vol.18-diary13 チョコレートの日
今日はバレンタインデー。授業が終わった明奈と翔は学食でのんびりすることにした。
「これ、作ってきたんだけど…」
明奈は早速、翔に手作りチョコレートマフィンをプレゼントする。
「ありがとう、明奈。」
翔はそれを受け取ると、嬉しそうに包み紙を開けた。
「おいしいかどうか分からないけど…」
「大丈夫、大丈夫。」
そう言って、翔はマフィンを口にする。
明奈はドキドキしながら、翔の反応をうかがう。
「やっぱり…おいしいよ!!」
「本当?良かった~」
翔が笑顔で言ってくれたので、明奈は心の底から安心した。
「あのね、すごく心配だったんだ。失敗してたらどうしよう、気に入ってもらえなかったらどうしようって…。でも、翔が喜んでくれて本当に良かった!」
明奈が笑顔でそう言うと、翔がそっと口を開いた。
「あのね、実は僕も作ってきたんだ。」
「えっ?」
「ほら、明奈はホワイトデーのクッキーとかキャンディーより、チョコレートの方が好きでしょ?」
「うん、そうだけど…。わざわざありがとう!翔。」
明奈は、翔が自分のために手作りチョコを作ってきてくれたことが本当に嬉しかった。
「はい、これ!」
「ありがとう。」
翔が渡してくれた袋を受け取り、そっと開けてみる。
そこには、様々なポケモンが形どられたチョコレートがたくさん入っていた。
「わー、かわいい!ありがとう!」
翔は、また自分の大好きなものを作ってくれた。そう思うと明奈は心が温かくなった。
ティッシュを広げて、ポケモンのチョコレートを全部並べてみる。
「本当にかわいい。食べるのもったいないなー。翔、本当にありがとう。」
「いや、ポケモンセンターに型が売ってたから、それに入れて固めただけだよ。」
「ううん、すごく嬉しい。」
…ただこの時、明奈は嬉しいと思うと同時に周りからの痛い視線が気になっていた。
確かに、いくら逆バレンタインが流行ってると言っても、ポケモンのチョコレートを作ってプレゼントする男子学生はめったにいないだろう…。
“えっ、ポケモン?”“あのカップルちょっと面白くない?”という声が聞こえてくる…。
「そんなに喜んでもらえると僕も嬉しいよ!じゃあ、ホワイトデーにはポケモンクッキー作るから楽しみにしてて。」
翔はどうやら周りの雰囲気に気づいていないらしい。
「う、うん。…それはありがとう。…ねえねえ、ホワイトデーは絶対お家デートが良いな♪」
「そっかー。じゃあ、そうしよっか。」
(良かった…。)と明奈は心の中で思った。けれど…
(本当の本当は、迷惑さえかけてなければ周りの視線なんてどうでもいいんだ。翔と私が楽しいのが一番!)
この日は明奈にとって嬉しい一日となった。
バレンタインネタは書く予定がなかったのですが、ふと思いついたので書いてしまいました。私は、もしも好きな人から手作りポケモンチョコレートをもらえたら非常に嬉しいですが、普通の人は引いちゃうものでしょうか、それとも意外と引かないものでしょうか。もし、後者でしたら、この作品の「周りの視線が…」という描写は余計ですね。
あと…どうでも良いかもしれませんが一文ごとに一行あける形式を止めてみました。間が空いてれば読みやすいというものでもないな…とふと思ったので。