vol.7-diary2 特効薬
ある日の土曜日の午前11時…
翔は待ち合わせ場所のファミレス前で明奈を待っていた。
ガラスケースの中に陳列されているメニューのサンプルを見る。
(何食べよっかな~。あっ、シーフードカレーおいしそう!…でも、これからお魚見に行くのにな…)
今日は水族館デートをする予定だったのだが…
~♪~♪~♪
携帯が鳴って、メールが入る。
(明奈からだ!)
>>Sub:ごめーん(>_<)
>>風邪をひいてしまいました(;_;)
熱もあるし、具合も悪いので、今日は家で大人しく寝ることにします。
もうファミレスの前かな!? 連絡遅くなってごめんね…
実は、ギリギリまで具合悪くても行くつもりでいたんだ。
でも、これは無理っ!と思って…(@_@;)
それで体温計使ったら、案の定、熱がありましたm(__)m
本当にごめんなさい(;_;)
- E N D -
(明奈…大丈夫かな…)
翔はメールを見てとても心配になった。
そして、すぐにメールを返す。
>>Re:ごめーん(>_<)
>>えっ!明奈大丈夫!?
今からそっち行くから!待ってて!
翔はすぐに自転車で明奈の家の方向に向かった。
途中、明奈から「申し訳ないから、わざわざ来なくていいよ(>_<) うつしちゃったら大変だし!」というメールが来ていたが、それには気付かなかった。
* * *
ピンポーン…
玄関のチャイムが鳴る。
(翔? 来なくていいって言ったのに…)
明奈はベッドから起き上がり、玄関に向かう。
のぞき窓を見ると、やはり翔だった。
明奈はそっとドアを開ける。
「翔…」
「…明奈、大丈夫?…ごめん!…逆に起こしちゃったかな?」
翔は、頬と目が赤くなっている明奈を見て、心が痛んだ。声にも元気がない。
「ううん、ありがとう。」
来なくていいとは言ったものの、明奈は翔が来てくれて本当に嬉しかった。
一人暮らしで、具合が悪くて苦しいのに誰にも看病してもらえないのは、寂しく心細かったのだ。
それに、楽しみにしていた水族館デートが出来なくなって、かなりがっかりしていた。
「起こしてごめん。横になりたいよね。」
翔は、明奈の肩を抱きながらベッドまで付き添う。
再びベッドに横になる明奈。そして、翔の目をそっと見つめながらこう言った。
「翔が来てくれて何か安心した…。ちょっと恥ずかしいけど…」
本心からそう思っているのだと、明奈の表情でわかる。
「…良かった。何か食べた?」
「ううん、食欲なくて…」
「そっか。でも、水分は取らなきゃだめだよ…。うちに飲み物ある?」
明奈は首を横に振る。
「じゃあ、僕、何か買ってくるね。何か買ってきてほしいものある?」
「何でもいいよ。わざわざありがとう。」
「わかった。そうだ!台所使ってもいいかな?」
「良いけど…」
「ありがとう。とりあえず、水用意しておくね。」
翔はコップに水を入れ、ベッドの横に置いた。
「じゃあ、行ってくるね。」
翔は明奈に布団を掛け直してから、玄関へと向かう。
明奈はそんな翔の背中をじっと見つめた。
* * *
具合が悪いし、身体も重い…けれど、翔の優しい表情を見ると、明奈は精神的に楽になった。
しかし、翔が買い出しに出かけてしまって、ちょっとの間だとわかっていても寂しい。
(翔…早く戻ってこないかな…)
その時…
「ただいまー」
翔の声が聞こえる。そして、まもなく姿を見せた翔は明奈のもとへ行く。
「早速キッチン借りるね。具合はどう?」
「まだ気持ち悪いけど、翔の顔見たら大分楽になったよ。」
明奈の顔はまだ赤いままだ。翔は怪訝そうな顔をする。
「本当だよ?」
明奈が翔の目を見つめながら言った。
「そっか、良かった…。…もうちょっと、待っててね。」
翔は恥ずかしそうにキッチンへと向かった。
…しばらくすると、翔が4つのコップをお盆に乗せて明奈の元へやってきた。
「これなら飲めるかな?」
お盆の上には、野菜スープとホットはちみつレモネードが2つ乗っていた。
(すごい…翔…こんなの作れたんだ…!)
明奈が嬉しそうにほほ笑む。
「わ~おいしそう!翔、ありがとう。」
「どういたしまして。でも、おいしいかどうかわからないよ。」
「飲んでみよーっと。いただきます。」
明奈はホットはちみつレモネードを口に入れた。
甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がる。
「翔、おいしいよ!」
「そう、それは良かった。」
続いて野菜スープも口に入れる。
「こっちもおいしい!」
「良かった―。よし、僕も食べてみよっと。」
…翔と明奈は野菜スープもホットはちみつレモネードもあっという間に飲んでしまった。
* * *
翔がキッチンで片付けを終えて明奈のもとに戻ると、明奈は気持ちよさそうな寝顔で眠っていた。
(お腹いっぱいになったから、眠くなっちゃったんだ…)
布団を掛け直した後、起こさないように明奈の髪をそっと撫でる。
そして、まだ赤い頬にそっと口づけた。
(明奈…大好きだよ)
(僕も何だか眠くなっちゃったな…)
* * *
3時間後、明奈が目を覚ますと翔が頭だけベッドに乗せて眠っていた。
明奈の左手は翔の左手に包まれている。
(翔は寝顔まで優しいんだね…ずっとそばにいてくれてありがとう)
身体はすっかり軽くなっている。熱もおそらく下がっただろう。
空いている方の手で翔の髪を撫でる。…翔はまだ起きそうにない。
左手を離すのが惜しくて、明奈はもう一度眠りについた。
このあと、同じ夢を見た2人…それが正夢だとわかるのはもっともっと先の未来の話。
本来はギャグ甘にする予定だったのですが、ギャグを入れる気分にはなれませんでした(笑)
よくありそうな話ですが、悪しからず…
しかも、無理やり終わらせた感丸出しで申し訳ないです。