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魔王様と勇者様とヘタレ
作:水菜



第三十一部〜気分上々で行きましょう〜


 第三十一部〜気分上々で行きましょう〜
 
 
 さて今日は日曜日である、つまりは・・・
 
「祭りだ!!」
 
である。
「はいはい分かったから、花火と屋台とお祭りは逃げないし逃げれないから落ち着け」
 まだ昼だというのにリビングで修学旅行に行く前の女子のようにはしゃぐエレンに向かって俺は言った。
「そうですよエレン、それにまだ皐月も来てないんですから」
 そう言うのは我が家の一般人な勇者様ことラミアだ、でも祭りの案内チラシ見ながら言うのはどうかね。
「花火大会ってもパッと行ってパッと見てパッと帰ってパッと奴等の低いテンションどん底まで下げらせるだけなんだからな、今のうちに休んどかないと後でバテるぞ」
 いくら夜でも夏なんで暑いのは当たり前なんだからな、冷たいもん大量に買っても駄目だし。
「下げるって誰をだ?テンションって何だ?」
「・・・一種の興奮度だ、あんまり上がってると危ないからそういう奴らに注意するんだ」
 とりあえずてきとうに言ってみるが・・嘘です。
「なるほど、お祭りだというのに自主的に現場の士気をまとめるのは感心しますよ恭平」
 信じている二人、実際は影であーだこーだ言ってるやつらに自分達の女友達もいない悲しさをよりハッキリと現実的にしっかりと自覚させる為なんだがな、はっはっは。
「まあ天瀬が来るまでいつも通りにしとけ、時間はきちんやって来てくれるから」
 そう言って俺は誰も座っていないソファーに寝てしまう。天瀬が来るまでというのは本人いわく「とりあえず合うかわかんないけど浴衣とか貸してあげるから待ってなさいよ」との事だ、ありがたい事である。
「恭平」
 俺は寝て、エレンはゲームをしているとラミアが声をかけてくる。
「何だよ?」
 ラミアはチラシを俺に見せる。
「この夏祭り、『花火大会』はそんなに規模が大きいのですか?」
 はい、ここにひっかかってる人がいます。
 俺は上半身を起こした。
「いんや、そうでもない。実際は街の公園から神社までの屋台と後から上がる花火ぐらい、で規模が大きいんじゃなくて無駄に広いんだわ」
 実際隅から隅にまで屋台回ろうとしたらやってる間に花火上がっちまうし往復も出来ないしな。夏祭りって書いてあるのもでっかく見せて客集めようとしているだけだし、主催者の浅はかな考えがまるえですな。
「ああそうだ・・」
 俺はソファーを離れて二階に上がって部屋に戻る、あるものを取り出して確認するとポケットに突っ込み一階に戻り玄関に行く。
「どちらに行くのですか?」
 気づいたラミアが尋ねてきた。
「んーちとな、翔のとこまで行って軽く時間潰してくる」
 そう言うと俺は玄関を出て翔の家まで歩いて行く事にした。連絡はって?そんなものあいつに必要ありません、どうせ部屋のなかでゲームとか漫画とかダチに愚痴言ってるとかそんなとこだろう(確信)。
 
「あれ?恭平じゃない」
「おう天瀬、これから家に行く所か?」
 翔の家に向かう途中俺は天瀬に会った、一人でその手には大きな袋を二つ抱えていた。
「そうだけどあんた何所に行くのよ?」
「時間つぶしの散歩手柄翔の家」
 そう答える。
「あいつの家に何しに行くのよ?」
 まあ、気になるだろうな。天瀬くらいなら言ってもいいか。
 
「借金の取立て、あ、これ誓約書な」
 
 ポケットから紙切れ一枚出して見せる。すると天瀬は
「そ、金額については聞かないからさっさと行って来てよね」
「おう」
 そう言って俺達はこの場を別れ、俺は翔の家に着く。インターホンには翔の母親が迎えてくれ翔の母親に断って俺は二階にある翔の部屋に入る。
 案の定翔は寝っころがってゲームをしていた。
「でだ、金返せ。早急に今すぐに迅速に返せ」
「人の部屋にいきなり来て言う事はそれ!?」
 俺はその場に座って翔はゲームを止めて逆らってくる。
「これに見覚えはあるだろ?」
 そう言ってポケットの誓約書を出すと翔はうろたえる。誓約書には汚い字で(俺も読みにくいのでよくわからないが)”私、山口翔は友、伊吹恭平から四月九日に金額一万円を借りました”みたいな事が翔の字で書いてあった。
「で、でもよ?今日屋台とか回るにはその出費は結構厳しいっつーか三途の川を腰まで浸かるっていうか高校生の俺にはちょっと・・・」
 
「天瀬達に言っちゃうぞ〜♪」
 紙切れをひらひらと揺らしながら言うと翔は顔にそれはピンチですと言わんばかりに汗を流した。
「マジそれは勘弁!!そんな事されたら俺様ヤバイ目で見られちゃうべ!?」
「んじゃ返せ」
 それを言うと翔はう〜といった感じで机の引き出しから財布を取り出してくる。
「ほれ・・」
 翔の手には一万円、諭吉さんだ。
「毎度あり〜♪」
 俺はそれを手に取り懐にしまう、誓約書をくしゃくしゃに丸めて部屋のゴミ箱に投げ捨てた。
「こんな時に取立てって・・お前マジで鬼だな・・」
「俺も切羽詰ってんだよ・・」
 俺達はお互い深刻な顔つきで言った。
「・・・」
「・・・」
 部屋の中でお互い黙る。
「5、5で今日は勘弁してくれない?今度また返すから」
「現実はいつも厳しいんだよ翔君よ、お前も男なら現実を認めろ」
 ガックリとうなだれる翔を残して俺は翔の家を後にした。
 ちなみのちなみに翔の四月九日、こいつは翔があるものを購入するが為に俺から一万円と言う一般市民にとって莫大な金額を借りたというエピソードがあるわけだが、こいつは天瀬達には秘密でまたの機会だ。
 
 家に帰るとリビングから複数のはしゃぐ声がした。
「お〜っすって・・・」
 俺はリビングに入ろうとしたが入り口で立ち止まってしまった、リビングには・・
「恭平、似合うか?」
「恭平、おかえりなさい」
 立派な浴衣姿のエレンとラミアがいた。
「どう?立派なもんでしょ」
「伊吹君が来る前に着付けできてよかったねさつきちゃん」
 隣には私服の天瀬と坂下がいた。
「坂下もいたのか」
「私一人じゃきつかったしね、サイズ合って良かったわ」
 まあ、ラミアはともかくエレンの場合はきっぱり大人用サイズだしな。
「どうだ恭平、似合うか?」
 エレンの浴衣は黒、肌が白く髪は黒いので顔や首元がくっきりと写る。
「少々動きにくいですね」
 それに対してラミアは薄い青の浴衣、似たような色の髪とでこれはこれでなかなか決まっている。
「ほら、何か言ってあげなさいよ」
 天瀬がひじで突っついてくる。
「お、おう・・」
 チラチラと二人を見る、二人とも見る限りでは十人が九人くらい見惚れるくらいだ。何を言う俺もその姿に内心驚きまくって蒸発しそうだ。
「・・・・」
「さっさと言いなさいよ」
 なんというか今までは可愛いとは思っていたが綺麗ってのは過去には無かった。エレンは見た目はそうだが中身は童心。ラミアは見たまんま妹みたいな容姿だったが馬子にも何とか、立派な様である。
「言え」
 いまだに言わない俺にいらついた天瀬がずむっと足の指を踏んだ。
「・・キレイデス」
「そうかそうか」
「まあ言われて悪い気がしませんね」
 そうかい、それは結構・・・でもね?なかなか言わないからってこの仕打ちは無いでしょう?
「あんまり動き回って着崩れしないようにしてよね、せっかく着たんだし祭りの最中じゃ私達別行動なんだから」
 確かにそうである、考えてみれば俺と行くんだから着直しなんて出来ないな。
「だそうだからあんまり動きまわんなよ、大人しくしてればそんだけよく見えるんだから」
 わかりました〜といった感じで二人は返事をした。
「ってか彩花は?坂下きてんのにあいつなんでいないんだよ」
 坂下の家よりあいつの家の方が近いのに何で来てないんだか、あいつなら来たがる性格だと思うんだがな。
「呼んだんだけどなんか携帯電話に出なかったの」
「ケータイ忘れてどっかいってんじゃないの?それともそんなに来て欲しいとか?」
「んなつもりで言ったんじゃねーよ、もうそろそろ時間じゃねーのか?お前らだって浴衣着るかもしんねーんだろ」
 部屋の時計は五時前になってた。
「別に私は着ないわよ動きづらいし、終わったら返してよね。雪行きましょ」
 天瀬がリビングを出て行く。
「あ、あの伊吹君!!」
 坂下が天瀬についていく前に声をかけてくる。
「ん?何?」
「えっと・・あの・・」
 何かを言いたそうである。
「恭平、何時家を出るんだ?」
「!?」
「んあ?今俺が準備したら出るぞ、だからちょっと待ってろ」
 エレンが話しに割り込んできた。
「んで坂下・・・っていねえ?」
 エレンのほうを向いていたので振り返るとそこにはもう坂下はいなかった。
「彼女ならエレンと話している間に皐月についていきましたよ」
 らしいが・・まあ屋台でも回ってれば会うだろう。
 
「おっし行くぞ〜」
 俺は部屋に戻り準備を終えてリビングにいる二人に声をかけた。
「出発か?」
「さっきそう言ったでしょう、行きますよ」
 
 そう言って俺らパーティーである魔王、勇者、一市民は今夜の騒ぎへと出発した。












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