vol.20-diary15 涙の温度
この日、明奈と翔は映画館にいた。
目的は劇場版ポケットモンスターである。
この日は2人とも大学の講義が午前中しか入っていなかった。
「平日はすいてるねー。」
「うん、良かった。休日に行ったら、ちびっ子たちばっかりだから、ウチら浮いちゃって若干恥ずかしいもんね。」
「ハハハ、そうだね。じゃあ、ジュース買って座って待ってようか。」
「うん。」
映画が始まるのを待つ2人。2人とも手には厚紙でできたピカチュウのかぶりものを持っている。
「翔、これ…もらったはいいけど使えないね。」
「確かに…」
「弟君にあげたら?」
「喜ぶかな?」
「うーん、どうだろう?」
やがて、映画が始まると、2人はスクリーンに見入った。
映画がクライマックスに入る。サトシたちとポケモンの熱い友情に明奈は感動して泣きそうだった。
…その時、隣から聞こえるすすり泣く声が聞こえてくる。翔はすでに大号泣していた。
そんな翔を横目で確認し、続けてスクリーンを見ていた明奈もやがて涙を流した。
映画のエンディングが終わり、明奈はハンカチで涙を拭く。
「良い話だったね、翔。」
そう言って、翔の方を向くと翔はまだ涙を流していた。
「うん…うぅっ、ピカチュウ…」
そんな翔を見て明奈はクスッと笑った。
帰り道…翔が明奈の方を見ると、考え事をしている様子だった。
翔はなんとなく不安になった。あんなに泣いてしまったから…もしかしたら嫌われてしまったのだろうか…。
少し歩いても、明奈はやっぱり話しかけてこない。
翔が思い切って話しかけようとした時…。
「翔…ありがとう。」
明奈が先に口を開いた。だが、翔にはその言葉の意味がわからない。
「…?」
「翔と一緒にいられて本当に嬉しい。」
「えっ? どうしたの突然? でも…それは僕も一緒だよ。」
「本当? 良かった…。まあ、細かいことは気にしないで…。翔、私、お腹すいちゃった!早くいつものファミレス行こう!」
そう言って、明奈は走り出した。
「あっ、待ってよ~。」
慌ててそのあとを追いかける翔。
夕日が幸せそうな2人を静かに照らしていた。
・・・前に、私があなたに辛かった過去を打ち明けた時、あなたは一緒に泣いてくれたよね。私の心にそっと寄り添ってくれてるみたいで嬉しかったよ。映画館であなたが泣いてたの思い出したら、そんなことまで思い出しちゃって、いつのまにかあなたに「ありがとう」って言ってた。嬉しい時、悲しい時、感動した時、素直に涙を流せるあなたの温かさは、いつも私の心を満たしてくれる・・・。
久しぶりの更新となってしまいました。しかもタイトルも構成も100%満足ではないです…が、私の能力ではこれが限界かも(汗)