暗躍
あるところに、小さな家に住む少女がおりました。
ある日の夜、その少女は窓の外を見てあることを思いつき、窓を開けました。
「崖さんに登りたいな」
月の昇る山を見ながら言いました。
少女は何に憧れているのか、何を考えているのかわからない子。だから、親からも見放されてしまい、今は家に一人。
鍵っ子だとバカにされるならまだましだけど、家に一人置いていかれた子。街に下りればそうバカにされてしまう。
だから少女は言いたかったのでしょうか。
少女は窓から乗り出す事をやめて、窓を閉めます。そして、足を進めます。
窓枠がつくる影を見ながら少女はドアに向かい、家を見渡しました。
「行ってきます」
元気よく言っている様にも聞こえますが、少女は心が元気ではありません。
少女は駆け出しました。
大きな原っぱに月明かり。その下で。
それ以来少女を見たものはいませんでした。その代わり、狼をたまに見かけるようになりました。
初めての童話。