憧れ〜自分らしく生きることの難しさ〜縦書き表示RDF


憧れ〜自分らしく生きることの難しさ〜
作:片桐 彩華


階段を上がって左側にある茶色いドア。
目線より少し下の位置に下げてある白いプレートには、『マコト』と青い文字で書かれている。
装飾は特にない、シンプルなものだ。

指でなぞれば、それは浮き彫りであることが分かる。
小さくため息をつき、ドアの前の青年――タクミはノックをしてからそれを開けた。

「…マコト」

真っ先に視界に入るのはある人物のポスター。
一カ所だけでなく、まるで壁を埋め尽くすかのように何枚も画鋲で止められている。
棚やベッドには同じ人物のぬいぐるみが所狭しと置かれている。

そんな部屋の中心に座りテレビを観ている黒髪の少年。
この空間の主である彼は自身を呼ぶ声に反応し、頭だけ動かしてタクミを見た。

「タク兄、勝手に入るなよ」

「勝手じゃない。ノックしただろ」

「返事してない。許可なく入んなっての」

そうは言うが、特に怒るでもなくマコトは視線をテレビに戻した。
そこに映るのは、やはり室内を占領している顔で。
タクミは二度目のため息をつき、マコトの隣に座る。

「なぁ、いい加減学校に行ったらどうだ?」

「嫌だ」

短く早く否定の言葉を吐かれ、三度目のため息。わかってはいたが、タクミに引く気はなかった。

マコトは今年で十七歳を迎える。
だが高校に行かず、一日の殆どをこの部屋で過ごす。ひきこもり、というものだった。
タクミにはその原因が分かっていた。
だからこそ今もこうしてマコトを説得しに来たのだ。

「…何がいいんだ。ソレ」

タクミが言う『ソレ』とは、マコトが好きな人物のことだ。

「解んない?…カッコいいんだよ、彼。
強くて、頭もいいし何より孤独を愛するその姿勢や生き様がいい」

「仲間がいるじゃないか。常に周りには誰かいるし、人気者だろ?」「違う違う!それはただ利用するためにそう振る舞ってるだけ。
便利な道具ってワケ」

目を輝かせ、多少興奮しながら語るマコトの話を右から左へ流す。


―――このままじゃコイツは駄目になる。


弟として、一人の人間としてマコトを心配しているタクミは、何かを決心したかのように頷き立ち上がった。
急に立ったタクミをマコトはキョトンとした顔で見上げた。

にっこりと一見爽やかな笑みを浮かべている。
が、次の一言にマコトは固まった。








「はい、撤去しまーす」








タクミは何処からかゴミ袋を取り出すと、ベッドの上のぬいぐるみを入れ始めた。

「ぎゃあぁああぁっ?!何してんのぉぉおぉっ??!!」

「うるさい!こんなもんがあるから駄目になるんだっ!」

「だめぇーっ!それはゲーセンで6400円かけて捕った限定品なんだよぉ!!」

「何だその半端な金額!」
半泣きで必死に止めるマコトを払いながら、タクミは手を止めようとはしない。
あっという間にベッドからぬいぐるみはなくなった。
次は棚の上と中。

「やめてよぉ!僕、学校いくからっ!」

「前もそう言って行かなかった。信用できん」

棚の上を片付け、中に手を伸ばす。
その鮮やかな手つきを止める術は最早なく、CDやらDVDやらを捨てていく。
ちなみに、タクミは『法律は破るためにある』というひん曲がった思考があるので、ゴミの分別はしません。
しかし、落とし物は警察に届けるという心優しい青年なのです。
昨日、彼は拾った財布を電車で五駅目にある警察庁まで届けました。
親切な上に丁寧ですね。

そんな優しいタクミは、涙を浮かべるマコトを見て少し哀れに思った。
いくら弟の為とはいえ、胸が痛んで仕方がない。

「タク兄……ねぇ、やめてよ…。僕、彼に救われたんだ。彼がいなかったら、今の僕はいないんだよ」

ひっく、としゃくりながらマコトは呟く。

「辛いとき、思い出すんだ、彼の歌を…。それだけで元気に、なれて、だから……大切、なんだ」

「……マコト」

「だから、タク兄……















アン○゜ンマンを捨てないで!」

「…お前は一体いくつだ?なぁ、園児レベルだぞ」

「関係ないよ!愛に年の差が関係ないのと同じだよ!愛と勇気だけが友達とか、人間(?)不信もいいとこだけどそれでも強く生きる彼はホントかっこいい!!ドブに落とした千円札を洗って干してなんとか使おうとしてる人ぐらい!!」

「どんな例えだよ!どこにカッコ良さがあるのかわかんねーよ!ってか見たことあんのかそんな人」

「いやー、二日前にうっかり落としちゃって。
あ、コレなんだけどさ」

ひらり、とタクミの目の前に所々破れてしわくちゃな千円札が現れた。

「お前のことかよ!自画自賛じゃねーか!
ってかクサッ!地味に臭うぞコレ!」

「でもちゃんと洗ったし綺麗だよ」

「そう思うならその人差し指と親指だけで持つのやめろよ!
心なしか夏目漱石が泣き顔に見えるよ!」


その後30分激しい言い合いをした結果、父親の財布の千円札と交換する方向で解決した。
互いに疲れたらしく、息があがっている。
そして目が合うとどちらともなく笑った。

「あー、なんかもういいや。マコト、学校行かなくてもいいぞ」

「タク兄……」

「無理して行ってもしょうがないしな。学校が全てじゃ……」

「僕、学校行くよ」

タクミの言葉を遮ってマコトが口を開く。
その内容にタクミは目を丸くした。

「え、いや、でも……」

「僕はア○パンマンみたいにカッコよく生きてみたいと思ってた。でも、僕には無理だって諦めてた。」

「マコト……」

「今なら、出来る気がするんだ。彼みたいに周りを利用しながら、悪(というか自分に害を及ぼす存在)と戦って、愛と勇気だけを友達に生きるよ」

マコトが輝かしい笑みで宣言する。
その周りによく少女漫画で目にする丸い浮遊物体が見えるくらい。

「そうか、俺は嬉しいぞ。だけどアンパ○マンの話はもう止めような。
全国のチビッコに悪いし、や○せさんに訴えられたら勝ち目ないからな」

「?うん、わかった」

「よし、じゃあ明日から学校だな。お祝いに今晩は回転寿司に行こうか」

「わぁい、回転寿司大好きー!ずっと誰も取らないでカピカピになったネタとか最高に不味いよね!」

「あぁ、取るのはいいけど俺に食わせるなよ?
お前気づけば俺の新鮮なネタと取り替えてるからな」

「大丈夫!任せて!!」

マコトの微妙な受け答えに苦笑しつつも、タクミは喜びを感じていた。
弟思いの優しい優しいお兄ちゃんである。








次の日。
昨日食べた寿司の味と食感が忘れられないまま、タクミは苺ジャムを塗ったトーストをおかずに白米を食べていた。

「アイツ、結局ネタ取り替えしやがって……新鮮なの一個も食えなかった」

ブツブツ言っていると、階段を降りてくる足音がする。
それはタクミのいるリビングにどんどん近付いていき、陽気な声と共に姿を現した。

「タク兄!おはよう!」

「あぁ、おはようぇえっ!?」

タクミは思わず口にしていたトーストを握り潰してしまった。
手がベトベトするとか、トースト勿体ねぇとか、それどころではない。

視界に入った実弟マコトの姿は、先程までの気分や朝の眠気を吹き飛ばした。

「どう?僕カッコいい?似合ってる??」

「マコト、それで学校行く気か?」

「ふふ、勿論だよ。これで町往く人もクラスメートも僕に釘付けさ」

あぁ、そうだろうな。
下手すりゃ某青い制服の方達にも目を付けられるだろうな。















なんで○ンパンマン着ちゃってるんだよ。
しかもサイズ合ってないし。ピチピチでへそ見えてるし、上も下も七分になっちゃってるよ。
頭どーしたの?
髪の毛どーしちゃったの?
昨日までフサフサだったじゃん。
鼻のそれ、ピエロ?
ねぇ、ねぇえ。



「じゃ、行ってきます!」



本当に、何の戸惑いもなく玄関を出ていくマコトを、タクミは生温い眼差しを持って見送ることしか出来なかった。

「…はは、学生カバン不釣り合いだな」





それから、マコトがどうなったのかタクミは知らない。
だが、その日以来マコトはいつも眩しい笑顔であの服を着て学校に通っているのだった。



余談だが、最近タクミは部屋の荷物をまとめているとか。


くだらなくてすみません!無駄にセリフ多いは、ワケがわからんは、ぐだぐだ感たっぷりです。この場で謝罪させてください。本当にすみません。考えるのは楽しいですが、ギャグを書くのは苦手かもしれません…。こんなでも読んでいただきありがとうございました!













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう