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魔王様と勇者様とヘタレ
作:水菜



第五十八部〜魔王様とーーー様とへタレ?〜


 第五十八部〜魔王様と―――様とへタレ?〜
 
 
「私は・・・・勇者をやめます!!」
 ななななんだってぇぇぇぇぇ!!?
 なんて言われた、驚いたその後俺は立ったままで話を聞いた。
 ラミアが辞めたがる理由、それは今回の騒動にある。本来ならば自ら隣で戦いたいと思う中でそれは実行できなかった、勇者という立場のせいでやすやすと魔王であるこちら側に手を出せない、事実アルトの奴がこっちに手を出させなかったのがこの通りだ。
 それがラミアにはとてつもなく歯痒いものだった、こんな思いはしたくないし俺達を放って置きたくも無い、今回は何も起きなかったから良い、しかしこんなのが続いていつか取り返しのつかない事になったら。
 

 だから決めた、勇者を辞めてしまおうと、俺達の傍にいようと。

 
 それだけ告げるとラミアは「おやすみなさい」の一言で暗い街の中に消えてしまった。
 止めようとは思わなかった、本人が決めたことだから俺の口出しするべき事じゃあない。黙って見送ってパーティー会場に戻って時間をやり過ごす、終わったらすぐに城に戻って寝た、そこまではよかったんだけどなぁ・・・。
「おはようございます」
「おはようさん、それとその格好は何だ?」
 
 朝起きたら、いや起こされたらそこにはメイド服姿のラミアがいた。
 
「おかしいですか?」
「いろんな意味でおかしい」
 ラミアは自分の服装におかしな点が無いか確かめようとする、そういう意味で言ったわけではないんだけどね。
「勇者は?」
「辞めました」
 早!? 一日経ってないだろ、それとも「すみませ〜ん、勇者辞めたいんですけど〜」「はい分かりました、じゃあ次は何になります?メイドですか?」なんてどっかの教会か役所か職業紹介所みたいなとこに行けばできんのか?
「で、なんでここに?」
「今日からここで働きます、今日から生活班の新人です」
 なるほど、だからメイド服ね。
 びしっ!!ときめて俺を魅せるラミア、きまっているし可愛いのだが元勇者が魔王のもとに就職ってどうよ?
「と言うわけです、仕事がありますからまた後で」
 そう言って部屋を出て行くラミア、残った俺はどうすれば良いのかよく分からなかった。
「・・・お前は何してんの?」
「・・・・」
 ふと視界に入ったのは怒っているのか何時もと違って何もせずただじっと見るアリスだった。
「俺の着替えは?」
「・・・・」
 見るだけで答えてくれなかった・・・ああ、朝の一仕事取られたからか、これ取ったら本人護衛どころかただの勝手に居座ってる奴だからな。
「機嫌直してくれって、俺から頼んで朝飯にケーキセット付けてもらうから」
「!!」
 ベットから降りて頭を撫でて機嫌を取る、それを聞くと機嫌が直ったアリスは服が入っている棚から俺の着替えを出してくれた、疲れる朝だ・・。
 
 
 城は大きな事件があったにしろさして変わったところは無い、城に穴が開いたわけでもなくぐちゃぐちゃにされたわけでもないからだ。
 そんなもんで皆のんびりと過ごすこの日、異界から俺ら六人はやる事が無く新しく入ったラミアの様子を見ているのだった。
「ラミアさん、頑張ってるね」
「そりゃそうですよ、新人ってのはとにかく仕事を覚えるのに動かなきゃいけませんから」
 食堂でワイワイとのん気にお喋り、話題はもちろんラミアである。お昼前、賑わう食堂でラミアは右から左、左から右からと来る注文を聞いては食券を配ると言う作業をしていた、つまりは食券売り場だ。
「しっかし勇者が魔王城になんて世も末よねぇ」
「国会議員がトイレ掃除してるようなもんだね〜」
「飯時にトイレなんて単語出すなよ」
 客、もとい城の人たちからの評判を聞けばまぁまぁの様だ、それほど以前の事を気にしている人はいないようで寧ろ歓迎の様子さえ見える。
「昨日の敵は今日の友って奴ですね」
「合ってるけど何か違う気がするな」
 ま、何にも無いならいいんだけどな。
「・・・どうしたのよ翔?」
 気がつけばさっきから翔が何も話していない、ラミアのほうをばっかり見て此方の話に入ってきていないのだ。
「・・・ん?おお、わりぃ、考え事しててな」
「考え事?」
 こいつが考え事なんて珍しい、まぁどうせメイド服見て興奮してんのだろう。
 
「勇者様じゃなくなってこうなったら題名変えなくちゃいけねぇんじゃないのかって思ってな、どう思う?」
 
「「「「「・・・・」」」」」
 静止、誰も何て答えれば良いのか困っていた。
「いやどうって・・・何言ってんだお前?」
 最初に動いたのは俺、しかしあれか?ついに末期か?いやもう峠越えてるか。
「いやこのままだと魔王様とメイ」
「世界の強制力発動!!」
 天瀬が一瞬のうちに足元から黒い物体を翔の顔に向かって突き出す、次に聞こえたのはガプリという音だった。
「ぎゃぉぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
 顔に黒い物体、いや生物がついたまま床を転げまわる翔と放さない黒い生物ってかクロ。
 天瀬さんもう完璧突っ込みの道具ですね!!
「わけの分からない事考えてんじゃないわよ」
『34番、日替わりセットの方どうぞ〜』
「お、俺だ」
 放送用の黒蝙蝠の声が聞こえて席を立つ、俺は飯を取りに行った。
 
 
「34番、日替わり」
「はいおまちどう、待たせたね」
 俺は食堂担当の幽霊(年齢・・いや享年48らしい)からトレイに乗った日替わりセットを貰った。
 日替わりセットは玄米のような飯に味噌汁、おかずは日によって変わるが今日は焼き魚に野菜炒めというシンプルなものだ。
「ねぇ、あんたらから見てあの娘、どうだい?」
 貰った所で幽霊のおばちゃんが話しかけてきた、あの娘ってラミアのことだよな。
「いいんじゃないんすか?服似合ってるしよく働くし元気だし」
 見る限り活き活きしてるな。
「そうかい?」
「ま、頑張りすぎなければ十分じゃいの?」
「言えてるねぇ、ありゃ仕事に生きるタイプだね、私ら死んでるけど」
「またおばちゃんそんな事言う〜」
 あっはっはと笑い合っていると後ろに早くどいてくれ、と待っている人たちがいたのでその場を後にして席に戻るのだった。
 
 
「翔のやつなにやってんだ?」
 戻ってきた所で見たのは翔が後ろの席の人に必死に謝っている姿だった。
「山口君がね、転がってたら後ろの人にぶつかってご飯こぼしちゃったんだって」
 アホめ。
「恭平は何はなしての?おばちゃんとさ」
「ん?ラミアよく働くなってことだ」
 そんなことを話していると今度は天瀬が何か悩んでいた。
「どうした?」
「私達これからどうすんの?」
 その言葉に俺達はハテナを浮かべた。
「今は客人扱いだけどさ、このままは駄目よ。あたし達バイトでもいいから働くべきじゃない?」
 それには皆賛成の意を示した。俺達は客扱いで給料も無いので基本的に飯代は払ってない、城の人たちも快く見てくれている、がしかしずっとそのまんまじゃあ肩身が狭いし迷惑だ。
 ま、この世界にバイトなんて言葉があるとは思えんけどな、就職活動だ。
「なら魔王さんに聞いてみたらどうですか?あ、言っておきますけど私護衛と警備ってことで給料貰ってますから」
「「「え!?」」」
 皆驚いた顔で香山さんを見た、給料貰ってたのかよ・・。
 ん?って事は・・・
「・・?」
 隣に座ってたアリスを見る、こいつも貰ってたのか?朝起こすだけだぞ?
「こりゃもう決定だね、代表として恭平があの人に仕事ないか聞いてくるってことで」
「何で俺だよ!?」
 復活した翔も含めみんなが俺を見る。
「そりゃ・・・ねぇ」
「うん」
 それだけの曖昧な答え、俺が一番聞きやすいってことかよ。
 
 皆に言われては仕方ない、俺はどっかのロープレが如くアリスを後ろに引き連れてエレンの部屋に向かっていた。
 しかし新しい仕事なんて俺達にできることがあるのだろうか?警備は・・・無理だな、じゃあ皿洗いって所かな?
 何だかんだ考えつつも歩きエレンの部屋の前に辿り着く、そこから聞こえてきたのはこんな声だった。
 
「何であの勇者がここにいるのですか!?」
 
・・・あ〜なんかまた一騒動ありそう。












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