その日は、大阪での初雪が降っていた
―1月下旬
和葉は平次の部屋でごろごろしていた
平次が、事件の調査で出て行ってしまったのだ
和葉は、少しむっとしながらも笑顔で送り出した
平次・・キラキラしてたんやもん
「止められるわけないやろ?」
何回も謝った平次
けど、やっぱりキラキラしてたんだ
何か分かったんだと思うんだ
だから・・・ええんや
もう少し、私も我慢せなあかん
「・・・綺麗やなぁ。」
和葉は窓を少し開けて、手を伸ばした
「冷たいなぁ。」
手のひらにのった小さな雪の結晶は、体温ですぐに溶けてしまう
何回か結晶がのった手のひらには雪解け水が溜まった
平次は雪とは違うなぁ・・・もっと温かいもんなぁ
「何・・考えてんねん。」
私は一人でくすくす笑う
隣にあなたがいたら、良かったのに
いつも隣にいる彼も、今日はいない
おそらく夕方には帰ってくるやろ
それまでの辛抱や
平次にだって予定はある
それは私かて同じや
「・・・これってわがままなんやろか。」
ずっと一緒にいたいってのはわがままなんやろうか
いつも一緒にいるって思ってたけど、やっぱり一人の時もある
凄く寂しい時もあるんや
「ぅ・・ぅ・・。」
真っ白な雪を見てたら涙が止まらなかった
平次がいないから?雪が綺麗だったから?
理由はよく分からないけど、とにかく涙が止まらなかった
なんでだろう・・・涙が止まらへん
今まで我慢してた分の涙やろうか・・・
雪は降り止んでしまった
「アホやな・・私。」
平次のこと、恥ずかしいくらい好きなんや
めっちゃくちゃ好きなんや・・・
分かってたことやのに、何故だか顔が熱くなる
ガラッ
「・・・和葉?」
「へ・・平次ぃ。」
「何か・・あったんか?」
「・・・ぅ・・ぅう。」
「何や、俺がいなくて寂しかったんか?」
平次は冗談のように言った
私は泣きながら首を縦にブンブン振った
恥ずかしかったけど、構わへん
だって、平次が傍にいるんやから。
「・・・しゃーないなぁ。」
「え?」
平次は後ろから和葉に抱きついた
和葉は顔を真っ赤にして言った
「何や!急に・・・。」
「ええやないか。」
そういえば、平次の体冷たいわぁ。
雪で服はグショグショやないの
「冷たいやん。」
「走ったんや。」
「傘持ってへんの?」
「あるで。」
「じゃあ・・・何でや?」
「和葉に・・言いたいことがあったんや。だから走って来た。」
「え・・・?」
ドキドキドキドキドキドキドキドキ
鳴り止まない胸の鼓動
こんなに近くにいたら、平次に聞こえてしまうやないの
「・・・外の雪だるま、あるやろ?」
「え?」
窓の外を覗くと、小さな雪だるまがあった
「あれがどうしたん?」
「・・・崩してみぃ。」
「えぇ!」
「ええから、崩して来てや!」
和葉はすぐに外へ出た
こんなに寒い中、平次は走ってきてくれたん?
私のため・・・?
「平次ー!崩すでぇ!」
「ああ、ええで。」
窓から私をジッと見る平次の顔
めっちゃキラキラしてた
「えい!」
思いっきり蹴っ飛ばすと雪だるまは真っ二つになってしまった
雪だるまを更に崩していく
冷たいなぁ・・・
和葉は自分の息を手のひらに吹きかけた
ほんまに冷たいなぁ・・・
すると、雪の中に輝く何かを見つけた
「え・・・?」
輝く何かとは、小さなダイヤがついている指輪だった
私はすぐに上を向いたが、平次は窓にいなかった
和葉は少しションボリした
期待してしもうた・・・結婚指輪やないかって
平次がそんなことするわけ無いかぁ
「和葉。」
「平次!!」
平次は、和葉の手を両手で包み込んで
息を優しく吹きかけた
温かい平次・・・
心地よいわぁ・・・
「・・・薬指、出してや。」
「・・・ええで。」
和葉は温かい手のひらを平次に差し出した
ああ・・平次の顔・・キラキラしてるで
「好きや。ずっと前から・・・。」
「・・・私も、平次のこと大好きや。」
和葉の目からは涙がポロポロ零れ落ちた
平次な、ずっと前からこの計画立ててたんやって
ずっと初雪を待ってたんやって
嬉しいわ・・・めちゃくちゃ嬉しいわ
「あ・・・。」
また、雪は降り始める
ありがとう・・・
私、幸せやで・・?
「・・・ずっと一緒にいてや。」
「当たり前やないか。」
和葉の薬指にはキラキラとダイヤが輝いていた
けど、ダイヤより輝いているのは・・・・
大好きなあいつの顔やで・・・
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