてしまった……。
 そして、甘くていい匂いがするなと思って目で追ってみたらまたカーテンで愕然として声に出して泣いた。

 期末テストが終わった。まだ返ってきてないけど、結果は散々だ。
 ノイローゼが悪化してるのが自分でも分かる。友達もクラスメイトも心配してくれている。
 そこまで酷いならなるだけ席から離れれば、と皆思うだろう。
 だけど、席からなるべく離れていてもどうしてもカーテンの方が気になってしまうんだ。
 はっと何かに気付いてしまって、そっちを見るとあのカーテンだった。こんな事が席から離れてるだけでずっとあるんだ。寧ろ、離席してると余計に気になって気持ち悪くなる。
 本当に俺はどうしてしまったんだろう。今ではずっと席に座っている。そして気配を感じるカーテンの隙間を凝視してばかりだ。
 そうそう、視覚、聴覚、嗅覚と来て今度は触覚の出番だった。
 あのカーテンの隙間の奥に何かがいる感触がする。

 触覚で感じる気配というのは、誰かに髪や肌にそっと手を近づけてもらったりしたら分かるだろうか。物の圧力のようなものを感じる、それが触覚での気配だと思う。
 だけどこれはよほど近づけなければ感じるものではないだろう。
 もしくはそれが大きなものだったりすればだろうか。
 だが、あのカーテンも大きいほうではあるが俺が感じてる気配はカーテンそのものではないし。また、カーテンに隠れてるにしても、隠れられるサイズで感じるにはおかしすぎる。
 やっぱり俺がおかしくなったんだろうか。家に帰ってもこのカーテンの隙間がずっと脳裏に過ってしまう。
 もうすぐ夏休みだ。夏休みに入ってもこんな調子な様だったら親に相談して病院にでも連れて行ってもらおう。
 それに近頃妙に涎が口の中に出てくる。ノイローゼの症状だろうか。

 そして、散々な結果のテストが返却され夏休みまでのカウントダウンも過ぎていった。
 終業式をして、教室で先生から夏休みに向けての諸注意をされた。
 友達や皆に夏休みの間に元気になれよと激励されて、皆は各々帰途についていった。
 俺はまだ帰っていない。どうしても、どうしてもあのカーテンの隙間が気になっている。
 涎が口の中一杯で溢れそうになる。なんだか、その原因があの不気味なカーテンの隙間の奥にある予感がする。
 だから俺は皆が帰ったのを待っていた。皆が帰った。もう、我慢しなくて、いい。
 ガタガタとぎこちなく立ち上がる。体がいいように動かない。
 震える手がカーテンの隙間に伸びていく。
 確信がある。このカーテンの隙間にあるものは……。



 夏休みが明けた中学校で先生からクラスに一つの報告がされた。
 クラスメイトの男子生徒が一人行方不明になった、と。
 男子生徒は終業式にも出ていたが、家に帰ってこなかったらしい。
 クラスの中で男子生徒に親交があったものには夏休みの間に先生や大人、警察などにも行方を知らないかと聞かれたりしたのでこの事件についてはクラスの大半が実は知っていた。
 そして、その男子生徒がノイローゼになっていたことも。
 彼がずっと席の近くのカーテンを気にしていたことを。
 結局これは夏休みの間ずっと彼は探されていたが見つからなかったという事後報告だった。

 カーテンの近くの席は空いたままになっている。
 行方不明になった彼の席だ。
 新学期になって席替えをしたが、その席は避けられていた。
 彼があそこの席に引っ越してから、カーテンを気にしだしおかしくなったからだ。
 だけど、以前そこに座っていた生徒はカーテンが気にならなかったし変なこともなかったと言っている。だからこそ、何故なんだろうと気にする生徒は当然出てきた。
 そして気になった生徒達が調べ始めた。

 席には勿論何もない。何も感じない。痕跡のようなものもなかった。
 本命はやはりカーテンだろう。
 恐る恐る触れ、広げてみた。
 別段何もないカーテンだ。あ、けれど破れている。ちょっと目立つが、小さな隙間・・だ。人差し指と中指で広げられるぐらいだろうか。
 裏返したり、カーテンを持ち上げてみたり、振って叩いても見たが何もない。
 壁にも何もなかった。
 彼に何があったんだろうな、と残念そうに言いながら生徒達はカーテンを戻した。
 そして、一人が気づいた。
 あの小さな隙間の奥にこれまた小さいが文字が見えることを。
 その一人は何だろうとそれを覗いてしまった。
 赤いボールペンで書かれたんだろうか、その小さい文字は



 オイシイ

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